「ロックオペラ モーツァルト」

「L'OPERA ROCK MOZART」

演出:フィリップ・マッキンリー
脚本:ドーヴ・アチア/フランソワ・シュケ

上演台本:吉川徹
音楽監督前嶋康明
振付:TETSUHARU



††キャスト††
山本耕史 モーツァルト/サリエリ
中川晃教 モーツァルト/サリエリ

秋元才加 コンスタンツェ
鶴見辰吾 運命/酒場の主人
キムラ緑子 セシリア(コンスタンツェの母)
高橋ジョージ レオポルトモーツァルトの父)

菊地美香 ナンネール(モーツァルトの姉)
AKANE LIV アロイジア(コンスタンツェの姉)
酒井敏也 フリードリン(コンスタンツェの父)/ヨーゼフ2世
コング桑田 コロレド大司教/後見人(ウェーバー家の法定代理人
湯澤幸一郎 ローゼンブルク伯爵(宮廷オペラ劇場支配人)
北村岳子 アンナ・マリア(モーツァルトの母)
北原瑠美 歌姫(カヴァリエリ)
上山竜司 ダ・ポンテ(詩人で台本作家)
栗山絵美 ヨーゼファ(コンスタンツェの妹)
平田小百合 ゾフィー(コンスタンツェの妹)
橋龍太 苦悩
大野幸人 苦悩

青山航士/田川景一/千田真司/永野拓也/橋田康/東山竜彦/松之木天辺/明日香/香月彩里/清家とも子/塚越志保/丹羽麻由美/平井琴望/松島蘭/松林篤美



マチネ インディゴバージョン
 山本耕史モーツァルト
 中川晃教サリエリ

ソワレ ルージュバージョン
 中川晃教モーツァルト
 山本耕史サリエリ



山本耕史さんの舞台で、興味はありましたがチケットは持っていませんでした。
東京公演の評判を聞いて、「行ってみたいなあ…」と思い、ぴあで調べてみるとS席とB席がまだ残っていました。
どうせなら、役替わりも見てみたかったのですが、さすがにS席×2は厳しいので、B席で観てきました。
大阪公演は、2月22日〜24日の5公演のみ。
しかし、23日と24日は、それぞれマチネとソワレで役替わり公演でしたので、マチネソワレ共にチケットが残っていた23日に行くことにしたのです。

見終わっての感想は………行って良かったー!!
基本的に山本さんが好きなので、そちら中心の観劇にはなってしまったけれども、とってもいい舞台でした。
回り舞台も格好良かったし、照明も綺麗でしたし、ダンサーさんも素晴らしかったし、音楽も良かった!

お話は、映画「アマデウス」に近いかな?
いや、あそこまでエキセントリックなモーツァルトではないですが…。
フィガロの結婚のバレエシーンで音楽無しのリハーサルとか、レクイエムの依頼に来るサリエリとか。
サリエリが出てくる時点で、「アマデウス」寄りと言えるか…。


感想は、非常に書きにくいです(笑)。
だって、どうしても比較になってしまいそうだから。

アマデウス」との比較。
モーツァルト!」(ミュージカル)との比較。

山本さんのモーツァルトと中川さんのモーツァルトの比較。
山本さんのサリエリと中川さんのサリエリとの比較。

純粋に感想を書きたいと思っていますが、比較してしまいそう(^^;


<マチネ インディゴバージョン>

モーツァルト
冒頭、紗幕の向こうにいるモーツァルトは、冷静で理知的に感じました。
その後、登場して女の子とちゃらちゃらしているところは、すっとした美青年。
そして、動きが優雅!
何度か手を大きく開く動きがあったのですが、それがとても大きくて素敵でした。
また、歌いながらステップを踏むところ、音楽とぴったり合っていて、左右のダンサーさんともぴったり合っていて、とても格好良かったです。
ターンも綺麗でしたし、軽く動いていらっしゃるだけのようで、しっかり踊っていらっしゃるように見えるのが凄いと思いました。
コンスタンツェに結婚を申し込むときに跪くところも、綺麗だったなあ。
とにかく、本当に、動きが綺麗で、優雅で、素敵でした。

歌については、高音がしんどそうでした。
パンフレットにも、モーツァルトの音域は高くて大変とありました。
結構力押しな感じもあり、そこは残念でした。
でも、歌からモーツァルトの心はちゃんと伝わってきました。
「タトゥー」とかの楽しい歌は勿論ですが、1幕ラストの曲「薔薇の香りに包まれて」かな?の絶唱も素晴らしかったです。

自分の才能に自信を持っていて、理想が高く、野心家。
死に怯えていながらも、すべてを見通すような理性は持っているようで。
天上に旅立つときは、何かを脱ぎ捨てたような、清らかさを感じました。
父母と抱き合うところは、モーツァルト自身の彼らへの詫びと愛とを感じて、うるっと来てしまいました。

一転、フィナーレは楽しく。
…一転じゃないですね、その前の天上のシーンも清らかで明るかったから。
モーツァルト!」でも「アマデウス」でも、ラストは暗い感じですが、現実から解放された天才の才能が飛翔していくような感じでしょうか?
ラストは解放、幸福な感じでした。


