「愛と青春の宝塚 〜恋よりも生命よりも〜」

††キャスト††

嶺野白雪(リュータン) 真琴つばさ
橘伊吹(タッチー) 貴城けい
星風鈴子(トモ) 星奈優里
紅花ほのか(ベニ) 紫城るい


オサム 松下洸平
速水悠介 坂元健児
影山航 岡田浩暉


タカラジェンヌ(男役)他
植野葉子/美郷真也/光海あきほ/かわづ恵/牧勢海/涼麻とも/夏空李光/日向燦


タカラジェンヌ(娘役)他
叶千佳/水月舞/峯眞琴/彩橋みゆ/千はふり/山田裕美子/塩月綾香/紗羽優那


男性アンサンブル
高橋広司/谷本充弘/安部泰律



座席は、3階後方サブセンターブロックあたり。
前回、ファントムの席より後ろ。
でも、皆様きちんと正しい姿勢でご覧になっていたので、とっても見やすかったです。
一部、客席を使う演出があるので(1幕はじめと終わり)そこが見えにくかっただけ。


この作品は、テレビドラマでは見ていましたが、舞台化されていたことは知りませんでした。
たまたま、再演のチラシを見て、そこに坂元健児さんのお名前があったので、見てみようと思ったのです。



幕開きは、宝塚の華やかなレビューから。
男役のダンス、娘役のダンス、組んでのダンス。
現れる大階段。
羽根を背負って下りてくるトップスター。


宝塚を知っている人ならわかる。
レビューの最後に必ずある、大階段からの流れが、忠実に再現されてます。
そのきらびやかな世界に、ぼろ靴を投げ込んだ薄汚れた少年…に見えたけど少女。
守衛に追いかけられて逃げて、うっかり宝塚音楽学校の試験会場に紛れ込み、課題のバレエを踊る。
演出家で脚本家の影山は、彼女に何かを見いだし、翌日の歌の試験も受けるようにすすめる。
影山と少女の話を聞いていたオサムから、音楽学校は全寮制であること聞いた少女は、受験を決め、合格。


歌と踊りで、音楽学校の不思議なしきたりやレッスンを紹介。
下級生はお掃除を頑張るとか、廊下は直角に曲がるとか…。
日舞のお稽古、歌のお稽古。


靴を投げつけた少女は、橘伊吹(タッチー)。
同期生の星風鈴子(トモ)は、早く初舞台を踏んでトップになりたい!と野心的な男役。
紅花ほのか(ベニ)は、リュータンさん大好きな娘役。


三人は、初舞台のあと、リュータンがトップをつとめる雪組に配属される。
終演後、山盛りのイチゴを片手に現れたリュータン。


「あんたら、イチゴ、好きか?」


と、説教を始めるリュータン。
その後は、なんとなく話がずれて、みんなですき焼きに行くですけど。


トモが娘役に転向してトップ娘役になったり、タッチーの過去が語られたり、影山先生にアドバイスをうけるうちにリュータンが影山先生に惹かれたり…と物語がすすんでいきます。
そして、ある日、舞台の最中に、突然「やめろ!」と怒声がかかります。
「帝国軍人は、女の手を握ったりしない!」
一人の海軍中尉によって、その日の舞台は最後までやり遂げられましたが、終演後、その中尉(速水中尉)から「明日、大劇場が閉鎖されます」と知らされる。


「今日(こんにち)、宝塚は必要ない!」


戦争が行われている非常時に、舞台芸術は不要である。



公演ができなくなった歌劇団の生徒達は、慰問団として満州を訪れていた。
狼がすぐ近くまで来るような辺境で、明日、前線に移動する兵士を慰めるトモ。
その姿を見とがめられたことから、トモが不治の病であることが皆に知らされる。


満州からの帰りの船上で速水と再会し、思いを寄せ合うタッチー。
影山先生がタッチーを好きだったと知って、落ち込むリュータン。
意識混濁のなか、リュータンに支えられて逝くトモ。


東京も、大阪も、空襲で焼け野原となり。
速水は人間魚雷として、玉砕。


絶望に沈む中で、組子達を明るく励ますリュータン。


そして、戦争が終わり…。
今こそ、私たちにできることをするんや!
人々に、夢と希望を与える、歌と踊り。
疲れ切った人々に笑顔を取り戻させていく…。






戦争と震災との違いはありますが、どこかで今の世の中をうつしているような気がします。
出撃前に、タッチーに会いに来た速水中尉が言う台詞。
「日本は世界が驚くような復興をやり遂げます!」
終始、穏やかで、冷静に話していた速水中尉が、唯一激しく言い放った言葉。


