「貴武人の訪問」('16/12/23ソワレ)

シアタードラマシティにて。
勝手にコメディだと思いこんでましたが…かなりシビアなお話でした。
座席は、センターブロックの4列目。
シアタードラマシティの座席は、互い違いになっていないので、前の席の方の頭が、舞台中央にかぶる!
この劇場は、後方ブロックの1列目が一番見よいなあと、改めて思いました。



††あらすじ††

億万長者の未亡人となったクレア(涼風真世)が財政破綻寸前の故郷、ギュレン市に戻ってきた。
人々は、かつての恋人アルフレッド(山口祐一郎)がクレアに財政援助を頼んでくれることを期待していた。
そして、クレアを迎える晩餐会。
大々的な市への援助を約束したクレアだったが、多額の寄付金と引き換えにある条件を提示する。
それは―「アルフレッドの死」。
クレアの目的は?
そして、家族や友人が、アルフレッドに対して下した決断とは―



††キャスト††

ルフレッド:山口祐一郎
クレア:涼風真世

マチルデ(アルフレッドの妻):瀬奈じゅん
マティアス(市長):今井清隆
クラウス(校長):石川 禅
ゲルハルト(警察署長):今 拓哉
ヨハネス(牧師):中山 昇

若い時のクレア:飯野めぐみ
若い時のアルフレッド:寺元健一郎

岩粼亜希子/樺島麻美/河合篤子/三木麻衣子/吉田理恵

榎本成志/木内健人/さけもとあきら/武内耕/俵和也/谷口浩久/港幸樹/山名孝幸

レーナ(子役):新井夢乃/大石優季(Wキャスト)


感想は…。
先にも先にも書いたように、勝手にコメディだと思っていたので、登場時のクレア(涼風さん)のど迫力にびびりました。
そして、次々、明らかになる事実に、怒りがふつふつ。
1幕が終わった時点では、「アルフレッド、最低やな」。

しかし、2幕を見るうちに感想が変わってきました。
確かにアルフレッドは最低です。
しかし、アルフレッド「だけ」が最低じゃなくて。
この町の人、みんな、どやねん!
よくもまあ、そんなど厚かましく、クレアに期待できるなー。
そして、アルフレッド一人に押しつけすぎ。
自分たちのことは、棚上げか?

ルフレッドは最終的に心から悔い、自らに立ち向かった点で、許せる。
しかし、町の人たちは?

…正直、町の人たちの堂々とした二面性、怖すぎ。
でも、それが人間の本性のようにも思える。

登場人物の中に、子供が一人いるので、その子が鍵となってクレアが心を変えるのかなと思っていたのですが。
町の人たちは、クレアを傷つけたときから本質的に変わっていなくて、そんな結末ありか…という物語の終焉。

とにかく、恐ろしい物語でした。


以下、個別感想をちょこっとずつ。

■クレア
主役はアルフレッドなんだろうけど、私としては涼風さんを見に行ったところもあるので。
涼風さん、格好良かったですよ!
ルフレッドの前では、感情が表れることもありますが、基本、ロボットのように感情を押し殺しているクレア。
涼風さんのお得意のキャラじゃないですか!(違う?)
若いときのクレアが、生き生きとして、表情豊かなのに対し、能面のようなクレア。
その変遷に何があったのか、と、疑問に思わずにはいられない。
そして、歌われると…もう、お見事の一言。
ちょっとがなるように歌うときも、迫力があって、凄まじい…。
足の悪い役なので、歩くのが大変そうでしたが。
そして、そういう役だからか、ドレス姿が少なくパンツ系の衣裳が多かったんですが。
歓迎会でのドレス姿は、美しすぎるー。
めちゃめちゃ細いし!
体重なんて存在しないんじゃないの?
まさに、フェアリー健在。

宝塚退団後、拝見した役の中では、私は一番、良いなと思いました。
(個人の感想です)


■アルフレッド
最初の軽い感じが、まず許せん。
「謝ったじゃないか〜」と軽く言ってるんだけど、何について謝ったかを知った後では、「謝った」で許されることちゃうやろ!って気持ちになる。
歌も、往年の歌声ではなくて…。
あー、もう戻らないのかなあ…と思いました。
(もちろん、一番ひどかったときからは戻っていらっしゃるけど)

何もかもから逃げて、逃げて、逃げ回っていたアルフレッド。
逃げている間は、大嫌いでしかなかった彼ですが、逃げるのをやめて以降は、嫌いじゃないです。
そこからは、顔つきまで変わったし。
歌も、ああ、山口裕一郎さんだ…と思えるものがありました。


■マチルダ
元凶…とも言えるのかな。
歓迎会での複雑な表情が、印象的でした。
クレアのことを「あの人、昔から変だった」というのも、クレア視点じゃない、一般的な見方かと思ったんですけどね。
彼女が必死で守ったのは、アルフレッドじゃなくて、自分の過去なんだろうな。


マティウス
歌うまさん。
良い声。
貫禄があって、市長らしく。
調子の良い、手のひら返しも、不自然ではなく。
でも、酷い人だ。


■ゲルハルト
こちらも、マティウスと同様。
ルフレッドを守ると口では言っているし、態度でも、本気にしか見えないですが。
「絶対大丈夫」と言いながら、同じ調子で金を使うところが…酷い。
そして、マティウスとゲルハルトは、アルフレッドと同様に罪深いはずなのに、平然と善人ぶっているのが…酷い。


ヨハネ
意外と、印象薄目です。
聖職者らしからぬ所あり。
せめて、アルフレッドの心を救ってやれよ…と思いました。
自分で始末をつけろとか、聖職者として(キリスト教徒としても)あり?


■クラウス
最後まで抵抗したけど、勝てなかった人。
禅さんも良い声でした。
他の人が、「何が悪いの〜」とでも言うように、平然とアルフレッドを裏切るのに対し、人として屈したくないと必死で戦う彼は、素敵でした。
最後、負けてしまってからも「私の人道主義なんて、この程度だ」としっかり自分の罪を認めているところも、唯一、人間らしさを感じられました。


■若いときのアルフレッドとクレア
キャストを見て、ちょっとびっくり。
飯野めぐみさんと寺元健一郎さんなんか!
寺元さんは、ちょっと注目している俳優さんなので、なんだかうれしかったです。
でも、若いときのアルフレッドはちょっと女たらしっぽい。
歌は、もっと寺元さんらしいところを見せてほしかったかな。

クレアについては、健康的で、溌剌とした感じ。
オレンジのドレスが似合っていました。


■その他
ルフレッドの子どもたち、何も考えてないでしょ?
そして、共犯者であるはずの町の人たち、善人面しすぎ。
歓迎セレモニーの合唱、あそこまではずすのも大変そうでしたw
全体的な歌のレベルは高くて、満足でした。

しかし、とにかく、町の人たちが怖すぎて。
自分の利益のために、他人を陥れるなんて「ダメに決まってるわ〜」と言いつつ、行動は真逆。
それを、きっと自覚していないところが、怖いんですよね。
自分が正しい、善人だと信じている人がすることが、実は一番たちが悪い…って誰かが言ってませんでしたっけ?
まさに、そんなお話でした…。

怖〜。