「ジキルとハイド」

††キャスト††
ヘンリー・ジキル/エドワード・ハイド 石丸幹二
ルーシー・ハリス 濱田めぐみ
エマ・カルー 笹本玲奈
アターソン 吉野圭吾
ストライド 畠中洋
執事プール 花王おさむ
ダンヴァース卿 中嶋しゅう

プループス卿 KENTARO
グロソップ将軍 石山毅
サベージ伯爵 石飛幸治
ベイジングストーク大司教 若泉亮
ビーコンズフィールド侯爵夫人 岡田静

アンサンブル
寺元健一郎/二宮優樹/山田展弘/吉田朋弘/岡村さやか/島田彩/関谷春子/松岡美桔/やまぐちあきこ/山中美奈

原作:R・L・スティーブンソン
音楽:フランク・ワイルドホーン
脚本・作詞:レスリー・ブリカッス
演出:山田和也
上演台本・詞:高平哲郎



鹿賀丈史さんで上演されていた作品で、名前は知っていましたが、見たのは初めてでした。
勿論、「ジキル博士とハイド氏」は原作も有名ですから、ものすごーく大まかな話は知っています。
でも、どうして「ジキル」と「ハイド」が分離するか、とか、どんな事件があったのか、とか、全然知らなかったのです。
ですから、本当にドキドキしながら舞台を見ていました。
1幕ラストの仕掛けには、しっかり驚かされましたし、その後の殺人にも驚かされました。
仕掛け以外にも、アンサンブルさんたちの群衆劇も圧倒されました。
ですが、この舞台の要は、タイトルロールのジキルとハイドでした。
1幕途中まで、なかなか進まないお話に気持ちがだれてしまいましたが(すみません)、ハイドが現れて以降はぐいぐいと引き込まれました。
1幕が終わった時点では、ハイドが格好いいなあと。
2幕が終わったところで、石丸さんすごいなと。

面白かったです。

悪と善に分けで、悪だけ滅ぼすとか無理やろ!とか
薬を作るのは薬剤師で医師ちゃうやろ!とか(昔は違ったんでしょうね)
あんな蛍光色の薬品、ほんまに飲んで大丈夫か?とか。
(あと、何を混ぜたら発光する水ができるんやろ?とか)
いろいろとつっこみたいところもありましたが、そういうのこみで面白かった。

あと、ちょっと雑念が混ざったのは。
見たことがないにも関わらず、鹿賀さんのハイド氏が想像できてしまったこと。
そして、濱田さんのルーシーが何故か歌穂さんを思い起こさせたこと。
鹿賀さんはともかくとして、何故歌穂さん?
理由として考えられるのは、「ルーシー」という名前で、笹本さんが正妻(まだ妻じゃないけど)の位置にいたから?
ほら、「ベガーズ・オペラ」がそうでしたでしょ?
でも、ショーの時からそう思ったし、本当のところの理由はわかりませぬ。
まったく関連がないのになあ?


では、また、いずれ個別感想なんかも書いて見たいと思います。


あ、一つだけ、今のうちに書いておきます。
カテコのとき、石丸さんがひっこむときに王子お辞儀して行かれました。
これって、佐野さんもやっていた「野獣お辞儀」ですよね!
めっちゃ素敵でした。
そして、そのあとのカテコで引っ込むときは、投げキス。
石丸さんが?!
キャラ違いじゃあ?
もちろん、石丸さんもとっても照れ照れな感じでこちらも素敵でした。<3月20日追記>
■石丸ジキル&ハイド
初めの神経質にも見えるジキルが、真面目で頑なで融通きかなくて。
社交性が無いことにちょっとコンプレックスを持ちつつ、自分の正当性を信じている、本当に一直線な人。
そのくせ、ルーシーには紳士。
ルーシーが惹かれていくのは理解できました。

ハイドになってからは自由。
如何にジキルが抑制されていたかがわかります。
ただ、初めのうちのハイドは、ジキルの別人格というより、ジキルの隠された欲望ではないかと思われてなりませんでした。
ジキルが心の底で我慢して、自分でも気がつかなかった気持ち。
それが、ハイドによって解放され、ああいう形で出たのではないのか。
どこかでハイドとジキルは繋がっているように見えたんです、初めは。