サリエリ
冒頭はサリエリの台詞から。
モーツァルトの才能に対して、怒りをまっすぐに表現していました。
1幕では、まだ二人が出会っていないため、ストーリーテラー的に登場するだけなんですが。
基本的に、まっすぐに感情を表す感じ。

2幕では、サリエリの歌が2曲あったんですが、この歌の時に、ダンサーさん(苦悩)が上下で踊ります。
その時のサリエリは、特にステップとかを踏んでいなかったのですが…。
これは、「サリエリだから」か。それとも、「中川さんだから」か。

そして、最後の曲で、モーツァルトサリエリのデュエット。
サリエリが高音パートでしたが、これも、サリエリパートなのか、それとも中川さんパートなのか。
ソワレで確認しようと思ったところでした。


■カテコ
ソワレがあるからか、短めに。
山本さんは「12時からのモーツァルト」と仰っていました。
東京公演では、マチソワで役替わりはなかったそうで、12時からの公演もあまりなかったようです。
ですから、「12時からのモーツァルト」発言は、「12時からやるのは大変だった」という意味かな?
ソワレは入れ替わるので、自分たちも大変だけれども、お父さんお母さんも大変だろう…という話でした。



<ソワレ ルージュバージョン>

モーツァルト
すごい、全く違う!
冒頭から、全然違うモーツァルトでした。
一言で言えば、真っ直ぐ天然素直な子ども。
ちょっと「モーツァルト!」のウォルフに近いかな?と思いました。
基本、めっちゃ可愛いです。
いろんなことをわかっていない子どもで、自分の気持ちに素直で、誰に対しても真っ直ぐ。

そして、歌うと、おおー、高音がすんなりと出て気持ちいい!
1幕ラストの歌は、「悲しい!」という気持ちが真っ直ぐ出ていて、切なくなりました。
山本さんの歌とは、伝わる気持ちが違う。
山本さんの方は、「挫折」とか、「絶望」とか、そういう屈折したものも感じられた気がします。

動きの方は、歌に全力を尽くしているのか、ダンスふうの動きは見られませんでした。
元気いっぱいに飛び跳ねている感じでした。

ラストも天上で伸びやかに生きている感じ。
自由闊達、天衣無縫なモーツァルトでした。


サリエリ
はい、こちらも、全然違いました。
一言で言います。
めっちゃ格好いいーーー!!!

何もかもが格好良いです。
抑制された動き、感情。
ふっと見せる本音の表情。

いやいやいや、モーツァルトも素敵でしたが、サリエリは、もうあり得ない格好良さ。
サリエリが出てきたら、そこだけオペラグラスでガン見してしました。
だって、格好いいんだもん。

立ち姿も綺麗ですが、首まで詰まったサリエリの衣装よりは、首元が広がっていたモーツァルトの衣装の方がセクシーで素敵でした。
でも、黒でピシッと決めてる背中のラインの美しさは、サリエリ

後宮からの逃走』のリハーサルを見に来たとき。
モーツァルトから楽譜を渡され、ぱらぱらとめくりながら音楽を聴いているサリエリ
この時の表情の変化が素晴らしかったです。
音楽を聴いたからか、楽譜を見たからか。
その素晴らしさに驚き、うっとりとし、嫉妬に駆られていく。
でも、その気持ちをストレートには絶対に表さない。
そこが、最高に格好良いです。

フィガロの結婚』のリハーサルでも、モーツァルトの失脚を予言しながら「だが、音楽はいい」
この時の視線の飛ばし方が、とっても素敵でした。

そして、ソロで苦悩と絡むところは、山本さんのサリエリは、苦悩とステップが揃っていたりして、自然な中で踊っている感じ。
その動きはとても美しく、そして、歌は辛かったです。
あ、辛いというのは、聞きづらいという意味ではないですよ、勿論。
サリエリの苦悩が辛かったという意味です。

ラストの二人のデュエットは、中川さんが高音パートでマチネと同じように思えたんですが、実際どうだったんでしょうか。
こちらは、CDが届くのが楽しみです。

あと、モーツァルトが天上に旅立ってからのサリエリ
マチネではモーツァルトばかり見ていて気がつかなかったのですが、レクイエムの楽譜を持っていくのですね。
そして、楽譜を読んで、その音楽の素晴らしさにうたれ、愛おしそうに、苦しそうに、楽譜を抱きしめる。

