「サンセット大通り」('15/8/1ソワレ)

サンセット大通り

シアターBRAVA!にて。


大阪での公演は、7月31日ソワレと8月1日マチソワ、8月2日マチネの4公演。
そのうち、前半が、安蘭けいさん×平方元基さん。
後半2公演は、濱田さんと柿澤さんでした。


ロビーでは、濱田さんのノーマがお出迎え。


コインロッカーのコーナー前だったので、ちょっと手狭な感じです。


††キャスト††

濱田めぐみ ノーマ・デズモンド
柿澤勇人 ジョー・ギリス
鈴木綜馬 マックス・フォン・マイヤーリング
夢咲ねね ベティ・シェーファー
水田航生 アーティ・グリーン
戸井勝海 シェルドレイク
浜畑賢吉 セシル・B・デミル

小原和彦 警官/サミー/マンフレッド
高原紳輔 警官/アダム/販売員/警備員/照明
戸室政勝 警官/借金取り/ミッチ/販売員/カメラマン
那須幸蔵 警官/クリフ/販売員/照明
橋本好弘 記者/マイロン/販売員
ひのあらた 警官/借金取り/フランキー/葬儀屋/販売員
安福毅 記者/ジョン/葬儀屋/ジョーンズ
若泉亮 警官/モリーノ/販売員/ホグアイ/カメラマン
彩橋みゆ 記者/ソフィ/医師
家塚敦子 ジャーナリスト/キャサリン/精神分析
石井亜早実 リサ/マッサージ師/記者
石井咲 アニータ/美容師/記者
木村晶子 記者/サラ/美容師
栗山絵美 メアリー/マッサージ師/記者
福麻むつ美 ジョアンナ/ヘザー/占い師/記者

指揮 塩田明弘


作曲 アンドリュー・ロイド=ウェバー
脚本・作詞 ドン・ブラック クリストファー・ハンプトン
演出 鈴木裕美


感想は、また後日に。




8月22日追記

かなり時間が経ってしまいました…。
もうすぐ、9月だっていいますのに(^^;;

すっかり時期はずれでございますが、こそっと感想をupさせていただきます。



プロローグ。
客電が落ちたところに、遅れて座席に着いたお客さんがお一人。
(あ〜ぎりぎり間に合ったんだなあ、よかったなあ)と思っていたら、それがジョーでした。

舞台上には、複数の警官。
客席は、プールに見立てられ、そのプールから現れてくるジョー。

という設定でした。

その日、大きな屋敷で殺人事件が起きた。
と、語り出すジョー。

どうしてそんなことになったのか、時間が巻き戻されて、物語が始まります。


この作り方で、普通に考えられるのは、死んだジョーが語り手として現れた、ですよね。
もしかしたら、ジョー以外の誰かが死んで、ジョーは狂言回し…という可能性もなくはないですが、まずジョーが死んだ、冒頭の台詞からすれば、殺されたと考えるのが適当でしょう。

そんな先入観を持って、舞台を観ていきました。



若き脚本家のジョーは、借金取りから逃げるために、たまたま入り込んでしまった屋敷でノーマと出会い、彼女が書いた脚本の手直しを手伝うという名目で同居するようになる。
少しずつ、ジョーにのめり込んでいくノーマ。
最初は仕事のつもりだったジョーも、自分にすがりついてくるノーマが鬱陶しくも哀れで、彼女の情人となってしまう。

しかし、ベティと二人で脚本を仕上げていく楽しさに、ジョーの気持ちは揺れる。
もともと、親友アーティの婚約者だったベティ。
いつしかベティはジョーを愛するようになり、ジョーもまたベティに惹かれる。

二人の関係を知ったノーマは嫉妬。
ジョーには秘密で、ベティと連絡を取り、別れさせようとする。
その電話の最中に、戻ってきたジョー。
すがりつくノーマを引き剥がし、受話器をひったくってベティに、別れを告げる。
ジョーを取り戻したと驚喜するノーマに、ジョーは「ここを出ていく」と告げ、立ち去ろうとする。

そして、殺人事件。

ノーマの屋敷に大勢の報道陣が集まってくる。
おびえるノーマに、「マダムの映画をとるカメラと照明です」と嘘をつくマックス。
マックスの言葉で、狂気の世界に足を踏み入れ、満足げな笑顔で階段を下りてくるノーマ。

朗々と歌い上げ、終幕です。

プロローグでの予想は、普通に当たっていました。
ちょっとはずれて、「そうきたかー」でも良かったんだけどねw



ノーマは、サイレント映画の大スターなんですよね。
トーキーになって、彼女は忘れられていった。
そういう設定だと、もう少し、彼女の声が変わっているとよいのかもな、と思います。
絶世の美女なのにしゃべったらピンクの電話のよしこちゃんみたいな高い声、だとか。
もしくは、ちょっとなまっているとかね。

濱田さん、歌ったら圧倒的な存在感だし、何でこの人がハリウッドから忘れられたかがちょっとわからないなーって思ってしまう。

全体的に、濱田さんのノーマはエキセントリックというか、やや病んでいる人っぽい。
若さに必死にしがみついている老女、という感じはなくて、やっぱり若い。
もうちょっと頽廃した感じというか、やつれた感じがあって欲しかったな。
そういう感じは、今回観られなかったけど、Wキャストの安蘭さんの方がでているのかもしれないなーと思った。


