「アイーダ」見納め(とりあえず)

アイーダ
−愛に生きた王女−

††キャスト††
アイーダ 朴慶弥
アムネリス 光川愛
ラダメス 福井晶一
メレブ 有賀光一
ゾーザー 飯野おさみ
アモナスロ 高林幸兵
ファラオ 石原義文
ネヘブカ 桜野あら

男性アンサンブル
脇坂真人/黒川輝/朱涛/田井啓/水原俊/品川芳晃/中村巌/ハンドコアクアリオ

女性アンサンブル
加藤久美子/須田綾乃/恒川愛/井上佳奈/小島光葉/柴田厚子/駅田郁美



2007年10月8日以来の福井さんラダメスです。(私にとって)
初見ラダメスが福井さんだったことを思えば…長かったなあ。

一方、アイーダの朴さんは、初見。
いろいろと見所のある観劇でした。

ただ、この日は音響の調子が悪かった。
初めのうち、気持ちよく聴いていた歌が、だんだん苦痛になってくる。
歌い上げるところになると、音割れがひどくて、耳障りに。

初めは「儚い喜び」のラダメスだったんです。
「まーったく別世界のー」で微妙に音が割れた。
そのときは、てっきり福井さんの声が大きすぎて、音響さんのマイクレベルを超えてしまったかーと思っていたんです。

しかし、その後の「ローブのダンス」でもダメ。
…ここでは、朴さんの声を引き立たせるためにマイクレベルを上げすぎた?とかも思ったんです。

しかししかし。
「あり得ーない〜」では、4人とも声が割れるし。
「迷いつつ」も割れる。
「神の愛するヌビア」に至っては、ラストのコーラス、ハーモニーなんて存在しません。
完全な不協和音。
その辺り、もはや、歌を聴かず。
いや、聴いていますけど、耳で聞かず、心で聞いていた。

2幕に入り、「どうしたらいい」のはじめの方で、調整したか?と思ったのも束の間。
結局、音割れは最後まで。
これって、2階だけだったのかもしれません。
だから、スタッフさんも気がつかなかったのかも。
(音響ブースは1階後列ですから)
しかし…ね?
客席係のお姉さんとかもいるわけでしょ?
そこは、ちゃんと伝えて欲しい。
お客のマナー違反だけ見るのがお仕事じゃないでしょー?
と、正直、かなり不満はあります。
役者さん達の演技は、熱くてよかっただけに。

まあ、アイーダでは、ある程度、諦めスイッチが私には入るので、そこで腹を立てて全体を楽しめないのは勿体ない!と割り切って、楽しめるところを楽しませていただきましたけれども。
でも、正直に申し上げて、あれは、酷すぎるし、返金して貰ってもいいくらいだと思います。
少なくとも、お詫びの言葉とか、あるべきじゃないのか?
翌日曜日公演では、理由はわからないけれども「一部お聞き苦しい点があったことをお詫び申し上げます」と終演後アナウンスがあったらしいし。
なんだかなー。
そういうところを含めて、とっても残念でした。


ここからは、個別感想。

■朴アイーダ
感情のままに歌い上げる…という感じではなく、感情のこもった言葉を歌う感じです。
見た目はちょっと丸め?
二の腕の辺りが、江畑さんのアイーダを彷彿させました。

「あたしの仲間を離しなさい!」は威厳があって、王女らしさを感じました。
メレブの手を振り払うところは、すっと手を引くバージョン。
「ローブ」のあと、男性陣の肩に乗るところは、スムーズではなく、まだ乗り慣れていないのね!って感じでした。
「神の愛するヌビア」は…音響のせいもあるかもしれませんが、女神への変貌が感じられず。

全体に、あまり感情移入ができなかったです。
これは、ラダメスが熱すぎて、そちらに気持ちが入ったせいか?


