「シレンとラギ」

劇団☆新感線2012年春興業
いのうえ歌舞伎

シレンとラギ」

それは人を殺める宿命のもとに生まれた女。
20年前、《愛》の毒によって
南の王を亡きものにした暗殺者。
その名を――シレン

そして若さと自信に満ちあふれ、
何者をも恐れぬ男。
自らの力を信じ、一途に突き進む若武者。
その名を――ラギ。
 (チラシより)



††キャスト††
ラギ:藤原竜也

シレン永作博美

ゴダイ大師:高橋克実

ギセン将軍:三宅弘城
シンデン:北村有起哉
ミサギ:石橋杏奈

ダイナン:橋本じゅん
モンレイ:高田聖子
モロナオ執権:粟根まこと

キョウゴク:古田新太


ショウニン:右近健一
ヒトイヌオ:河野まさと
ギチョク:逆木圭一郎
トウコ:村木よし子
アカマ:インディ高橋
ヨリコ:山本カナコ
コシカケ:礒野慎悟
モロヤス:吉田メタル
マシキ:中谷さとみ
セモタレ:保坂エマ
ヤマナ:村木仁
トキ:川原正嗣

北の王国の貴族・宮女/南の王国の民・教団員
上田亜希子/須永裕子/中野真耶/西田奈津美/松尾杏音/吉野有美

北の王国の貴族・兵士/南の王国の民・兵士・教団員
蝦名孝一/小林賢治/桜田航成/二宮敦/武田浩二/藤家剛/加藤学/川島弘之/安田桃太郎/伊藤教人/菊地雄人/南誉士広


作:中島かずき
演出:いのうえひでのり



会場は、梅田芸術劇場メインホール。
座席は、3階最後列。
新感線の舞台は見たことがなく、一度見てみたかったのですが、運良くチケットを手に入れられたので行ってきました。

会場について、まず流れている音楽が現代的だなあと思いました。
オープニングは、客電がついたままで真っ青なライトが降りそそぐ舞台。
音楽に合わせて、真っ赤になったり白のムービングライトを使ったり…しばらく照明を堪能できる時間。
そして、照明の切り替わりのタイミングに合わせて客電も落とされていきました。

下手袖(もしくは客席)から始まるお芝居は、ラギとキョウゴクから。
3階席からだとやや見切れ。
でも、藤原さんの声も話し方も個性的なので、すぐわかります。
一方、古田さんは聞き込んでいないせいもありますが、初めはどなたかわからずでした。

キョウゴクは、北の王国の侍所のTOPで、ラギはその息子。
北の王国では、先頃、ソンシという先の将軍が亡くなり、息子のギセンが将軍の地位に。
しかし、ギセンはまあ、うつけ…という感じの将軍で、実権は執権のモロナオと妻、弟が握っているようです。
…って、モロナオって、高師直
執権っていうと、鎌倉幕府だけど、師直だと室町幕府だなあ。
チラシだと北の王だけど、ギセンは将軍。
この辺の名称は、いろんなところから引っ張ってきているのかな。
ギセンって言われると大陸系に感じるし。
あ、衣装は、日本風でした。

南の王国のほうは、ゴダイをTOPに据えた宗教国家。
ゴダイは王ではなくて教祖さまです。
結構無茶な教義ですが…。
「人は神の椅子となれ!」とか。
ゴダイは、20年前に暗殺されたはずだったのに、最近、また姿を見せるようになったとか。
その辺が、物語の発端でもあるんですけど。

なんで、20年の間に北の国は攻め込んだりしてないんでしょう?
先の将軍が生きている間に攻めておけば?
ゴダイがいなくても、求心力や国力は衰えなかったってことなんかな?

とにかく、ゴダイが生き返ると北の国としては厄介だから、シレンに暗殺の命令が下ります。
20年前に暗殺したのもシレン。し損じた責任をとるという形です。
そして、シレンとラギが南へ行き、北でもいろいろな思惑があり、キョウゴクが動き…。

人を殺すために存在する「楼蘭」であることに迷いをもっていたシレンが、最後に「人として」生きる道を見つける、というお話でしょうか。
ラストシーンの血しぶきを表現する、真っ赤なキラキラ紙吹雪が綺麗でした。

