「シンベリン」なんだかわからないけど面白かった!

彩の国シェイクスピア・シリーズ25弾
「シンベリン」

††キャスト††
阿部寛:ポステュマス・リオナータス
大竹しのぶ:イノジェン
窪塚洋介:ヤーキモー
勝村政信:クロートン/ジュピター
浦井健治:ギデリアス
瑳川哲朗:ベラリアス
吉田鋼太郎:シンベリン
鳳蘭:王妃

大石継太:ピザーニオ
丸山智己:カイアス・ルーシアス
川口覚:アーヴィレイガス
井口恭子:ヘレン/亡霊
手塚秀彰フィラーリオ/ブリテン軍の隊長2/ローマの貴族
塾一久:紳士2/亡霊
大川ヒロキ:紳士1/スペイン人/ブリテンの貴族
岡田正:貴族1/フィラモス/ローマ軍の兵士
二反田雅澄:貴族2/ブリテンの隊長2/ローマ軍の兵士
清家栄一:フランス人/ローマの貴族/亡霊
飯田邦博:コーネリアス/ブリテンの貴族/ローマの貴族
塚本幸男:ブリテンの貴族/牢番
井面猛志:ブリテンの貴族/使者/ローマ軍の兵士
篠原正志:ブリテンの貴族/使者/ローマ軍の兵士
松田慎也:ドイツ人/ローマ軍の隊長/亡霊
千葉裕之:楽師/ローマ軍の兵士/ブリテン軍の兵士
北村健太:楽師/ローマ軍の兵士/ブリテン軍の兵士

演出:蜷川幸雄


劇場は、シアタードラマシティ。
後方ブロックの一番前の席です。

席についてまずびっくり。
舞台上に、楽屋がある…。
正確には、楽屋を模したセットがあります。
それぞれの鏡に、出演者の名前が貼ってあって、浴衣とか、楽屋着を着て談笑してますよ!
開演間近になると、勝村さんや吉田さん、佐川さん、阿部さん、大竹さん…とメインの人たちも集まってきて。
でも、やっぱり楽屋で楽しそうに過ごしている雰囲気。
そして、時間が来ると皆さん、舞台前方に一列に並ばれて…。
歌舞伎でよくある「カンッ」という音(拍子木みたいな)でばっと楽屋着を脱ぎ捨ててお芝居の始まりです。

その意図はわかりませんが、それまでのだらだらムードから一気に引き締まって、格好良かったです。
(だらだらムードの所も、見ていて楽しかったし)
面白い演出でした。


本編は、ブリテンの王女とその夫が中心の物語。
夫・ポステュマスは身分が低いため、王女・イノジェンの父王・シンベリンから追放される。
シンベリンは、王妃の連れ子のクロートンとイノジェンを結婚させたがっています。
追放されたポステュマスはローマへ逃れ、そこでイノジェンの貞節ぶりを自慢します。
ローマの紳士・ヤーキモーは、ポステュマスに賭を申し出、イノジェンを誘惑しようとします。
ヤーキモーの策略で、イノジェンが誘惑にのったと信じてしまったポステュマス。
さて、どうなる?

というお話。

時代は、帝政ローマ期らしい。
ブリテンの衣装が、中世風に見えたので、ローマ皇帝っててっきり神聖ローマか?と思ったけど。
台詞の中に、ジュリアス・シーザーブリテンを攻めたとあったので、帝政ローマの初期らしいです。
オクタヴィアヌスが皇帝とかかもしれないなー。
台詞の中に、「フランス」とか「イタリア」とか出てくるのは、ご愛敬。
シェイクスピアが原作だもんね。
でも、この時代に「フランス」も「イタリア」も無いんだけど…とつっこみたくなる自分がいました(笑)