■福井ラダメス
「勝利ほほえむ」から、低音が深く響いて格好良かったです。
改めて、よい声ですよね。
若々しさがあって、といってもわざとらしくなく、未知の世界に憧れる青年でした。
そして、全般に感じたのは、品があるなあ…ということ。
阿久津さんだと兵士の一員であり、その中でもカリスマ的なリーダーである将軍というどこか泥臭い部分が感じられるのですが、福井さんは兵士と同じようでありながらもどこかで一線を画している感じ。
あくまでも、個人的な感想ですが…。
どこか、一本筋が通っている感じです。

「勝利ほほえむ」の「危険おかして」二回目は、音を上げるバージョン。
でも、「儚い喜び」の「何故あの女に惹かれるのだ」は、上げないバージョン。
「勝利目指して」の方はちょっと苦しげでした。
そして、「儚い喜び」は、先に書いたようにその続きの「全く別世界の」で音割れの予兆があったのでした。

あ、そうそう、久しぶりに、全力で杯を投げつけるラダメス、拝見しました。
以前のように、「からんからんからんからん…」とどこまでも転がっていく、というのではなく、「がしゃん!!」と一回でぶっ壊れるバージョン。
力強すぎ!
「がしゃん!!」というより「ぐわっしゃぁ!」とでも表記した方が適切では?というくらいです。

アムネの寝室では、阿久津さんラダメスの「僕たちはもう9年も婚約しているんだよ?」(ぽんぽん)とは違うたらしっぷり。
もちろん、そこも格好良かったのですが、その前の「あちらでお待ち下さい」が格好良すぎて!
その声で、その表情で言われたら、アムネでなくともうっとりしますよね。
それに続いて「僕たちはもう…」と続くので、だめ押しされている感じです。
合わせ技一本!

「迷いつつ」での「わからないのか」は、「いや、わかっているだろう?」でも「そうかー、わかってもらえなかったかー」でもない感じ。
じゃあ、どんな感じ?と言われると、上手く言えないのですが…。
ぽそりと独り言を言った感じ。
その後は、まっすぐアイーダを見つめて…、真摯に、誠実に思いを伝える感じで。
勿論、お尻なで回しもありますし、セクシーでもあるんですが。
(とはいえ、それは子どもに見せたらあかん!レベルのエロさは、最近阿久津さんでも見ない)
跪くのも縋り付くのも、情熱がほとばしっている感じの阿久津さんに比べて、誠実さがあふれいて素敵でした。
(勿論、阿久津さんも素敵。ただ、素敵の角度がちょっと違うだけ)

「ヌビアの王を捕らえました」での喜びはストレートで、振り向くまで、アイーダの気持ちに気がついていなくて。
振り向いたときに、やっと気がついて。
一歩、アイーダに近寄ろうとしたとき、アイーダが後ずさる。
この後ずさりは、アイーダのラダメスへの心の距離を表していてよかったな。
一方のラダメスは、アイーダに責められ、固い表情のまま去っていく。
これも、二人の心の溝を表しているようでよかった。
阿久津さんは、ここで、表情を改め、頷いて走っていくのですが。
うなだれるように去っていく福井さんラダメスは、この時点で、まだ、エジプトとアイーダと、どちらも大切に思っていて、葛藤しているように感じました。

そこが「星のさだめ」にうまくつながっていく感じです。
「君のために家を建てるよ」「一緒に行こう」
夢物語のように、実現不可能な事を言っているようには感じられませんでした。
この時、ラダメスは、本気でアイーダと生きることを選んでいるように感じられました。
言い換えれば、エジプトを捨てることも。
どんな人生も、愛する人がいなければ意味がない。
そして、愛する人が望んだことが別れならば、自分にとってどれほど辛くても受け入れよう。
「この愛に出会って、僕は変わった」という言葉が、しっくりくるラダメスでした。
上手く言えませんが…というより、自分でもよくわからないのよ、なのですが。
葛藤なく生きてきたラダメスが、アイーダと出会ったことで自分の生き方を問い直し、人生の価値を見いだした。
そんな感じ?
…まあ、それは、基本ラダメスなら誰でもそうでしょうけど。
ただ、今回は、ラダメス目線で物語を見る部分が多く、それは、福井さんの熱演故だったということです。

ついでに。
「君はいつでも大切な人だったよ」も嘘がなくて、よかったです。
ああ、本当にアムネのことを大事には思っていたんだなあと思えて。


■光川アムネリス
実は、苦手なアムネリスでした。
久しぶりなので、もう大丈夫だろう!と思ったんですが、「愛の物語」でやっぱりダメでした。
博物館のシーンは、全然大丈夫だったんですが、「時は古代エジプトの物語」以降が。
何が苦手なんだろう?と思ったんですが、歌い方のようです。
ここのアムネは、女王だったり神だったりするはずなのに、ちょっとはすっぱな感じがする歌い方。
語尾を上げ気味で切ったりするのが、そういう風に感じるようでした。