冷静で全てを見通していて、それでも、部下だけを死なせるわけにはいかないと出撃する速水中尉は、めっちゃかっこよかった。
…と書き始めると、ひたすら、速水中尉について書いていきそうなので、いったん、終了。
個別感想、書きます。



■リュータン
舞台の上の時よりも、舞台の上にいないときの方が、いっそう光り輝いていた。
…と書くと、よくわかりませんね。


トップスターとして舞台上にいるときも格好いいです。
でも、舞台から下りて、組の代表として組子を引っ張っているときのリュータンさんはもっともっと格好良かった。


スターらしい我が侭な一面も見せるけど、組子を愛していて、みんなの気持ちを盛り上げる。
トモに向かって、「あんたは、私が守る!」と言い切る潔さ。
リュータンさんのすごさは、逆境に置いてこそ発揮されている。
本当は泣きたいのに、トップだから、笑い飛ばす。
底抜けの明るさを見せて、みんなをひっぱる。


舞台の真琴さんを見るのは、初めてではないけど、真ん中に立っている真琴さんを見たのは初めて。
面白くて、可愛くて、格好良かった!
すごく、素敵でした。
勿論、それは、リュータンさんのキャラクターもあるんでしょうが、リュータンさんを嘘無く演じておられたと思います。


歌は、正直、ちょっと…でしたが。
(プログラムによると「戦後初の超低音スター」(ご本人曰く)らしいです)



■タッチー
役所からすると、こっちが主役のような気がします。


伯爵家令嬢から歌劇団へ。
思いを通わせた人は船上で命を落とす。


でも、リュータンさんの光が眩しすぎて、やっぱり二番手さん、なのかな。


仕方なく歌劇団に入った…と冷めていたのに、いつしか歌劇団を愛していて。
速水さんの前で素直になって、二人で歌い踊る船上のシーンは、女性らしさが出ていて綺麗でした。


リュータンさんには、下町のオバちゃん的な強さがあるけど、タッチーには優雅な感じもあるかな。
ラストのダンスは、色気があって格好良かったです。



■トモ
娘役に転向するときのタップが軽やか。
それまで、男役だったのが、話し方から娘役に変わるのが見事。


悲劇的な役所ですが、それをちゃんと泣かせるところがさすがじゃないでしょうか。


意識混濁の所など、涙無しでは見ていられなかったです。
また、そのときのリュータンさんが素晴らしくて。



■ベニ
めっちゃかわいかったです!
リュータンさん大好きで、ちょっとパニックになりやすくて。
失敗しては落ち込んで、いっぱい泣いて、いっぱいはしゃいで。
普通に傍にいたら、もしかしたらちょっとめんどくさい人かもしれないのに、それをすごく可愛い人に演じておられました。



■オサム
勿論、これは「手塚治虫」さんのこと。
テレビ版では、小学生でした。
戦争に対して、「なんでや!」と問いかけるところなどを見ていて、この話は実話ではないけど、そんな気持ちが「火の鳥」や「アドルフに告ぐ」や…様々な作品を作っていったのかなあ…と思って見ていました。


気弱そうな少年を演じておられたと思います。
ベニとの絡みが面白くて、可愛かったです。



■速水中尉
この方が目的で行ったところが大きいのに、登場は、1幕最後くらいから!
まだかまだかと待ち続けましたよ(^^;


しかも、1幕には歌はなし。
まじかー?


2幕、船上でようやく再登場。
甲板で、タッチーを見かけて、隣(5m暗い離れた)所に立って、タッチーの方を見る…。
が、船酔いしているタッチーは気がつかない。
ばさっと、マントを翻し、2mくらい近づいて、かなり大きな動きをし、タッチーの方を見る…けど、やっぱり気付いて貰えない。


