「過ぎ去りし王国の城」

「過ぎ去りし王国の城」
 著:宮部みゆき

過ぎ去りし王国の城



本屋で見かけて、すぐ図書館へ行って来ました。
幸い、1人待ち。
予約して帰ってきたら、その日のうちに返却されて、連絡がきました。


タイトルから、ファンタジーだろうな、と予想。
更に、扉絵から、現実世界から異世界へ行く系のお話だろうな、と予想。


この予想は、ほぼ当たっていました。

しかし、思っていた以上に、現実に即した物語。
異世界へのトリップはあるものの、その異世界は、ある意味、現実に存在している異世界でもあります。

ファンタジーというよりは、SFと言った方がいいのかもしれません。



お話は、高校に推薦で合格した中学3年生の男子、真が、母親に頼まれて銀行へ行ったところから始まります。

その銀行で見かけた一枚の絵。
そこに、描かれていたのはお城。
それを見た真は、「過ぎ去りし王国の城」というタイトルにあった絵だと感じる。

窓口で呼ばれ、用事を済ませた真は、先ほどの絵が床に落ち、踏みにじられるのを見て、思わずその絵を拾い上げてしまいます。
しかし、手にしたものの、どうしていいか分からなくなった真は、そのまま絵をポケットにいれ持って帰ってしまうのです。

夜。
靴跡がついて、くしゃくしゃになった絵を取り出していると、どこからか、微かな音が。
指笛のような音も聞こえます。

不思議に思った真が絵に触れると、絵の中の風景が現実のもののようにリアルに感じられ…。

棒人間(頭が○で、手足が棒の、お手軽な人間のイラスト)を書き入れ、触れると、目の前が真っ暗になって倒れ込んでしまった真。

棒人間だと、目も耳も口もないから、見えない聞こえない息も出来ない。
バランスも悪いから、立っていることも難しい。

でも、確かに、絵の中には入り込めた。

以来、真は、絵の中の世界に入るために、どうすればいいかを考えるようになります。

いい加減な絵ではダメ。
城と同様、リアルな人間でなければ。

残念ながら真は絵が苦手で。
そんなとき、同じ学年の城田という女の子を見かけます。
城田は孤立している女子で、真と同様、高校に推薦で合格していて、そして、絵が得意。

城田の手助けを借りて、城のある世界へ足を踏み入れた真。
そこで、もう一人、指笛を吹いていた大人の男性と出会い。

その世界の謎を解いていくのです。



ファンタジーです。
SFです。

ちょっと辛い話も出てきます。
(いや、だいぶ辛い)

でも、宮部さんの世界。
ちゃんとあたたかな未来があります。


ネタバレにならない程度で、全部読み終わっての感想。



何年後でもいいから、パイナップルでおいしいカレーを、食べて欲しい。
友達だから……いい言葉だなあ。