途中、誤解が誤解を生んで、一歩間違えば悲劇になるけど…大丈夫?という展開にドキドキはらはら。
絶対、大団円のはず!と思いながらも、リア王ばりの悲劇だってなりうるってのが怖い。
まあリア王リア王で、そこまで悲劇にならんでも…というくらいの間の悪さなんですけど。
こちらは、あり得ないほど物事が最後にはうまく行って、大団円でした。よかった。

しかし、悲劇になる可能性も秘めている…にも関わらず。
そして、演じている人たちは大真面目に悲しんでいたり、怒っていたりするにも関わらず。
ところどころで、思わず笑ってしまうのが、上手いんだろうなあ。
勿論、笑わすように演じているところ(主に勝村さん)もあるんですが、阿部さんとかが大真面目で嘆いているときについ笑ってしまったり。
笑ってから、いやこれ悲劇になったら笑えないんだけど…笑ってよかった?と思うこともしばしば。
でも、つい笑ってしまうのは、やっぱりお上手なんだと思うんです。

最後に、シンベリン王が「何がどうなったんだか?」と言いますが、本当にそんな感じのお芝居。
それでも丸く収まったからいっか!というお芝居でした。

途中、ローマのシーンでは、何故か、源氏物語「雨夜の品定め」がバックにあったりしました。
それは、女性談義をしているシーンだからだそうです。
なるほどねー。
ローマ風に寝そべって話しているのも、源氏物語の世界と似ているかも。

途中、ジュピターが現れたときは、お笑いか?と思ったけど。
なんでもありな感じで、よしです。



以下、個別に簡単な感想。
阿部さん、格好いいわー。
黒の細身の衣装がめっちゃ似合ってる!
背がずば抜けて高くて、本当に誠実な感じ。
見た目は勿論、いい人そうなところが本当に格好いい。
ヤーキモーの策略にあっさり乗ってしまうのも、いい人故と思えるし。
でも、真っ直ぐなだけに、イノジェンに裏切られたと思ったら、その逆上っぷりもすごい。

大竹さんは、まず、ちっさい。
だから、阿部さんと並ぶと、ものすごく華奢で可愛い。
後半、少年に変装するんですけど、そのときも華奢でちっさいから、本当にいたいけな少年に見える。
少年になったときに、誰からも一目で好かれてしまうという凄さ。
一応、変装しているときは声を低くして少年っぽくしてみたり、ふっと素に戻ったり。
その辺、さすが。

窪塚さんは、とにかくやなヤツだった。
女性を誉めずにいられない、話が回りくどくてやたら美辞麗句がくっつく…とか、ローマ人というより現代のイタリア人っぽかったり。

勝村さんは、面白すぎ。
やなヤツとも言えるんだけど、おばかな面もあって、出てくるだけで笑ってしまう。
剣を鞘に入れようとして、入れられなくて、最後には落っことしてしまったり。
逆に剣を抜こうとして、剣が長すぎて抜けなくて、鞘を地面に置いて抜いてみたり。
べたに壁にぶつかったり。
連れ子とはいえ、王の息子なんで、とっても威張っていたりするんですが、その間抜けっぷりが笑えすぎます。

浦井さんは、爽やか。
瑳川さんは、お腹がちょっと気になった。
吉田さんは、タイトルロールの筈なのに、あまり目立たず
鳳さんは、初めの悪者っぷりが素晴らしかった。

個人的に、ピザーニオの大石さんが良かった。
ピザーニオはポステュマスの従者で、ブリテンを去ってからはイノジェンに仕えるんですが。
とにかく、主人のために一生懸命で、いい人だったー。
…はっ!
この人も、けなげな人だ!
成る程、やはりけなげキャラが好きらしい、私。
途中で、ポステュマスとイノジェン、両方から疑われて、とっても可哀想だった。
でも、ちゃんと誤解が解けてよかったー。


ロビーには、いっぱいお花があったけど、その中には、「テルマエ・ロマエ」の宣伝部さんからのお花も。
ポステュマスの台詞に「私はローマ人だ」ってのがあったんだけど、密かに、笑ってしまったのでした。