「SEMPO」('13/9/28)

ミュージカル 『SEMPO』
〜日本のシンドラー 杉原千畝物語〜

††キャスト††
杉原千畝 吉川晃司
原幸子 鈴木ほのか
ノエル 坂元健児
エバ 白羽ゆり
節子 片山陽加/佐藤亜美菜

松岡洋右 山本芳樹
シモン Kimeru
ニシュリ 和田琢磨
ジョン/ファルバスク 永山たかし
グッシェ 栗原英雄
ガノール/ソ連将校 熱海将
ルネ 水野栄治
踊り子/ユダヤの民 徳垣友子

フランツ 関戸博一
外務省職員/ユダヤの民 飯田太極

ユダヤの民 中本雅俊
ユダヤの民 下道純一
トニー/ユダヤの民 大木智貴
ペーター/ユダヤの民 那須幸蔵
ビル/ユダヤの民 中島康宏
コレオ/ユダヤの民 佐々木誠
大臣夫人/ユダヤの民 遠藤瑠美子
ユダヤの民 香月彩里
ユダヤの民 可知寛子
ユダヤの民 伯鞘麗名
ユダヤの民 鈴木花奈
ユダヤの民 石毛美帆
ユダヤの民 大胡愛恵
ユダヤの民 鈴木莉菜

ニーナ 近藤亜紀/杉原織葉
ユダヤの民 相馬毬花/千葉まゆ
ユダヤの民 細田藍良/小倉優佳
ユダヤの民 加藤綾香/鈴木桃子
ソリー 山田瑛瑠/河崎脩吾
杉原弘樹 小島幸土/鈴木星

外務省秘書官 宮本竜生
ローゼンツ あぜち守
ジョゼフ/陸軍将校 河内喜一朗
エリーゼ マルシア
カイム 沢木順


演出・振付:上島雪夫
作曲:中島みゆき、吉川晃司、PETER YARIN
脚本:川崎登

新国立劇場 中劇場


9月28日のマチネとソワレを見てきました。
Wキャストさん達は、名前が先にある方達がソワレ。
後にある方達がマチネでした。

ただ、サイトなどにも名前が無いのですが、杉原千畝の少年時代をやっている子役さん。
身長からするとソリーくらい?
ソリーの二役かとも思いましたが、通しで同じ子役さんらしいとも聞きました。
プログラムでは弘樹役がトリプルキャストなのに、公色サイトではダブルになっているので、三人目の弘樹役だった筈の子役さんでしょうか?
それにしても、お知らせがないので、やっぱり誰かとダブルキャスト


さて、お芝居は…。
感動のひとこと?
とにかく、心が揺さぶられる舞台でした。
久しぶりに、号泣しそうになって、とっても危なかったです。
あ、この号泣は、もちろん誤用ではなくて、声を上げて泣きそうになったという意味。
スイッチが入りそうになるのを必死でセーブしていました。
2幕の途中から、もう、泣きっぱなしです。
初めのうちこそ、涙を拭う…程度だったんですが、途中からタオルハンカチを目の下にあてて観劇していました。
いろいろご意見もありましょうが…千畝さんと同じ日本人であることが嬉しいと思えるような、感動でした。

初演も見ているのですが、「こんなに良い舞台だったっけ?」と思える程の進化です。
前も良かったと思うんですが、もっともっと良くなっていました。

詳しくは覚えていないところもあるのですが、カットになった場面や追加になった場面があるそうです。
役者さんも初演とは変わっているので、それも変わったところかもしれません。
でも、一番の変化は、主演の吉川さんだと思います。
抑えた演技の中からしみ出す深い感情。
落ち着いた静かな台詞回しからは、杉原さんの人柄がにじみ出ていました。
一番心に残った台詞は「誰もこんな莫迦なことはやるまいね。それでも、私たちはやろうか」
葛藤の果てに、重い決意をした台詞ですが、決意をしたことで心の重荷を下ろしたような清々しさもある台詞でした。

