「客家」

††キャスト††
文空祥(ブンクウショウ) 水夏希
文天祥(ブンテンショウ) 吉野圭吾
理宗(リソウ)/デイビット 坂元健児
フビライ・カン/伯顔(バヤン) 伊礼彼方
爽(シュアン) 平澤智
賈似道(カジドウ) 今拓哉
旻(ミン) 畠中洋
塑文明(スーブンメイ) 照井裕隆
羅(ルオウ) 渡辺大
安童(アントン) 小林遼介
才秀夫(サイシュウフ) 吉田朋弘
純(チュン) 上口耕平
燭龍(ショクリュウ) 王建軍
モンゴル兵他
千田真司/松岡雅祥/脇田伸悟/榎本成志/下村唯/種市陽介/増田雄/郡司達也
曽徳慈(ソウトクジ) 未沙のえる



「守るべきもの それは人の心」
貿易取引きの為、台湾を訪れたデイビットは「客家」に伝わる史話を聞かされる。
時はモンゴル帝国が席巻する南宋時代末期。
亡国の一途を辿る宋国を立て直さんと救世主・文天祥(ぶんてんしょう)が現れる。
だが、その妹・空(くう)は兄の進む道を憂わしく感じていた。彼らは古より戦を好まず、故郷を捨て静かな山間に暮らしてきた客家人
そんな先祖の訓を守る妹と、国を守る兄の想いは次第にすれ違い始める事に……。
時代と共に動乱の世に巻き込まれてゆく客家の運命は?そしてそんな伝説との不思議な縁を感じたデイビットとは……。

  (チラシより)




客家」自体を知らなかったこともあり、ちょっとびっくりでした。
戦いを避け、南へと下りながら、いつか中原への復帰も望んでいる人たち(であってるかな?)
ちょっと、この人達の立ち位置がわからなかったなあ。
南宋の人々とは、どういう関係なのかとか。


古い王朝の正当な跡継ぎなのかと思えば、南宋に仕えている。
中国の王朝って、滅ぼしては新しい王朝が立つと思っていたんですが、南宋の皇帝と客家の人たちって、繋がっているの?
漢民族、といっても、漢の劉邦と魏の曹操だったら、繋がらないと思うんですけど。


例えはおかしいかもしれませんが、劉邦の正当な子孫が、曹操の子孫に仕える…もしくは、玄宗に仕えるって感じ?
玄宗に仕えるなら、時代も下るしありそうですが、それでも、世のため人のためであって、玄宗のためって思うのかなあ。
自分たちは、正当な王家の末裔!と自負している人たちなのに。


途中までは、世のため人のためだったし、客家の中でもブンテンショウとその仲間たちが、理宗のために働いていたから、納得もできました。
しかし、ラストで、客家(少なくともこの作品の中の一族)の存在理由そのものが理宗を守ることになるのは…あれ?という感じ。
理宗の一族が、遠い昔の客家の人たちの主筋というならわかるんですが、そういうふうにも読めなかったしなあ。


結構、この部分は、作品の芯なので(チラシの「守るべきもの」ですよね?)、納得がいかないと、物語自体、納得がいかないというか。
そんな風に思うのは、私だけでしたらごめんなさい。



ここからは、個別感想。


■デイビット
冒頭の坂元さんの歌声が最高に素敵でした!
真っ直ぐな声で、その声だけで確実に癒される自分がいたw

理宗が、真面目で、皇帝らしい重々しい演技な分、デイビットの軽やかさが良かったです。
出番は、理宗では少な目、デイビットは冒頭とラストだけ、でちょっと淋しいですが。
そして、デイビットでの歌は若々しくて良いのですが、理宗としては、ちょっと軽めに聞こえてしまうのが勿体ないのです。



■ソウトクジ
未沙さんは、宝塚時代に何度か舞台を拝見して、泣かされた役者さん。
当時は男役で、おじさん役が多かったけど。
久しぶりに拝見し、やっぱり好きな役者さんだと再確認。
声に説得力があると思います。
また、どこかの舞台で拝見したいなあ。



■ミン
ブンテンショウよりも、もしかしたら才能があるかもしれないと言われた人。
でも、彼の夢は、政治ではなく教育。
民族なんか関係なく学ぶことができる学校を作りたいという夢。
まず、この理想の高さに感動。
そして、その夢を友情のために捨て、友情に生きたところにも感動。
最後の「学校を作ってくれ」という言葉に泣かされました。



■バヤン
存在感がありました。
顔が怖かったー。
傷ついたモンゴル兵だとばかり思っていたらまさかの…で、本当にびっくりした。
モンゴル兵の通った後には草も生えない、というのが納得できる人でした。



■スー
途中にあるソロが、非常に聞かせ所で、良かったです。
理宗に殉ずるところなど、彼なりの正義が貫かれていて良かったと思います。



■カジドウ
嫌なヤツ全開でした。
ある意味、大成功な役作り?



■ブンテンショウ
主役の一人なのに、なんだか影が薄い…。
真っ当な二枚目過ぎたか?
もうちょっと見せ場が欲しかったなあ。



■サイ
物語の語り部
目立たないけど、しっかりとそこにいるイメージ。
終わってから吉田さんだったと気がつきました(^^;



その他、感動ポイントは「落地生根」が出てきたこと。
もともとはこちら(客家)からの発想なのかもしれないけど、「はばたきの坂」を思い出して、胸が詰まりました。


あと、この日は、楽日だったため、皆さん(アンサンブルさんも含めて)のご挨拶がありました。
その中で、感動したのは、照井さんのお言葉。
冒頭、デイビットのメモが風にさらわれるんですが、それは照井さんの係だったそうです。
そのことに触れたあと、「スーは風になって理宗さまの傍にいるのかもしれない」と。
なんだかメレブを思い出しました。


それから、坂元さんのご挨拶で、理宗の足元大公開w
理宗は「脚が長くて、イケメン!」(デイビット談)なんですが、ものすごい高下駄でしたw
吉田さんのキメ台詞「ミュージカルは一番いい薬です」(←ちょっと間違ってるかも)をぱくったり、楽しそうでした。


最後に、謝さんを全員で呼んで舞台に乗せようとされていましたが、スタッフさんに「本当にいません」と言われ、「逃げたな」。
そんなやり取りから、和気藹々とした現場の雰囲気が伝わってきて、楽しいカーテンコールでした。


そうそう、カーテンコールでは、タンポポの綿毛にキャストさん達の顔をつけて飛んでいく、という映像もあって、面白い演出でしたっけ。
キャストさん達も、舞台に座って、映像を見て盛り上がっていらっしゃったのも、良かったです。