サリエリだけが真にモーツァルトの才能を理解していたという「アマデウス」の解釈に近いような幕切れでした。

一番モーツァルトを愛したのはサリエリ
一番モーツァルトを憎んだのもサリエリ

そんなサリエリで、とてもとても愛おしかったです。


■カテコ
マチネより、長いカテコでした。
ここでも山本さんは「12時のモーツァルト」と仰っていました。
1日で二役というのは、大変、お互いその大変さを知っているから…と中川さん。
高橋さんは「でも二人のモーツァルトは全然違うよ」
「あっきーは全力でぶつかってくる。山本くんは寸止めだけど。今日も帰ったら湿布だよ」
また、湯澤さんに、サリエリの物真似は、中川バージョンと山本バージョンで違うのかというフリ。
「あっきーのやってよ」と言われて、誇示する湯澤さん。
そこに、コングさんから、「わしら見てないんじゃ!」と大阪弁でツッコミが入り。
役者の皆さんは、見ていないから、ということで、開き直った?湯澤さん、回り舞台の上で、「ここでやります」
ただ、中川さんバージョンは、「明日見に来て下さい」とのことで、ここでは山本さんバージョン。
最初、ちょっと噛んでいらっしゃいましたが、ばっちりやってくださいました。
本編でも思ったけど、本当に似ている…。
マチネの時は、中川さんがちょこっと笑っていらっしゃったけど、物真似とは気づかず、さらりと見逃してしまってました。
残念ー。
翌日は、マチネがルージュで、ソワレがインディゴ、このままです、と発言があって、「このまま(衣装のまま)帰るの?」とツッコミがあったり楽しかったです。


しかし、ルージュを見た後は、猛烈にインディゴが見たくなりました。
山本さんのサリエリは、本当に格好良かったですし、私はサリエリ風の山本さんの方が好きなんですが。
でも、あのシーンのモーツァルト、どうだっけ?とか、もう一度見たくなってしまったんです。
きっと、インディゴを見たら、もう一度ルージュが見たくなって、止まらなくなるんだろうなあ。

どっちが好き?と聞かれたら、「ルージュ」と答えますが、でも、「インディゴ」も良かったです。
ライブCDの申込みは、迷いましたが2枚セットにしました。
でも、この舞台は、CDでは良さは半減かな。
それくらいに、生で見てこそ!って思える舞台で、本当に素晴らしかったです。
ああ、本当に、行って良かった!




その他の感想は、以下、簡潔に。

コンスタンツェ、悪女ではなく、モーツァルトを支える妻という設定でしたが。
秋元さん、ちょっと悪女顔(というかきつめのお顔)なので、献身的な妻とはあまり思えなかったです。
ちょっと変わった子?という感じでしたが。
「きらきら星変奏曲」の歌は可愛かったです。
アロイジアとのデュエットは、声質が似ている感じで、聞きやすかったかな。
アロイジアもきつめのお顔なので、姉妹設定は合ってるなーと思いました。

アンナ・マリア、北村さん。
ダウンタウン・フォーリーズ以外で北村さんの舞台を拝見したの初めてかも!
弱々しいお母さんではなく、結構強く、だからこそ、死の場面は可哀想でした。

オポルト、高橋さん。
厳しい父親という感じでしたが、もう少し父性を感じられるとよかったな。

ナンネール、菊地さん。
最初、菊地さんと気づかず、可愛い声だなーと思っていました。
コゼットと思うと成る程。
結婚式の歌とか、可愛くて良かったです。
モーツァルト!」のナンネールと比べると、弟への愛は普通。
最後まで可愛かったです。

ヨーゼフ2世、酒井さん。
可愛かったです。「近い」の間の取り方、面白かったです。

後見人、コングさん。
大司教は俗物らしさもあって良かったですが、後見人の大阪弁は、大阪仕様?
ちょっとコテコテ過ぎて、違和感があったかも。

運命、鶴見さん。
印象的な登場の仕方で、歌もあったんですが、いまいち、その意図が分かりきらなかった私。
見方が浅くてすみません…。

苦悩、ダンサーさんお二人。
素晴らしかった!
一流ダンサーさんですよね?
半端ない能力で、見とれてしまうほど。
サリエリの歌に合わせて踊るところなど、サリエリも舞台も見たいし、でも苦悩のダンスも見たい…と目が一つでは足りませんでした。

他、冒頭のコーラス(賛美歌?)も圧倒的ですばらしかったし、群舞の質も高くて、見応えあり。
何より、歌姫カヴァリエリが素晴らしくて、北原さんが入るコーラスは、最高でした。
レクイエムとか、すごく良かったです。

モーツァルトの音楽がふんだんに使われているのは、とても良かったです。
こういうところも、「アマデウス」ぽいかもしれませんね。

でも、「アマデウス」で、死の床にあったモーツァルトが空で音符を言っていくのを、サリエリが書き留めるというシーン、これもあって欲しかったなーとちょっと思いました。
モーツァルトは下書き無しで、既に完成した音楽が頭の中に存在しているというのをサリエリが目の当たりにするというこのシーン。
サリエリだからわかるモーツァルトの凄さ、というのが良く描かれていたと思ったのでした。
それを表現したのが、楽譜を抱きしめる、ラストシーンかとは思うのですが。


書けば書くほど、感想も出てきそうですが、とりあえずこの辺で。
最後に。

本当に、見に行って良かったです。
この二人での再演、あれば、絶対行きます。
「再演があるかどうかは、大阪次第」というのはリップサービスだと思いますが、反響次第であるかも?という含みを感じさせる発言もありましたし。
今度は、1回前方席でも観てみたいです。
でも、全体を見渡せる今回のような3階席でも、何回も観てみたいと思える、本当に素晴らしい舞台でした。