こうやって書いていても、感動が甦って来ます。
どっしりとした大黒柱の吉川さんと、それを取り巻く役者さん達。
本当に良い舞台でした。


以下、その他に印象に残った役柄について。

■ノエル
やっぱり、坂元さんの声は、暗闇の中に灯る光。
最初のエバとのシーンは、恋人達らしい明るい伸びやかさがあります。
辛いことがあっても、苦しいことがあっても、難民達の前ではそれを見せずに明るく希望を見つめる存在。
これは、坂元さんの持つ個性の一つだと思うのですが。
どんな逆境にあっても、未来を切り拓いて行けるという希望を感じさせてくれます。
ノエルという役に、ぴったりだと思います。
というか、坂元さんがノエルだから、ユダヤの人々の暗い夜もいつかは明けると思えました。

そんなノエルに難を言えば二つだけ。
一つ、ビザを発給すると決めた千畝に「ありがとうございます!」という台詞。
あまりにも、体育会系な「ありがとうございます!」で、もうちょっとだけ重みが欲しかったかなーと。
二つ、エバがやって来たとき、もうちょっとだけ、エバへの共感が欲しかったです。
明るいのがノエルなんですが、あそこだけはもうちょっとだけ、深みが欲しかったなーと。

でも、本当にノエルは素敵でした。
ひいき目もあるかもしれませんが、吉川さんの次に良かったと思いました。


エバ
宝塚の人らしいメイクで、とっても綺麗でした。
赤いコートがとっても似合っていました。
溌剌とした可愛いお嬢さんで、難民となってからのギャップが辛かった。
ノエルとのデュエットも良かったです。


■グッシェ
スパイかもしれない、得体の知れない人…という設定でしたが、それらしく本心を見せない人でした。
歌は、微妙なところもあったのですが、千畝と同年代で、少年時代の自分に恥じない生き方を…と決意するところは、良かったです。
千畝の気持ちに共鳴したのが伝わって来ました。


■ルネ
この人も大変なはずなのに、飄々として見える。
片手側転とか、テーブルから落ちる(スタント?)とか、動きも格好良かったです。


■ソリー
千畝の名前を上手く言えないところとか、「代理か〜」とがっかりするところとか、笑いを取るのが上手。
歌も二人ともお上手だと思いました。
最後に大人になって出てくるところには、ちょっとやられました。


■幸子
おきゃんな感じのある、強くて強い女性でした。
ほのかさんの声はややハスキーなので、吉川さんと合うかも。
でも、幸子については初演のみはるちゃんの、いかにもな日本女性でありながら芯が強いという幸子の方が好みでした。


■節子
マチネの佐藤さんは、ちょっと舌っ足らずというか、鼻にかかった声というか…可愛い感じ。
ソワレの片山さんの方が、もう少し強さもある女の子という感じでした。
片山さんの声は透明感もあって、個人的にはこちらの方の方が好みでした。


■弘樹
マチネの子がちっちゃくて、可愛かったです。
ソワレの子はソリーと同じくらいの身長で、バランスが良かったです。


■カイム
ゴム印を持ってきたときの笑顔が、印象的。
そして、ラストシーンで千畝と再会するときの笑顔も素敵でした。


エリーゼ
マルシアさんだということに、マチネが終わるまで気がつかず。
(マチネはかなりの前方席だったのに!)
新天地に去っていくエバとのエルを見送る姿が、悲しいけれど良かったです。



お芝居の中でハヌカのお祭りというのが出てくるのですが、そこにヴァイオリン弾きがいるところから、「屋根の上のヴァイオリン弾き」を思い起こされました。
ジョセフが「今度の嵐も耐えられる」と言いますが、民族の苦しみと言うものも描かれていた感じ。
「ここも約束の地じゃなかったんだ!」というノエルの言葉もですが。

イスラエルのことを思うと複雑な気持ちにはなりますが、迫害を受けている人たちに千畝がかけた「どうぞご無事で」という言葉を、あの時の彼らには私もかけたい。
目の前に苦しんでいる人がいる、それを救う手があるなら…。
この前見た、NHKスペシャルの緒方貞子さんを思い出しました。