「モンテ・クリスト伯」('14/1/5マチネ)

ミュージカル
モンテ・クリスト伯


(画像は4日の使い回し^^;)


††キャスト††
石丸幹二 エドモン・ダンデス/モンテ・クリスト伯
花總まり メルセデス
岡本健一 モンデゴ
石川禅 ヴィルフォール
坂元健児 ダングラール
濱田めぐみ 女海賊ルイザ
村井國夫 ファリア司祭

林アキラ 船主モレル
岸裕二 ジャコポ

大川勇 アルベール
ジェイミー夏樹 ヴァレンティー

男性アンサンブル
安部誠司/奥山寛/さけもとあきら/武内耕/谷口浩久/寺元健一郎/中山昇/山名孝幸/横沢健司

女性アンサンブル
家塚敦子/石原絵理/岩崎亜希子/大月さゆ/樺島麻美/鈴木結加里

指揮 西野淳


原作:アレクサンドル・デュマ
脚本・歌詞:ジャック・マーフィ
音楽:フランク・ワイルドホーン
演出:山田和也



正義は行う者のために
愛は与える者のために


大阪公演の千秋楽。
座席は、下手のはしっこの方ですが最前列です。
前日マチネも見ていて、その時の座席は、後方ブロックの更に後ろの方の列で上手サイドブロック。
ただし、通路際だったので、視界は遮られることなく、全体を見渡せる席でした。
対して、千秋楽は、全体を見るというよりは役者さんの細かい表情などをしっかり見られる席。
前方席に座って、少し印象の変わったところもありました。

まず、冒頭の字幕は、斜めから見る感じになって、見にくくなるかも?と思いましたが、大丈夫でした。
字幕だけじゃなくて、映像も出るのですが、激しい波が打ち寄せる映像…東映(映画)みたいw
後方席で、いいなーと思ったコーラスは、前方席(サイド)だと音響バランスもあって、ちょっと残念なことに。
これは、冒頭のコーラスだけじゃなく、その他の歌も全般に後方席で見たときの方が良かったです。

前日に見たときは、エドモンの気持ちの変化についていけなかったり、お話のラストにいまいち共感できなかったりしたのですが。
この日は、お話のラストについては、仕方ないのだなーと思うようになりました。

というのも、このお話(舞台脚本)は、「信じて待ち続けるメルセデス」と「待ち続けている(筈の)メルセデスを信じ続けるエドモン」を主軸にして書かれたものだとわかったからです。
初めて見たときには、「マイ・フェア・レディ」のイライザのように無知だったエドモンがファリア司祭のおかげで目を開き、一旦は復讐に身を投じるも、最後には許すことに救いがあると気がつく物語、だと思っていました。
そのため、「えー、そんな終わりでいいの?エドモン!」と思ったところがあったのです。
しかし、冒頭、エドモンが航海から帰ってきてメルセデスと愛を確かめ合うシーンから、牢獄に囚われるシーンまで、貫かれているのは「二人の絆」。
特に、メルセデスの愛です。
エドモンが最後に矛を収めるのも、ヴァレンティーヌにかつてのメルセデスの姿を見たからだと思うのです。
もともとエドモンを復讐に駆り立てた一番の思いは「メルセデスに裏切られた」だったと感じました。
メルセデスがモンデゴと結婚したと聞いて、気持ちが爆発していましたので)

ここまで、二人の愛を主軸にしているので、ラストは仕方ないというか。
そういう作りにしてある物語、なのだと納得しました。

あくまでも、デュマの「モンテ・クリスト伯」は原作。
こういう味付けもあり、ということでしょう。
(「オペラ座の怪人」だって、ALW版、コピット版、ケン・ヒル版とありますし。)
そう思って見れば…そう思ってみても、もう少し深みは欲しいですが…でも、音楽はいいし、楽しめた舞台でした。


以下は、個別の感想です。

エドモン・ダンデス
4日のマチネはちょっと声が不安定というか、音が不安定というか、そんな箇所が見受けられたのですが、5日は良かったです。
石丸さん本来の美声が、朗々と響き渡っていました。
誠実で素直な青年・エドモンは、爽やかで好青年でした。
もうちょっとスリムだったら、完璧な美青年だったかな。
腰回りが少々立派なのが惜しい。
でも、それ以外、しっかり青年らしくてよかったです。

ファリス司祭に出会って、見識を広げていくところは、もう少し、わかりやすいとよかったです。
剣の腕前を披露するところが後にあるので、そこはしっかり描かれているのですが、一番の武器である知性を身につけたというところが弱いかなあ。
ただ、誰が自分を陥れたか(何のために)を知って、復讐してやる!となっただけに感じました。
物事を広い視野で見て、冷徹に判断し、彼らを破滅させていくというのが、醍醐味だと思うんですが、その辺りが簡単に描かれていて、クリスト伯の凄さがお金持ちなことだけみたいになってしまってる。