しかし、スパの場面で、ちょっと様相が変わりました。
以前の光川さんのアムネのイメージは、大人の女性だったんですが、今回はちょっと年齢を下げてるように見える?
不思議なもので、年齢設定を下げ気味にすると、はすっぱというよりおきゃんに感じます。
アイーダに「怖くないの?」と言うところも、ぴりぴりした緊迫感が少なく、侍女の皆さんもそこまで緊張していない感じ。
歌い方は、OPと変わらないのに、役作りが変わるとそれほど気にならなくなりました。

ただ、お洒落があまりに楽しそうなので、「隠し続けるの本当の私」がやや説得力不足。
大和さんはここで落涙することが多かったし、共感もできて、うるっとくることが多かったのですが、そこはちょっと弱めでした。
アイーダ下がって」は可愛かった。
でも、「ふかふかの羽毛」で鳥のようにぱたぱたと手を羽ばたかせるのは…どう?(^^;

審判のシーンは、「お願いがあります」から威厳がある感じでした。
父王との心の交流は、薄目に感じられました。

でも、総合してみると、以前のような苦手なアムネではなくなったのでよかったです。
次は、前方席で細かい演技にも注目して拝見したいな。


■有賀メレブ
…うむ。「有賀」メレブという必要もないくらいに、私にとっては唯一の「メレブ」です。
「生まれ故郷はあなたと同じ」という歌い出しから、メレブのこれまでの辛さが伝わってきてよかった。
そして、この日は、よく声が出ていて、とっても心地よく聞かせていただけました。
「あなたは王女、どこにいても」はやや控え目。
さすがに、あんなに大きく動いて、歌ってだと、人目に付くかもと思ったのでしょうか?

晩餐会での「知る必要があるのです」は、笑いを取る感じではなく。
ここ、アイーダとのじゃれ合いで好きだったんですが、もうやらないのかなあ。

「ローブのダンス」は上から見ていると、なかなかダンスに頑張っていらっしゃるのが見えてよいです。
ジャンプは海老ぞり。

「神の愛するヌビア」は音割れが最大に酷かったので、メレブ中心に気持ちを追いかける展開です。
ここで、アイーダと目を合わせて頷くメレブが好きです。
神の国よ、信じ続ける」のアカペラからの睨み付けも大好き。
歌は不協和音ですが、その分、皆がぶつけてくる思いが伝わってきたかもしれません。

「私は知っている」のリプライズも、切々とした思いが伝わってくるところ。
初めの方と合わせて、この歌のメレブがとてもとても切なくてよいです。

あとは、やっぱり最後のシーン。
「帰りたかった」以降が、健気でよいです。

しかし、個人的に今回一番気になったのは。
髪型が変わっていたことでしたw
前髪が短くなって、眉上あたりに。
また、全体にウエーブがかかっている感じ。
色は真っ黒ですが、ちょっと黒過ぎません?って感じで。
エンジェルとかギルバートとかの依頼が入って、パーマをかけ茶色に染めたのが、また、メレブで…なんてことがあったのかしら?などと考えてみたり。
ちょっと邪念が入った観劇でした。

あと、カテコでいつも2階に手を振っていらっしゃると思っていたのですが、この日は更に上、バルコニーに手を大きく振っていらっしゃいました。
それは、とってもいいんですけど、お願いですから、1階席や2階席にもちらっと手を振ってくださいよー。


■その他
前回もそうでしたが、晩餐会にアモナスロ王がいません。
なんで?
やっぱりここは、シンメトリーにして欲しいです。

今回の東京公演では初めて2階席でした。
やっぱりライトが綺麗です。
ホリゾントは1階席の方がよく見えてよかったけど。
そして、東京公演はこれが見納め。
次は名古屋です。
キャストも演出も、どうなるか気になりますが、楽しみ。
東京公演は一回もイベントに行けなかったけど、名古屋では行けるといいなあ。