ミュージカル「ハムレット」

††キャスト††
ハムレット井上芳雄
オフィーリア:昆 夏美
レアティーズ:伊礼彼方
ホレーショー:成河(ソンハ)
旅芸人/亡霊:阿部 裕
ポローニアス:山路和弘
ガートルード:涼風真世
クローディアス:村井國夫
川口竜也/小西のりゆき/俵 和也/照井裕隆
岩崎亜希子/木村晶子/園田弥生/平田愛咲


原作:ウィリアム・シェイクスピア
脚本・作曲・作詞:ヤネック・レデツキー
演出:栗山民也
会場:シアタードラマシティ

1幕:12:00〜12:55
2幕:13:15〜14:10

大阪公演初日マチネです。
座席は、後ろから3列目のサイドブロック通路寄り。
傾斜もあり、通路を挟んでもおり、舞台はすっきり全体を見渡せました。
後方だったから、役者さんの細かい表情とかは見えなくて、それは残念。
でも、照明効果などは楽しめたのは良かったです。

お芝居は、デンマーク王の葬儀のシーンから始まります。
大きな国旗が上から下がっていて、棺に赤ラインがかかっていて、ちょっと「エビータ」っぽい。
更に言えば、音楽も、エレキギターを使っていたりするので、ちょっと似ているなあと感じました。

一番はじめに発声し歌い始める方、誰だかわからなかったんですが、初日故かマイクバランスが悪く、コーラスが始まっても突出して聞こえてました。
ここ、ちょっと惜しかったです。
コーラス自体は質が高くて、重厚な感じがしたので、勿体なかったなー。


そのあと、ハムレットのソロ。
「子どもの頃貰った、銀のナイフ。おもちゃと取り替えてしまった」
これって、銀のナイフが父王、おもちゃが叔父の比喩?
ここはシャウト系の歌でした。
このまま最後まで行くのかなと、ちょっと不安でしたが、歌い上げるものもあり、聴き応えありました。


オフィーリアと友達の女の子とのデュエット。
オフィーリア、ちっちゃ!
友達もちっちゃいけど、なんていうか…女子中学生って感じ?
…ま、そうか、昔の話だから、12歳とかで嫁入りだってあり得るわけだし…。
ハムレットも細身で少年らしい体型(に遠目からは見えます。実際はどうなのかな?)なので、背は高いけど高校生くらいの年齢とも思えて、あり得るカップルかも。
とにかく、恋に憧れて、現実とかが見られない少女のオフィーリアに感じました。
歌声は澄んでいて、純真なオフィーリアに似合ってる。
女友達(他の人のブログなどから平田さんと知りました。役名はヘレナでミュージカルオリジナルキャスト)とのデュエットは綺麗でした。


クローディアスとガートルードの結婚式。
ちょっと明るすぎるイメージ。
はじけすぎでしょ、二人とも!
そら、ティーンエイジャーのハムレットは拗ねるわ。
設定として、クローディアスはガートルードに一度振られているのか?
それも、嫌いだからというよりは、王妃になるべき人だから、クローディアスとは結ばれなかった風に思えました。

何度かブーケトスがあって、突き飛ばされるオフィーリア。
ちょっと、可哀想すぎるくらいにぶっ飛んでますが…。

しかし、ガートルード、細い。
ドレスのデザインが、また、その細さを際だたせるようなもので、とてもよく似合っていました。
ついでに言えば、ガートルードの歌は、あまりキーが高くないようで、低音部の声が格好良くて素敵でした。
涼風さんの歌は、裏声使ったりするより、地声で伸びやかに歌われる方が、私は好みなので、嬉しかったです。


レアティーズが留学に旅立つ場面。
ポローニアスの軽やかさが目に付きます。
重臣なんだけど、腰巾着と言われてしまうの、ちょっとわかるかも。
飄々とした雰囲気で、楽しい役作り。