ただの船乗りが、伯爵を名乗ってもおかしくないほどの変化を遂げたのを、見ているこちらに納得させて欲しかったです。
まあ、もともと素質があって、ファリア司祭のおかげでその資質が開花したのかもしれませんが。
伯爵になってからが、「正義を行う!」とただ単に復讐の鬼になってしまっていたのが残念です。
同じ復讐の鬼でも、どこかで知性を感じさせて、見事に罠に嵌めていくところ、見たかったな。
そのシーンが短くまとめられていたせいで、伯爵の凄みがあまり出せなかった感じかと思います。残念ー。


メルセデス
後ろで見ていたときは、スタイルいいなー、と思っていたくらいでした。(すみません)
歌は、あまりお得意でない、と聴いていたので、実はかなり覚悟していたのですが、思ったほどではなく。
もちろん、石丸さんを初め、周りの方が歌うまさんたちなので、そこに混じってしまうと負けてしまいますが。

しかし、前で見ると…印象が変わりました。
エドモンと婚約するところ等の幸せいっぱいの顔。
エドモンが囚われてからの、絶望から立ち上がって信じて待とうと決心するまでの心の移り変わり。
モンデゴの嘘がなければ、メルセデスはきっと何十年でも待てたと思える、そんな思いの強さが感じられました。

じゃあ、なんで、モンデゴと結婚したんだろう…とは、ちょっと思ったけど。
支え続けてくれたからふらっと心が揺れてしまった…そんな女性には見えなくて、エドモンが死んだなら修道院にでも入ってしまいそうなんですが。
(時代的にそういう風潮がなくなってしまっていたのかもしれないですが)
例えば、家族のために、結婚しなくてはならなかった、とか、そういう設定があると、ラストに説得力がでたのになーと思ってしまいました。

モンデゴと結婚し、年月を経たメルセデスは、物憂い表情。
常に影を纏っている感じです。
思えば、それが振り切れなかったエドモンへの思いだったのかも。

歌は、囁くように歌うところは、マイクもしっかり拾っていますし、情感たっぷりで良かったです。
しかし、歌い上げるところになると、やっぱり弱くて、石丸さんにかき消されてしまうこともたびたび。
立ち姿の美しさ(いや、座っている姿もお美しいんですが!)が圧倒的だっただけに、ちょっともったいない感じでした。
花總さんの舞台は初めて拝見したのですが、次回作の「レディ・ベス」も見てみようと思いました。


■モンデゴ
結婚してからが非道いです。
歌は、やや弱め。
石川さん、坂元さんと歌うと、負けてしまいます…が、相手が悪すぎるという気もします。

エドモンの「正義」を正当化させる為には、いい感じで悪役です。
ただのクズ男かと思いきや、そこまでやるのか!という非道さ。

でも、物語に深みを持たせるためには、この人がクズ男になったのは、メルセデスのせいであっても良かったかと思います。
どんなに愛しても、傍にいて優しく支えても、心の奥にエドモンを抱え続けて、妻にはなったけれど、モンデゴを愛することは無かった…。
その辛さが、モンデゴを屈折させたのだというのもいいと思ったのでした。


■ヴィルフォール
登場シーンではいい人。
エドモンと同じで、私も心底ほっとしました。
しかし、一転、保身に走るのは、権力者としてありがちかと。

初めのいい人っぷりが、本当にいい人っぽかっただけに、落差がすごかったです。
ただ、モンデゴ、ダングラールと並べて3悪人とするには、ちょっと質が違うかなと思いました。

エドモンをシャトー・ディフへ送るよう命じたあと、調書に火を点けるんですが。
めらめらと燃えている調書から手を離さないヴィルフォール…。
途中で、灰皿みたいなところに置くだろうと思っていたら、セットごと舞台奥にはけるまで、しっかりお持ちになっていました。
ちゃんとそういう加工がされているんだろうと思いますが、見ていて、「火傷しないかな、大丈夫かな?」と怖かったです。


■ダングラール
4日は、その歌声にうっとりでした。
5日は、3悪人で歌われるときなどに、目の前に来られたりして、声を堪能しつつもちょっとドキドキしていたり(^^;
舞台からは見えないとわかっているのに、なんでしょう、目の前にいらっしゃると恥ずかしくなって、目を逸らしてしまうという。

しかし、やはり、声がいい…。
というか、でっかい(笑)。

下手端席ですから、基本的に、声は舞台袖のスピーカーから聞こえるんです。(つまり左耳で聞いている)
そんな中で、いきなり右耳にどーんと飛び込んでくる、坂元さんの歌声。
たぶん、マイクが絞られていたとか、そういうことなんでしょうけども、続けて歌われる禅さんの歌声と大きさに差を感じないという。
(岡本さんじゃなくて、禅さんですよ?)

