「サイド・ショウ」

††キャスト††
ヴァイオレット・ヒルトン 谷合香子/牧瀬海
デイジーヒルトン 樹里咲穂
ボス 大澄賢也
バティ・フォスター 吉田朋弘
ジェイク 吉原光夫
テリー・コナー 下村尊則

アンサンブル
石井雅登/岩本やよい/上野聖太/小野田龍之介/笠嶋俊秀/鎌田誠樹/白石拓也/白木原しのぶ/高田亜矢子/谷口ゆうな/田村雄一/本田育代/牧瀬海/山中沙希


劇場は森ノ宮ピロティホール
座席は、E列下手サイドブロック。
一つ手前くらいから段差があって、非常に見やすい席でした。

大阪公演は、この日のみ。
東京公演を受けて、大千穐楽でもあります。

しかし、主演のお一人、ヴァイオレット役の貴城けいさんが急病のため休演。
この公演のみ、谷合さんと牧瀬さんがヴァイオレット役を演じられることになりました。
(牧瀬さんは、1幕「いつでも一緒」ダンスシーン)


私にとっては、初めての「サイド・ショウ」観劇です。
初演も、東京公演も、私の中で比較できるものは何もありません。
そういう意味で、まっさらな気持ちで観劇をしようと臨みました。

でも、そんな心構え必要なかったかも。
それくらい、谷合さんのヴァイオレット、魅力的でした。

野心的なデイジーに小さな幸せを望むヴァイオレット。
輝くばかりのデイジーに、一歩引いた感じのヴァイオレット。
樹里さんが谷合さんをひっぱり、谷合さんは樹里さんを頼り…というのが、デイジーとヴァイオレットの関係とぴったりあっていたような気がします。


お話については…。
基本、私は初見の舞台についてはできる限り情報を入れないようにしているので、かなり驚きました。
「サイド・ショウ」という言葉の意味も知らなかった。
華やかなショー・ビジネスの世界を舞台に、双子が活躍する、楽しいミュージカルかと思っていたのです。
もちろん、結合双生児というのはチラシで知っていましたが、見事、表舞台で成功する!という話だとばかり。

ですから、1幕の最後、「愛してありのままの私を」は泣かされました。
ちょうど、「ラ・カージュ」の1幕ラストのザザの歌のように。
ただ、ザザは泣きながらも誇り高く、「私は私!」と歌い上げるのに対し、二人の歌はもっと切ない。

2幕で、二人はそれぞれに愛を得たと思ったけれど、結局は裏切られて。
はじめから、一定の距離を保とうとしていたテリー。
それは、真剣に愛していたからかもしれないし、未来を冷静に見据えていたからかもしれない。
一方、気軽に考えていたバディ。
現実が見え始めて、怖じ気づいてしまったバディ。

「あんた達の方が化け物よ」

人生のパートナーにはなれないけれど、ビジネスのパートナーではあり続けたい。
それって、デイジーからしたら、何を調子のいいことを!でしかないよなあ。
そんな都合のいいことを言って、まだ、二人にまといつこうとするのって、確かに化け物かも。

二人が成功を収めそうになって、また、調子のいいこと言って…。
そのくせ、じゃあ、腹をくくるかと言えば、逃げ腰で。
中途半端で覚悟が無い。

最後の最後で、腹をくくったのはデイジー
ヴァイオレットも、そう生きるしかないと、腹をくくったのだろうか。

切ない…。

でも、そんな二人も。
というか、そんなヴァイオレットも。
真実の愛を捧げてくれたジェイクには「肌の色が違う」と拒絶の言葉を投げかける。

実は、一番、残っているのがこの言葉なんです。
人は誰も、人を見下しているのかな…。



カーテンコール。
最後に現れた双子。
まず樹里さん。
続いて、谷合さん。
そのとき、拍手が大きくなって、谷合さんの表情が崩れました。
もう一度樹里さん。
今度は、お礼のご挨拶つき。
谷合さんは、涙腺決壊で、樹里さんから「何かしゃべる?」と促されても首をぶんぶん振るばかり。
ああ、大変だったんだなあ…と改めて。

だって、見ている私からすれば、普通にいいお芝居を見ているだけだったんですよ。
代役だなんて意識したのははじめと、ダンスシーンで入れ替わられたときだけ。
でも、谷合さんの涙を見て、必死な思いで作り上げてくださったんだなあと感動。
もちろん、谷合さんだけではなく、カンパニー皆さんで、ここまでに仕上げてくださったんだろうと思います。

最後には、東京公演で募集されたという、聴きたい曲、1〜5位が発表されて、そのうち3位と1位の曲をうたってくださいました。
3位は、「君を愛すべき人」で、ジェイクの他、バディ、ボス、テリーも一緒に歌うバージョン。
1位は、「愛してありのままの私を」で、ラストは全員で。

さらにラストに樹里さんから、「私だけが知っていることが」と「再再演」の発表が!
キャストの皆さんも、本当にびっくりされていて、本当のサプライズだったようです。

いろんな意味で、濃くて、素晴らしい舞台でした。
良いものを見せていただいたなあ…。
また、機会があれば、見てみたいです。


あと、ちょっとだけ、個別感想。
上でかけなかった分だけです。


■ジェイク
吉原さんの舞台、初めて見ました。
歌、うまー!
そして、あったかい演技の人でした。
バルジャン、見ておけばよかった!
次のレミゼでも、バルジャンをやって欲しいなあ。
年齢も重ねて、すごく素敵なバルジャンになると思う。
高音よりは、低音が格好良かったです。


■バディ
吉田さん、歌がちょっと残念。
というか、全体に歌、お上手な方が多いし。
まっすぐで単純で、いい人らしさはありました。
ラストの泣きそうな顔が、印象的でした。


■ボス
大澄さんってダンサーだと思っていたから、意外と歌がお上手!とびっくりでした。


■テリー
バディと比べるとやや年配で、ひとめぼれする?と思ってしまったw
下村さんも低音が地の底から響く感じでかっこよい。
この声でスカーだったら、それはそれは格好良いだろうなあ。
見たこと無いけど、見てみたくなりました。


■アンサンブルさん
石井さんの歌が聴きたくて行ったんですが、全体にアンサンブルさん、みなさん、お上手!
石井さんが飛び抜けることなく、とっても素敵なコーラスが聴けて、大満足。
それ以外のところでは、2幕冒頭の「鳥」の男性ダンサーさんのジャンプに魅了されていました。
ふわっと高く飛ぶところが、凄く素敵でした!
そのシーンでは仮面をされていて、どなたか見分けられなかったのですが…。


ヒルトン姉妹
デイジーは、魅力的で輝くばかりでした。
ダンスシーンでは、デイジーが一人で歌ってたように思います。
少なくとも牧瀬さんは歌っていなかったし。
谷合さんは、デイジーに引け目を取らず、対等に演じていらっしゃってすばらしかったです。