「神戸 はばたきの坂」


「神戸 はばたきの坂」
††キャスト††
丹波耕介:坂元健児
横手昇三:戸井勝海
横手スズ:土居裕子
横手ミチヨ:彩乃かなみ
平良琉一:宮川浩
平良フジ:萬あきら
平良タカ:犬飼このり
北野医師・張:照井裕隆
戸波サキ:剣幸
アンサンブル
岩崎希/上田悠未/牛島豪/梅澤紗耶/岡野一平/片岡彩乃/喜多村夏実/郡司達也/河野よしみ/児玉彩愛/櫻木麻衣/佐々木穂香/島本紗智/清水瞳/清水美優/下村唯/Schmok Asia/杉村由紀子/鈴木務/種市陽介/長野愛梨/沼舘美央/原田智子/増田雄/松本崇彰/森本祥太郎(戸波一雄役)/守屋由貴/山内美佐紀


††演奏††
ピアノ:阿部篤志
ヴァイオリン:長崎真音/南部れいな
ベース:永井健二郎
ドラム:萱谷亮一


††スタッフ††
作:高橋知伽江
演出・振付:謝珠栄
作曲・音楽監督笠松泰洋


昭和5年、世界大恐慌の翌年、ブラジルへの移住希望者が日本中から神戸に集まってきた。
見知らぬ動詞が一つ屋根の下で過ごす一週間。故郷を離れた事情や家族の秘密が明るみに出て、涙と笑いの中で新たな友情が結ばれ、ほのかな恋も芽生え……
そして迎える旅立ちの朝、彼らは新しい人生を求めて船に乗る、日本人としての誇りを胸に!
  ――チラシより


アンサンブルさん達は兵庫県・関西圏から選抜された、兵庫県立芸術文化センター制作のミュージカル。
オープニングは、アンサンブルさんのコーラスとダンスから。
アンサンブルさん達は、風を表現したり、カモメになったり、群衆にもなったり。
そこに、東京から来た俳優さん達が絡んでくるという作りでした。


坂元さんは、移民収容所の職員。
移住者達の水先案内人でもあり、私たち観客の水先案内人でもあります。
誠実な人柄で、ちょっとお茶目な所があって、相変わらずの美声。
真っ直ぐな声故、若く聞こえるんだなあ…と、昨年の沢木さんの講義を思い出しました。
詰め襟の衣装のせいもあってか「愛と青春の宝塚」の速水中尉のようでもありました。
そして、なんて言うのか…。
雲に覆われた空から、降りそそぐ太陽の光?
暗闇を貫く、希望の光。
そんな歌声。
柔らかく囁くように歌うときもあれば、力強く訴えかけるようでもあり。
改めて思ったのは、私は坂元さんの歌声が好きなんだなあ…と。
そういう人には、きっと大満足の、坂元さんの歌がいっぱい聴ける舞台でした。
あと、実は神戸(関西?)の人らしい役で、ふとした時に関西弁(アクセント)が出るのがツボでした。


戸井さん、土居さん、彩乃さんは、青森から来た移住希望者。
戸井さんと土居さんは夫婦ですが、彩乃さんは養女。
宮川さん、萬さん、犬飼さんは、沖縄から来た移住希望者。
宮川さんと犬飼さんが夫婦で、萬さんは宮川さんのお姉さん。
戸井さんと宮川さんのデュエットよかったです。
土居さんは、鈴を転がしたような美声で、母の慈愛あふれる歌でした。
SOMのマリアも、若さを意識せずこのまんまでよかったのになーと、ちょっと思いました。
萬さんは、歌は少なかったような…。
でも、家族が一番大事で、どんな苦難も家族と一緒なら明るく乗り越えて行けるところに胸が熱くなりました。

剣さんは、ブラジルから一時帰国していた移住者。
見た目はすっきりしたマダム。
でも、抱えている哀しみは深くて。
切なかったです。
移民の実態も知っているから、みんなが希望に胸を膨らませているのを辛そうに見ているのも切なかったなあ。

照井さんは、移民収容所の医者と南京町に住む華僑の二役。
医者としては、あまり活躍がないのですが(失礼)、華僑役の方は、出番は少ないものの物語の核にもなり得る感じ。
飄々とした感じもよかったです。


主役が誰、というのではなくて、それぞれが抱える問題が、等分に描かれています。
この後、この人達はどうなったんだろう。
ブラジル移民は、昭和49年まで続いたそうです。

神戸の歴史と、ブラジル移民の歴史と、知らなかったことを、教えてくれる舞台でした。
そしてラストの、ここからはばたいていく!というメッセージに、自分も励まされた舞台でした。