それが、お話が進むにつれ、ハイドは別人格として確立していくようでした。
ハイドが育っていく、そんな風に見えたんです。
故にラスト近くのジキルとハイドの言い争いは、二人がきちんと存在しているように思えて、見応えがありました。

ジキルとハイド、舞台上では声で演じ分けていましたが、最後、自由になりたかったのは、ジキルかハイドか。
私は、ハイド氏がジキルの器から飛び出して、完全に解放されていくことを求めたように思えました。

石丸さん、格好良かったな。
1幕のハイドは、自由で格好良かったし、ハイドが生まれてからのジキルの悩む姿も格好良かったです。
ジキルとハイドの葛藤もよかったですが、結婚式でのたうち回っているところもよかったです。
歌は、言うまでもないですが。
大阪公演も拝見する予定ですが、さらなる進化が楽しみです。


■濱田ルーシー
登場シーンの女王様キャラとは違う、意外と可愛い乙女な部分のあるルーシーでした。
ジキル博士に惹かれるのとか、可愛い。
強気キャラかと思いきや、実はそういうキャラを演じているだけ。
濱田さん自身の個性もあるんでしょうけど、芯の所で一途で真面目なイメージ。
そのせいかな…あんな衣装を着て、あんな風な演出がされているのに、全然、色っぽく感じない(^^;
脚線美、というわけでもなかったし。
何故だ? 八重沢さんのターニャの方がはるかにセクシーだよ?
可愛いんだけどなあ。

歌に関しては、抜群でした。
出演者さんの中でも抜きんでてまして、聞き応えありました。


■笹本エマ
ただのお嬢様ではない、芯の強い女性でしたね。
凛とした佇まいで、とてもよかったです。
濱田さんと一緒に歌う(石丸さんも入るけど)ところは、特によかったですが、それ以外でも全般に安定していました。
前面に出てくる感じではないのですが、しっかり締めるべき所を締めてくれている感じでした。


■吉野アターソン
軽やかで、堅物ジキルの唯一の友となるのが納得できる人でした。
ジキルと周りの人々の緩衝材になってくれるような人で、いい友達だなあと思いました。
「花火、おわっちゃったぞー?」の茶化すような、冷やかすような言い方、好きかも。


■畠中ストライド
アターソンと対極で、すっごい嫌なヤツでした!
エマに振られたせいもあるんだろうけど、ジキルもこんなヤツに執着されてお気の毒!
そんな風に思わせるですから、お上手。


花王執事
そんなに台詞もないのに、歌もないのに、めっちゃ好きだ、この人。
ジキルを思いやっているのがよくわかって、執事という立場を乗り越えられないのもよくわかって。
プールを見ているだけで、切なくなってしまいました。


■中嶋ダンヴァース卿
エマのお父さん。
初めはそうでもなかったんだけど、エマを心配して歌い始めたところから、気のいいお父ちゃんになってしまってた。
特に歌っているときの表情が、お父ちゃんって感じで。
「卿」って感じでなかったのが残念です。
いいお父ちゃんなんだけど。

結婚式の「人生で2番目に素晴らしい日」とか、ジキルに「新しい父ができた」と言われたときの様子とかは、凄くよかったです。
その辺もいいお父ちゃん故?


■理事会の皆様
今ひとつ、見分けきれなかった。
ここは、次回に向けて、頑張ります。
ただ、皆さん、ヒステリックでちょっとしんどかったかな。
まあ、ジキルもそうなんだけど。


■アンサンブルの皆様
新聞売りの少年が可愛かった。
もう一人、若いおにーさんが素敵でした。
新聞売りの少年は、寺元さんって方かな?
吉田さんは、見分けられなかったけど…もしかしたら、若いおにーさんだろうか?


基本、歌もよかったんですが、石丸さんを初めアンサンブルさんも含めて…。
なんだか、声に雑音が混ざってるように聞こえました。
マイクの調子が悪いのかな?とかも思ったんだけど、今、NHKの歌番組で石丸さんの歌を聴いて、やっぱりその雑音が。
なんというか、ちょっと「z」音が混ざる感じなんです。
アンサンブルさんは、雑音というか、息漏れがひどいというか。
そんな中で、ホントにクリアで聞きやすく、迫力もあったのが濱田さんの歌。
次は笹本さんかな。
石丸さん、ハイドの声がかなり割れるような出し方をしているので、そのせいかもしれません。
せっかくの美声なので、喉を痛めはらへんといいなと思います。