「水底の仮面」

タニス・リー著。
「ヴェヌスの秘録」シリーズの第1巻。

ジャンルでいえば、ファンタジーになると思います。
舞台は、ヴェネツィアの異次元ワールド。

水の上に浮かぶ街、カーニバルのどこか異次元に雰囲気。
現在のヴェネツィアを見て、過去に、魔法を使う不思議な人々がいたかもしれない…などと空想するとできあがる世界。
そんな頽廃的で、けだるい街が舞台です。

都市国家ヴェネツィアが滅んでいく、少し前だったら、あり得るかもしれないような世界かな。
どうしても、私の中でのヴェネツィアは、とっても健全で、合理的で、力強い都市国家なので、このお話の舞台の街とはかけ離れて感じてしまいます。
私が好きなヴェネツィアは、レパントの海戦の後ちょっとくらいまでかな。
この辺は、塩野七生さんの「海の都の物語」で培われた意識ですがw

ですから、街の設定など、とっても似ているけど、ヴェネツィアとは全然違う歴史で発展して、もしかしたらヴェネツィアもこんな風になり得たかもしれない世界、「ヴェヌス」として物語を読みました。
なかなか淫靡な世界で、タニス・リーらしいなあ…と思います。

苦手な人もいるだろうな、という作品。
耽美な世界がお好きな方で、多少、グロテスクなものも大丈夫、という方なら、楽しんでいただけるかもしれません。