ジョーは、若くて自信満々で厚かましくて、騒々しい奴、というイメージだった。
ノーマは結構あっさり惚れたみたいだったけど、何で?って感じ。
ジョーに魅力があったから、ではなくて、淋しい自分のところにたまたま飛び込んできた人間だったから、縋ってしまったんじゃないか、と思う。
ジョーでなくても、きっと良かったんだろうな。
でも、大晦日の夜、ジョーがノーマを受け入れたことで、よりジョーに依存していったのだろうと思う。

柿澤さん、本当に、普通の、軽々しい青年、という感じのジョーでした。
ノーマがあんまり哀れで、同情してしまって。
最後だって、ノーマに切れて出ていこうとしたわけじゃなくて(その部分もあるだろうけど)、あるがままに生きられず夢の中で生きているノーマの目を醒ましてやろうと思ったんじゃないだろうか。
まあ、結局ノーマはいっそう深い夢の世界に逃げてしまうんだけども。

とにかく、普通の男の子。
彼では、ノーマのお相手は、やっぱり無理だったんだよなーって思えるような、男の子でした。


このお話で私が一番もっていかれたのはマックス。
一番最初のソロで、まずやられました。
ずどーんと心に飛び込んでくる歌声。
マックスの気持ちが、わかるんです。
あーだこーだと言葉で説明はできないけど、伝わる。

この人の、ノーマへの思いが深くて。
そして、あとになればなるほど、怖い。

一番狂っていたのは、マックスじゃなかったか。
ノーマの狂乱も、全てはマックスに原因があったのではないかと思う。

私にとっては、マックスありての「サンセット大通り」でした。



ベティは、可愛かったよ。
最初から、絶対ジョーに惚れるだろう、と思っていたけど、やっぱりでした。
ただ、アーティが、ほんまええ奴でね。
彼を裏切るのはちょっと許せなかった。

そんなアーティは、1幕で出番終了?
2幕も出してやってよーって感じ。
ところで、アーティは、「オーシャンズ11」のリビングストン。
あの子もいい子だった…。
(この日はオフステージトークがあり、水田さん登場で、ダンスも踊ってくださいました。
 いやあ、リビングストン、懐かしすぎたー)


オフステージトークのことを書いたので、少しだけ。
登壇者は、水田さん・濱田さん・柿澤さん・鈴木さん。
司会は鈴木さんでしたが、柿澤さんがとにかくしゃべる。
鈴木さんが振ってるのに、そのまま雑談トークみたいになったり。

それでも、ちょこちょこと話題をふる鈴木さん。
素敵でしたw

濱田さんは、いつも通りの天然っぷり。
東京〜大阪公演の間に、すこし時間があったので、久しぶりにカンパニーに会ったら、ノーマが抜けて「ただの濱田めぐみ」になっていたので、みんなにびっくりされた、と仰っていました。

水田さんは、「実は踊れる人」としていじられてましたが、リビングストンを知っている身としては、いや、むしろ何故知らないのだ(特に濱田さんw)でしたw
リビングストンは実家がすぐ近くだとかで、凱旋公演だったそうです。

柿澤さんは、先ほども書いたとおり、とにかく良くしゃべる。
こんなにおしゃべりな人だったんだなーと驚くくらいです。
この人が、かつてメルヒオールだったとは…。
私の脳内で、どうしてもつながらないわー(^^;;




ところで、「サンセット大通り」(原題: Sunset Boulevard)は、劇団四季で上演予定があったと聞きました。
志村幸美さんが、ノーマを演じるはずだったのが、お亡くなりになって、その話自体が立ち消えになったそうで。

志村さんは、私がずっと憧れていた役者さん。
大阪CATS'で、志村さんのグリザベラが観たくて、聴きたくて、何度も通って、結局その願いは叶えられず。
がっかりして、地元に来た「李香蘭」を見に行ったら、志村さんが出演されていて大喜びしたという…。
懐かしい思い出ですw

話がそれましたが、そんな大好きだった志村さんが演じられる筈だった、「サンセット大通り
当時はまだ、三十台後半だったそうですから、濱田さんよりお若いです。
今回、濱田さんでも、ちょっとお若すぎるのでは…と思ったくらいですので、志村さんだったらどうだったでしょう。

でも。

私は、思うのです。
志村さんの歌で、ノーマの気持ちを歌い上げられたら、きっと、もっと心にずどんと響き渡る作品になったのではないか、と。

濱田さんの歌は迫力があって、豪華で、さすがなのです。
でも、老いていく自分を認めたくないノーマの、自負心とか、孤独とか、そういったものを志村さんはまっすぐに届けてくださる歌を歌ってくださったんじゃないかなあ。

そう思うと、志村さんのノーマを観ることが出来なかったことは、本当に残念であり、そんな凄い役者さんをたった一度であっても、舞台で拝見できたことは、最高の幸せであったと思います。