とにかく、照明の使い方、効果音と共にスポットライトを決めるのとか格好良かったです。
ムービングライトも多用されていて、面白かったし、色使いとかも考えられているなーという感じ。
殺陣のシーンも結構あったのですが、音楽と共に剣の効果音、そこに台詞が入ると音量が下がる…という手法は、3D-DELUXの舞台で見たのと同様。
3Dの主宰のお一人、タイソンさんは新感線の俳優さんでもあるからか!と納得です。

笑い担当のダイナン、ギセン、ヒトイヌオがそれぞれキャラクターを崩さず笑わせてくれるのが良かったなー。
基本、真面目で重い内容なのですが、ちょこちょこ入る軽い笑いが決して物語の世界を崩していないのが良かったです。
大真面目に笑いを取ってくれているので。
モンレイやマシキも良かったです。


以下、ちょっと個別感想。

■ラギ
しっかり若造に見えました。青い!(いや、衣装がじゃなくてね)
シレンに最初から惹かれているのもわかったし、性急な若者とかはお得意分野でしょうか。
そして、やっぱり華があるなーと思います。
スポットライトを浴びると、本当に綺麗というか…存在感がある。
2幕からの白いのも、似合っていました。
ただ、あまりにも藤原竜也さんらしい役柄過ぎて、勿体なかったかも。
心底愛した女性が、実は…というのも、藤原さんらしすぎる。
「アイはコロシアイ」って言うけど、実際は、殺されることで完結したいだけなんだろうなあ。
もうちょっと深く悩む青年であって欲しかったと思います。
カテコではちょっとお疲れだったのか、走ってくる足の上げ方が重かったですw

シレン
めちゃめちゃ可愛い。ラギが惚れるのがよくわかる。
実際、永作さんって、年齢より若く見えるし、20年前と変わらない…もすんなり納得できます。
人を殺すことに何の意味があるのか迷っているところに、キョウゴクに必要とされて生きる意味を見つけたり、殺すためにはとことん本気でそのために傷ついていたり。
一番葛藤を抱えていた人なのかなあと思います。
でも、なんかなあ…。
たぶん、最後まで生き方に迷っていたんじゃないかな。
最後の最後で、生きる意味、自分たちの存在意義を見つけて、ふっきれた感じ?
ラギへの思いがどう変わったのかがよくわからなくて、そこらへんをもっと見せて欲しかったなーと思います。
あ、途中にあった、シレンの悪夢は、人形使ってるところが気持ち悪かったけど…。
濡れたラギが現れる所は、ラギを生む、子として認識しているシーンと私は読みましたが、いかがでしょう?

■キョウゴク
結局は、流される人なのかな?
信念とか、よくわからなかった。
格好良いんだけどね。
最後の最後も、謎めいてる。
何がしたかったんだろう。
ただ、復讐?それも、自分を捨てた妻への?
表面上は、良き父、良き臣下だったけど、どこかで狂っている人のように思う。
だって、行動の意味がよくわからんもん。
…あ、だから京極なんか?

■ダイナン
可愛いw
剛の者である一面と、プリティーな一面が、違和感なく共存しているのがとっても素敵。
ある意味、一番迷いのない人だなあ。この作品においては。
死ぬときでさえ、前向きな気がする。

■ギセン
うつけ者ーと見せかけて、実際うつけ者なんだけど、実は強かったりする意外な将軍さま。
この人も、迷いのない人だなあ。
「虫ー!」は良かった。
この作品で、その後幸せになりました…の一番は、きっとこの人だと思う。

■モンレイとマシキ
この人達も、その後幸せになりました…って人たちの筈。
過去を吹っ切って、生きることに前向きになる人は綺麗。
潮干狩り〜はあれだけど、最後のシーンは好きです。

■ゴダイ
硬軟が上手い役者さんだなあと。
テレビで拝見するのは堅い役が多くて、トーク番組だととっても柔和な人柄で。
その二つを見せてくださって、とっても存在感がありました。

■ヒトイヌオ
初めは、なんだなんだ?でしたが、どんどんはまって行きました。
犬笛で呼ばれるシーンとか、可笑しかったです。
意外に忠実で(犬だから?)、現実的なところも良かったです。


以上、印象に残った人たちと場面について。
正直、今回は、ちょっと残念だったかなーという印象。
舞台芸術は、素晴らしかったんですけど、お話の中味自体が。
また、機会があれば、新感線の舞台、拝見してみたいと思います。