パーティなどのコーラスでもばしばし地声が聞こえるので、それはとても嬉しかったです。
とにかく私は坂元さんの歌声(それも特に高音部)が好きなのです。

が、演技は、というと。
近くで見ていると、うーんってところもありました。
若いときのいい人に見せかけているとき、実は企んでいる悪い顔、その辺は特に気にならないんですが。
年を取ってからの、特に破滅のシーン。
全財産を失って、狂乱するというのが、もう一つ真に迫っていない感じ。

禅さんは打ちのめされた感じで、もうどうしようもない…という無力感、絶望感が伝わってきました。
しかし、坂元さんは、大騒ぎはしているけれど、そこまで騒ぐ理由がもう一つ伝わり切らなかった感じです。
あのダングラールだったら、「くそー、今度こそ、伯爵の全財産を奪ってやる!」とか、更に戦いを挑んできそうなんだけどw


■ルイザ
抜群の歌唱力。
ばーんと飛び出してくる歌声は、さすが濱田さんです。

その歌声だけで、彼女が荒くれ海賊達のリーダーであることが納得できる。
結構な大声のコーラスなんですよ。
それに全く負けないで、むしろ、それを圧倒するような歌声なんです。
ああ、この人が、この集団を引っ張ってるんだと思わされます。

もしかしたら、エドモンにちょっと惚れていた?
かもしれないけど、全然そんなことも見せない、潔い女海賊。

色っぽいとか、セクシーとか、衣装だけ見ていたらそんな風にも感じてしまいそうですけど。
全くそんな感じない。
とにかく格好いい!
最高に素敵でしたvv

個人的には、四季をおやめになってから拝見した中で、一番好きな役。
やっぱり濱田さんには、男性に縋ったり支えられたりする役より、格好良く自立した女性の役が似合うと思います。(個人的には)


■ファリア司祭
村井さんらしさ爆発。
司祭様なのに、なんともいえない普通のおじさん風。
エドモンの人生を大きく変えた、人生の師の筈なのに、全く肩に力の入っていないおっちゃん。
ミリエル司教と全く色が違うんですけど、本当に神様に仕える人?

ものすごく自然体の村井さんで、演技に見えないほどでした。
司祭様というより、政治家とか、学者とかのようでした。


■モレル
林さんだったのね!
気がつきませんでした。
歌、ありましたっけ?


■ジャコポ
岸さんだったのね!
気がつきませんでした。
…って同じ事を書いてすみません(^^;

ジャコポ良かったです。

「友達になりたいんだ」
とか、エドモン、もっと心を動かされろー!
…と思って見ていました。

エドモンに尽くしているのに、あまり報われていない感じがちょっと可哀想でした。


■アルベール
特に感想はないなあ。
家名を汚した!とか、まあ、若者らしいか。


■ヴァレンティー
この人は、物語の実は大きな要なんでは?と思っています。
父母を陥れられたにも関わらず、復讐など考えていない。
ただ、目の前の愛する人を守りたいという願いだけ。

ソロが一曲ありましたが、この歌もかなり大事な歌だなと思いました。
もうちょっと歌い上げてくださるとよかったかな。


■その他
寺元さんが出演されていました。
後からプログラムで確認しましたが、実は舞台を見ているときには出演されていることを知らず。
「寺元さんかな?」と思いながら拝見していました。
分かっていたら、最初からちゃんと見ていたのにな。

それはともかくとして。
コーラスに厚みがあって、とてもよかったです。
CDが楽しみです。



この日は、大阪公演の楽だったので、カーテンコールでちょこっとご挨拶がありました。
(ご挨拶の前には、石丸さんによるCDの宣伝もありましたw)

ご挨拶は、花總まりさん。
石丸さんに促されて、
「今朝、新聞を見たら5日だったんです。
 新年明けて、まだ5日しか経っていないとは思えないくらい充実していました。」
と言ったことから話し始められ、
「最後、どう締めたら…」と困ってらっしゃったのが可愛かったです。
(もちろん、お礼の言葉などもありました)

花總さんの言葉を受けて、石丸さんが
「では、石丸が締めさせていただきます」
と終わりのご挨拶をされました。

後ろでは、村井さんがわちゃわちゃされていて、そんな様子も含め、楽しそうなカンパニーだと思いました。
再演があったら、見るかな?
まだ、ちょっとわかりませんが、CDを聞いたら、また見たくなりそうです。