「悪の教典」

悪の教典


悪の教典(Lesson of the evil)」
 貴志祐介


「まるで出席を取るみたいに、
 先生はみんなを殺し続けたんだ。」

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これは、映画のキャッチコピー。
映画は観ていませんが、TVCMで興味を持った作品でした。
CMで見る限り、「先生」はとっても爽やかでしたが、どうして「みんなを殺」すんだろう?


たまたま図書館で、上下巻そろっていたので、週末で借りて一気に読みました。



生徒に絶大な人気を誇り、
PTAや職員の間でも抜群に評判のいい教師が
反社会性人格障害(サイコパス)だったとき、
惨劇へのカウントダウンが始まった。

英語科教諭・蓮実聖司、32歳。

暴力生徒や問題父兄、淫行教師など、現代の学校が抱える病理に
骨まで蝕まれた私立高校で、彼は何を行ったのか。
高いIQをもつ殺人鬼は、“モリタート”の旋律とともに
犯行を重ねていく。
 (以上、作品紹介より)




主人公の蓮実は、ハスミンの愛称で生徒から慕われる2年4組の担任です。
しかし、本文ではその裏の顔もきっちり描いていくので、如何にして「みんなを殺」すのに繋がるのか、と読み進めました。

映画のコピーが頭にある分、ある程度、話の予想がついていたのは、マイナス要素でもあるかな。
とはいえ、予想がついたのは、「皆殺し」をすることだけなので、そこに辿り着くまでの物語の積み上げは、面白かったです。

…面白かった…としか言えないのですが、蓮実の行動には、結構不快感を覚える場面も多かったのも事実です。

蓮実は、他人との共感能力が極端に低い、もしくは、ない。
そのことを教えられて、普通の人らしく装う必要を学び、周囲の人々をコントロールしていく。
教室は自分の好きなように出きる王国で、蓮実は思うままに生徒達を操っていこうとする。
しかし、そんな蓮実に違和感を覚える生徒もいた。


自分の意図に反したり、自分の邪魔をする人物を、排除していく蓮実。
自分としては、完璧にやり遂げているつもりだったのに、ちょっとしたミスから、自分に不利な状況に、なっていくんですが…。

もうちょっと普通に考えたら、不自然きわまりないでしょう!
なんで、そんなに自信満々に、「完璧にやっている」的に思えるんだろう??
その辺も、「サイコパス」ってことでしょうか?


生徒を皆殺しにするところなどは、現実味があまりなくて、映像向きという感じでしたが(もしくは、ゲームのようでしたが)、過去を織り交ぜながら蓮実という人物を描いていくのは、小説として面白かったです。
そして、蓮実のような人間はいない…と思いたいけど、いるかもしれないと思うと…かなり恐ろしい。
いや、たぶん、蓮実のような人はいるんだろうけど、ここまで世の中に上手く適応して紛れている人はいないと思う。

現実世界をとっても良く模写した、一種のファンタジー
…と、私は読みました。
じゃないと、恐ろしすぎる…(^^;