レアティーズとオフィーリアとのデュエットは、ここまでで一番印象に残った曲。
「Sister!」という呼びかけは、どうかと思いますけどw
「Brother!」に至っては、更に違和感でした。
すいません、英語圏では、そういう呼びかけありなんですか?
でも、曲調は好き。
そして、オフィーリアを心配するレアティーズが良かったです。
ちょっとシスコン過ぎる?って感じもあるくらいでしたが。
でも、ここまでの愛があるからこそ、2幕に繋がるんですね。
哀調を帯びた曲で、二人の不安を歌い上げる。
声もよくあっていて、良かったです。


ハムレットとオフィーリアのデュエット。
ここでは、ハムレットも甘めで良い感じ。
そして、二人は結ばれるという設定なのか。

まさか、ここで、亡霊が登場とはびっくりでした。
亡霊のシーンは、照明効果で亡霊の姿を映し出したり、ハムレットの影を大きく見せたり、良いなあと思いました。

亡霊登場以降のハムレットの狂気。
正直、あまり狂気には見えない。
ただの無礼者?
クローディアスも「あんな格好で」と見た目を非難しているようだったし。
その格好も、それほど異様じゃない。
所々破れたGジャンとか…、「モーツァルト!」のウォルフだったら全然アリの格好じゃないですか?
親友ホレーショーの衣装だって現代風だし。
ちょっとロッカー気取ってみました!的な、王子としてはどうかだけど、アリでしょ?
オフィーリアに対しての仕打ちも、単に飽きたから捨てた、そんな風に見えました。
「尼寺へ行け」はじめの言い方は、「お前なんかもうどうでもいいんだ」って感じ。
最後の「尼寺へ行けーっ!」は、これ以上話すのも嫌で突き放した感じ。
二人が結ばれた設定があるから、「他の男の所へも嫁げないだろうし、自分も面倒を見るつもりもないし、尼寺へ行け」に聞こえました。
なんていうか、オフィーリアに思いやりがあるハムレットには見えなかったなあ。

そうそう、ポローニアスがクローディアスに「ハムレットの狂気は恋故」と話すところ。
後ろのダンサーさん達が素敵でした。
男性のみかと思っていたら、女性も混ざっていました。
6名のダンサーさん。
衣装が、足元までのコート風で、ちょっとゾーザー軍団のダンスみたいでした。
ゾーザー軍団ほどに激しくは無いですが…。
でも、見応えがあって楽しいシーンでした。


2幕冒頭、「be,not be」が繰り返されます。
「to be or not to be」じゃないんだ?
それとも聞き取れなかったか、私?
このシーンはアンサンブルさんのダンスも加えて、印象的でした。


旅芸人の芝居のあと、ガートルードの自問。
ここで4人の女性アンサンブルさんたちもガートルードの衣装を着て歌うのが綺麗でした。
鏡の使い方も良かったなー。


懺悔するクローディアス。
これは、ジャベールみたいでした。
衣装も似ているし、跪いて祈るのとか…。
まんま「星よ」な感じ。
最後は頭を垂れるので、やっぱ違うかーでしたが、はじめは、「スターズ♪」って歌い出すんじゃないかと思ったw


このあと、ハムレットによるポローニアス殺害。
ここは、酷すぎ。
ハムレットに何の共感もできない。
「どうした?」ってあんたのせいやろがーっ!
苦しんでいるポローニアスを抱えて踊ったり、倒れたところを蹴り落としたり…。
狂気?これも狂気の故?
刺したことに気がついてないの?
それとも気がついていてその対応なの?
演出の意図とか、役者さんの意図とかはおいといて。
私には、刺したことはわかってるのに、まさか死ぬとは思わず酷いことをして、アレ?死んじゃったよ?的な、想像力のない莫迦な若者にしか見えなかったわ。
そして、ポローニアス殺害に関して、反省しているようには最後まで見えなかった。


