「familia」('14/11/29)

familia
〜4月25日誕生の日〜

††キャスト††
エヴァ 大空祐飛
フェンルナンド・モラエス 岸祐二
アリソン 柳下大
ラモン 坂元健児
アニーバル・モラエス 福井貴一
ミゲル 中山昇
ジルベルト・グスマン 渡辺大
リカルド 照井裕隆
ガスパル/コスタ 青山航士
ジョゼ 吉田朋弘
エンリケ/フランコ 千田真司
ペドロ 海宝直人

演出・振付 謝珠栄
脚本 斎藤栄
音楽 玉麻尚一
ミュージカル台本・作詞 謝珠栄


ポルトガルの海は母の涙
1974年蜃気楼の中を彷徨う人々
人は何を求め、ファドの調べとともに
どこへたどり着くのか…

1973年、ポルトガル

独裁政権から続く圧政により、アフリカでの植民地戦争は凄惨を極め、
人々は自由な思想や言論を奪われつづけていた。
そんな民衆の姿が、親の顔も知らず孤児として生きてきたエヴァの目には
まるで、悲しみを抱えながらも黙って耐える子ども達のように映る。

置き去りにしたままの過去から目を背け生きていくことは、
自分も反発を忘れた民衆と同じだと思い、不安な気持ちを奮い立たせ、
エヴァは自分を捨てた両親を探す為に、首都リスボンへと向かう。

そこで出会ったのは軍人少佐のフェルナンドと、
革命派に身を投じた幼馴染、アリソンだった。
やがてラヂオから聞こえるファドの調べにのせて、
エヴァと二人の人生は大きく交錯する。

そして1974年4月25日“リスボンの春”が訪れる。
ポルトガルの革命と共に、
エヴァは自らの運命に立ち向かうのだった……。
―――以上、プログラムより。

改めて、プログラムにある物語を読むと、そういう話だったっけ?と思ってしまいます。
特に、エヴァリスボンに来た理由あたり。
単に、両親を捜すため…と思っていました。
あと、ここを読んでいると1年間のお話っぽく感じるけど、数年にわたる物語だったような…。
とはいえ、感想を書いている現在、すでにかなり時間が経過しているため、記憶違いかもしれません(^^;


舞台は、ポルトガル
革命、と聞いていたので、もう少し前のお話かと思っていたんですが、1974年?
カーネーション革命」って聞いたことがない気がします。
…私、一応、ポルトガルへ行ったこともあるのに。
アズレージョやファドは覚えているのに、歴史について調べていかなかったとは、痛恨の極み。

アフリカ植民地での戦争…というのは、「シェルブールの雨傘」と重なります。
この時代は、そういう国が多かったんでしょうか。
現代史をやっていないので、この辺りの知識が足りません。

主人公のエヴァは、リスボンへ出てきて、幼馴染みのアリソンと再会します。
新聞記者だったアリソンは、軍人になっていて、そのことにエヴァは違和感を覚えます。
アリソンのなじみのお店、「ファミリア」で、ブラジルからやって来た、ラモンとペドロの兄弟、彼らの仲間達と出会い、働くことになったエヴァ
母が残した手がかりの「歌」を店で歌っていたエヴァですが、ひょんなことから、その歌がラジオで流れることに。
その歌がきっかけで、エヴァの運命が動き出します。

一方、アリソンが軍人になった理由が明かされ、彼の物語が絡んできます。
エリート軍人のフェルナンドと、彼の父親の物語も絡んできて。
勿論、「ファミリア」の仲間達の物語も絡んで。

いくらなんでも、そんな都合のいい話が…というくらいの、不思議な絆のつながりが明かされ、
1974年の4月25日を迎えます。

正直、エヴァにはちょっと共感しにくい。
アリソンやフェルナンドにも。
弟を失ったリカルド(ファミリアの仲間のひとり)には、同情すべき点もありますが、共感とまでは行きにくい。

そんな中で、私が一番共感したというか、感動したのは、フェルナンドの父・モラエスです。
父親として、また、かつて国を率いたリーダーとして、自らの責任を果たし、与えられた役割を演じる。
現実を見極める知性と、物事をやり遂げる覚悟と。
こういうリーダーの下で働けるなら、幸せだと思う。

…というわけで、モラエス一押しとなりましたw


エヴァは、別に嫌いなわけではないんですが、その年になって、今更、親を探そうとか…。
そういう発想が出てくる辺りから、何となく読めるんですが、ちょっと甘ったれといいますか。
もういいんちゃうん? とか思うところが多かったです。

アリソンは、まあ、まだ子どもだしね。
熱くて、それらしくて、いいかも。
でも、もうちょっと歌がお上手だと良かったかな。

フェルナンドは、エリート軍人らしい佇まいと、がっしりした体躯。
歌ももちろんお上手ですし、とっても良かったです。
三人の中だったら一番好きかな。
ものすごい真面目な役のため、岸さんはちょっとしんどいかも(笑)
途中でラモンと出会うシーンがあって、そのときのラモンが抱えきれないほどの荷物を持っていてふらふらしているんです。
坂元さんは、アドリブもいれていて、かなり笑いもとっているシーン。
それを真面目に見送るフェルナンド。
絶対、普段なら、なんらかツッコミを入れたかろうと思いました。
ソワレでは、「…大丈夫だろうか」とせめてもの(真面目な)ツッコミ入っておりましたけどw

そんな、アドリブも満載なラモン。
登場シーンでは、「僕が怪我したのはアキレス腱」と自虐ともとれる台詞が。
マチネでは、ちょっと寒い空気が流れました。
坂元さんも「受けてない」と若干落ち込み気味に見えました。
しかし、ソワレでは、もう少しぶっ飛んだ台詞回しで、そこそこ笑いが。
きっと、回を重ねるごとに面白くなっていくんだろうな。

坂元さんは、杖をついての演技でしたが、かなり動き回っておられて、みていてはらはらしました。
歌声にほれぼれする…というのは勿論でしたが、心配の方が上回ったかも。

ラモンの弟、ペドロは、歌がすっごくよかったです。
ラモンとペドロの二人が歌うところは、ダブルシンバか〜と思いながら聞いていました。
兄ちゃん思いの弟で、二人の絆の強さもよかったかと。

また、ファミリアの仲間達が歌うところは、聞き応えがあってよかったです。
ファミリア自体は、お話の本筋に絡むことはあっても、もしかしたら無くてもお話が成立するかもしれない。
でも、このお話の一番言いたい部分、「familia」とは何か、を大言している場所だと思います。

家族も、仲間も、国も、国を超えた何かも、「familia」。
そんなお話でした。



余談ですが。
カーネーション革命の本番、舞台に咲き乱れるカーネーションの演出には、驚かされました。
…というか、それ、あり?とちょっと笑ってしまう、演出でしたw