「ミス・サイゴン」

††キャスト††
エンジニア 市村正親
キム 笹本玲奈
クリス 原田優一
ジョン 上原理生
エレン 木村花代
トゥイ 泉見洋平
ジジ 池谷祐子
タム 荒川槙

アンサンブル
石川剛/植木達也/上野哲也/大木智貴/大竹尚/大津裕哉/加藤貴彦/川島大典/木内健人/後藤晋彦/佐久間雄生/丹宗立峰/土器屋利行/土倉有貴/中田洋介/西川大貴/松村光/萬谷法英/三井太一
青山郁代/磯貝レイナ/岡井結花/可知寛子/吉川恭子/木南清香/長谷川ゆうり/福田えり/藤咲みどり/吉田玲菜

指揮 若林裕治



ミス・サイゴン」新演出版です。
ですが、私は旧演出版を2回しか見たことが無く、しかもそのうち1回は、初演だったため、よくわかっていません。
2回目に見たとき、ヘリコプターがなかなか出てこなくて「あれ?」となったくらいに、わかっていません。
初演の印象は、ストーリーとキャデラックに乗ったエンジニア…くらいしか(^^;
2回目といってもほぼ初見並でしたので、どこが新しくなったのだか?
ヘリコプターが変わったことと、エレンのソロが増えたということ。
事前にその二つだけ聞いていましたが、他は、ほぼ白紙です。
実際、はっきり変わったと思ったのは、キムの部屋は2階じゃなく舞台中央じゃなかったっけ?というところくらい。
結婚式もキムの家だったと思うけど、エンジニアのお店でやっていました。
でも、本当に前はそうだった?と言われると自信はありません(^^;

でも、きっといろいろ変わったんじゃないか?
これまで、どこかで受け入れられなかった物語が、今回はすとんと入ってきました。
演出補のダレン・ヤップさんの「西洋、白人男性の犠牲になったかよわきアジア系女性というステレオタイプには決して見せたくない」という言葉で納得できたかもしれません。
私がこれまで感じてきた、どこかで受け入れられなかった部分って、まさしく「西洋からみたステレオタイプのアジア系女性」だったから。
もちろん、これまでだって、そんなステレオタイプじゃなかった、と言われるかも知れませんが…。
今まで見た後に感じていて後味の悪さを、今回は感じませんでした。
…単に、3度目で慣れたからかもしれないですし、キャストが違うからかもしれませんが。


■エンジニア
声が、出ていなくて、初めのうちは凄く心配しました。
特にはじめの方は怒鳴ったりするところが多いので、大丈夫かなあ?という感じだったんですが。
軽妙なところでは、軽やかで楽しそうで、ときどきザザ(ラ・カージュ)が混ざる感じで可愛かったです。
うまく周囲に合わせながら、実は腹の中で恨みとかも抱えているんだなあとかいま見えるところが上手いなあと思います。
最後、呆然としつつ、悔しそうな表情に、初めて剥き出しの本心が見えていたような気もしました。
初めのほうで、ちょっとお腹がぽっこりしていたんですが、詰め物でしょうか?


■キム
アメリカ兵に囲まれておどおどしていたところは、田舎娘なんですが。
両親を目の前で殺されて!とクリスにぶちまけるところが良かった。
圧倒されるような迫力がありました。
「僕が守る」と言われて、全幅の信頼を寄せるようになって、その信頼をどこまでも持ち続ける。
歌は時々、金属質な声にも思えましたが、嫌な感じはなくて、すごく気持ちが入っていて良かったです。
なんて言うのかなあ…。
キムの気持ちに一貫したものがあって、嘘が無くて、一人の女性としてのキムがそこに生きていた感じです。


■クリス
自分の生きる意味が見いだせなくて、ベトナムの不幸な少女を救うことにその意味を見いだして、救われた。
でも、その少女を結局救えなくて、もっと深い傷を負った。
とても弱い人間で、だからこそ共感できる人でもありました。
キムと一緒にいれば、ベトナムを思い出して、苦しむだけ…というエレンの言葉が納得できるクリス。
ラストシーンのあと、立ち直れるんだろうか…あの人。


■エレン
目がぱっちりとしていて、欧米人風のメイクがよく似合ってました。
見た目は、かわいいバービー人形のよう。
でも、中味は「アメリカ女性」という感じはなくて、一人の女性。
「子どもは引き取れない」「自分の子が欲しい」「子どもだけなら」「母親と引き離せない」等々。
ぐるぐる考えが回ってるところなど、等身大の女性。
自分が身を引く?それでクリスが幸せになるなら。でも、あの子はクリスに辛い出来事を思い出させる…。
これまで、エレンというと包み込むような大人の女性のイメージでしたが、同じ目線で悩んでいるようでした。


■トゥイ
タムを見て激昂してしまったけども。
アメリカに恨みを持っていたら、ある種、当然の反応にも見える…。
ベトコンっていうものに対する知識が私にないので、この人の非道さとかがいまいちわかりません。
親の遺言に従って、婚約者を捜しに来て、アメリカ兵に騙されても見捨てず、探し続ける…。
舞台だけ見ていたら、この人はこの人で可哀想やんって思う。
あと、亡霊になって出てきたと思っていたけど、あれって、キムの心が生みだしたものかと。
タムを守るために殺してしまったけど、ずっとそのことを後悔し続けてきたんだろうなぁ。
そして、折に触れ、自分が犯した罪を思い出しては、自責の念に駆られているんだろうと思う。
どうしても、トゥイ自身を悪いヤツに思えない私は、見方が浅いんでしょうか…。


■ジョン
凄く良かった!
アンジョルラス(レミゼ)で見たときより、歌がもっとぽーんと突き抜けている気がしました。
初めが気のいい兄ちゃんで、クリスとの近さがいいな。
ブイ・ドイは、声がちょっとビブラートがかかっている感じで、泣いているようでもあり、心が籠もっていて良かったです。
来年のレミゼ、楽しみになりました。


■その他
ブイ・ドイの男声合唱が、すっごく格好良かったです。
(その中でジョンの声が飛び出すのがまたいいんですけども!)
モーニングドラゴンのダンスとアクロバットが格好良かったです。
バンコクの客引きで呼ばれている人たちって、日本人に見えるけど…ここはちょっとステレオタイプ


こうやって、書いてみても、やっぱり良い舞台だったなあ、という感想です。
久しぶりに、ロンドン盤のCDを聞き直そうかな。