さりげなく気づいて貰おうという速水さんの目論見がかわいくて、でも、気がついて貰えないのが可笑しくて。


結局、自分から声をかけて、タッチーにめちゃくちゃ驚かれるんですが。


その後、ようやく歌い出す速水さんですが、この歌が優しい。
声は若々しくて、まさに青年将校


アンジョルラスとかジョンとかのように、人々に訴えかける歌ではなく、恋人に語りかける歌だからか。
とにかく優しくて、素敵でした。



出撃前にタッチーに会いに来るところでも、優しい歌。
台詞も爽やかで、明瞭で、知的。


でも、タッチーから「生きて帰って」と言われたときだけ、激昂。
それでも、決して、感情のままには話さない。


歌の最後で、ようやくいつもの坂元さんらしい劇場を貫くような声。
それは、「平和な時代にもう一度会いたい」という実現不可能な速水の思い。
格好良かったー。



これで、坂元さん出演終了。
…って、3場面だけ?
歌も、こんな少ないのかー??
いい役だけどね。


※このあと、速水さんの戦死を伝えるラジオの声は、小林アトムさんだそうです。
 アトムさんのこと、思いながら、聞かせていただきました。



最後にカテコで、登場された速水さん。
…ここは、ダンスシーンです。
真琴さんや貴城さんが踊るのはわかりますが…坂元さんも?
と思っていたら、坂元さん、すーっと上手端に移動され…下手側を見る。
まさか? おお!坂元さん、宙返りだー!
軽やか! 着地もふわり。 これが、坂元さんのアクロバットか!
初めて見ました。
さすが、元体操選手(ですよね?)


更に、全体ダンスでも、ちらっと踊っておられました。
(ホントにちらっとですけど)
(さりげなく群舞から抜け、さりげなく戻って来られて)


黒服で、タカラジェンヌに交じって踊るところも見られたし、出番は少なかったけど、ヨシとしよう!



■影山先生
まあ、そうですね。
歌とか、演技とか、おいといて。


大阪弁を話すなら、もうちょっとしっかりやって下さいよー!
中途半端な発音なので、気持ち悪いったら!


真琴さんも大阪弁なんですが、こちらは自然。
真琴さんだと歌でもしっかり大阪弁に聞こえるんです。


でも、演技としては情けない男で、いい感じでした。
戦争にも行かず、歌劇団の引率しているだけの自分に、自信が持てなかった。


この方のマリウス、ちょっと弱めで、結構好みでした。
そういう役がお上手なのか?



■アンサンブルさん
宝塚OGの皆様はさすがです。
群舞が、すごく綺麗。
手の角度、指先、ターンの速さまで、ぴったり揃ってる。
歌に関しては、コーラスがいまいちでしたが。
ダンスの上手な方が集まってるのかな?


そして、男性アンサンブルさんに谷本さん…って、知ってる気がする??
プログラムを見ると、やっぱり。
アイーダなどに出演されていました。
もうちょっと早く気がついていたらもっと注目したのに…。
とはいえ、アイーダの時の谷本さんとか、覚えてないですけど。(ごめんなさい)





カテコの最後、真琴さんからご挨拶がありました。


湖月さんと相談して、義援金の募金箱の前に立とうと決めたこと。
おかげで、たくさんの義援金が集まったこと。
自分たちにできることは、舞台でみなさんに元気を送ることなのに、みなさんからたくさんの元気を吸い取った気がする。
このあと、アフタートークショーがあるので、多少なりとも、吸い取った元気をお返しできると思います。
どうぞ、お楽しみ下さい。


といった内容だったんですが。
真琴さん、結構かみかみで。
義援金」を「ぼえんきん」と言い直すこと2度。
おそらく、「ぎえんきん」と「ぼきん」が一緒になったんでしょうなあ。


また、貴城さんに「さっきのビンタが空振りしたことについて、説明するように」
劇中で、リュータンがタッチーにビンタするんですが、そのとき、音がしなかったんですよ。
てっきり、音響さんのミスかと思っていたんですが…。
貴城さんが、何かなさったのか?


最後、「どうぞ、お聞き帰り下さい」で〆。
「お聞き帰り」て…。
真琴さんも、舞台上で、がくりと膝ついておられました。
なんというか、さすがですね!



トークショーには、貴城さん・星奈さん・紫城さんが登場。
ハプニングはという質問で、しっかり答えてくださいました。


真琴さんと組むのが東京以来で、最近は湖月さんと組むことが多かったので、距離感がわからなかった。
で、来る!と思ったとき、思ったより近くて…「思わず、よけてしまったみたいです」
倒れてから、「あれ?今、わたし…」と叩かれていないことに気がつき。
袖に入ってからも、「はぁ…」と落ち込んでおられたとか。


他にも、大阪で食べるのはとか、皆さんに一言とかあって、トークショー終了。
外では、久しぶりに見る、宝塚風お見送り。
ひゃー。
誰か出てこられると、さっと座って、後ろの人に見えるようにする統制。
素晴らしい…けど、誰のファンさん達でしょう?
すんごい人数でしたよ。



以上、観劇日記およびその周辺日記でした。
長くてすみませんでしたー。