オフィーリアの狂乱。
もともと女子中学生だけど、それが更に幼くなった感じ。
衣装は男物のシャツのみ…ハムレットのもの?
狂気の世界で楽しそうに遊んでいるのが、哀れさを増長させます。
父を失い、妹を汚され、レアティーズの怒りがものすごく伝わる。
そして、笑いながら飛ぶオフィーリア。
そんな演出かも…と思いながらも、実際その映像を目にするのは辛い。
予想できたとしても、あまりに衝撃的。
レアティーズの憤りは、そのまま私の憤りにもなります。
この辺り、めっちゃレアティーズに共感してました。


墓場では、明るく墓を掘る墓掘り。
そこに加わるハムレットとホレーショー。
しゃれこうべをぽいぽい投げたりしながら、楽しく、歌い踊る。
ここの明るい感じは、結構好き。
明るすぎないし、墓掘りが持ってる哲学的なものも、面白い。
一歩間違えばただのオヤジギャクなダジャレも、意外にツボに入りました。

それが、葬送の列が現れると一変。
オフィーリアを抱くレアティーズが痛々しい。
脇でみていたハムレットはホレーショーの制止をふりきり飛び出す。
その哀しみは本物なんだろうけど。
レアティーズじゃないけど、「だれのせいで!」という気持ちになる。

で。墓穴の中で、二人でオフィーリアの遺骸を奪い合わないで欲しいなあ。
死者への冒涜に感じてしまう。
ハムレットは非常識あふれるから、そういうことしても違和感無いけど、レアティーズは妹を本当に大切に思っていたんだから、もうちょっと丁寧に扱ってあげて欲しい。


最後の決闘。
ここは、予想通り見応えありました!
ハムレットもレアティーズも上背があるから、迫力があるんですよね。
で、殺陣もしっかりしていて、切り結ぶのとか全力な感じ。
非常に良かったです。
ガートルードが毒杯を飲み干すところなどは、母って感じで良かった。
レアティーズの赦しはちょっと唐突な感じはあったけど。
そして、ラストはホレーショーの台詞で幕。

「おやすみなさい。殿下」

「王子様」だったかも?
でも、それまでずっとホレーショーは「殿下」って呼んでいたから、やっぱり殿下かな?
とにかく、この台詞でやっと成河さんらしさが出ました。
ここまで、いまいちホレーショーって存在が軽かったんです。
正直、成河さんの良さを生かせてないなーと勿体なくて。
身軽さなどは生きてましたけど、それも目立つわけではなかったし。
それが、この一言で、かなり満足。
それくらい良かったです。

更に、この一言で思ったのは。
この「ハムレット」は、ずっと休みたかったのかな。
何だかわからない苛立ちに、亡霊から課せられた使命。
めちゃくちゃに、がむしゃらにしか生きられなくて、止まることができなかった。
ようやく安らかに、眠ることができた。
そういう意味で、不幸な結末ではなかったのかもしれないと思ったのでした。


カテコの最後には、井上さんから一言ご挨拶。
舞台袖にはけようとする村井さんを涼風さんが止め、井上さんが引っ張り。
「言ってよ」と井上さんに文句を言う村井さんでしたが、「アナウンスがありましたよ」とつっこむ井上さん。
仲良さげで微笑ましかったです。
井上さんのご挨拶は、「2時間少し(休憩入れてね←村井さんツッコミ)に凝縮されたドラマです」「最後まで頑張ります」「ご来場ありがとうございました」といったものでした。
正直…うわ、普通やん、と思ってましたw


全体を見終わって、たしかに凝縮されたドラマだと思いました。
曲は、結構印象的で、なんとなく頭に残ってるかな。
ロックなので、はじめにも書きましたが、エビータとかJCSとか、ちょっと彷彿したり。
ハムレットに関しては、残念だけど、「名王」になりそうには思えなかったな。
現代風の若者に感じました。
WSSが現代風ロミジュリであるように、この「ハムレット」も現代風味が強いかも。
今後のデンマークどうなるんだろう…とか、国情が出てこないのがある種、すごいですがw
あくまでも、登場人物の心の葛藤を描いた作品でしょうか。
メイン8人、アンサンブル8人で演じておられるとは思えない、濃さのある舞台でした。