「エビータ」(10/12/24)

††本日のキャスト††

エビータ  野村玲子
チェ    芝清道
ペロン   佐野正幸
マガルディ 渋谷智也
ミストレス 高木美果


男性アンサンブル
菊池正/石野喜一/朝隈濯朗/岩城雄太/川東優希/浜名正義/中村巌/小野功司/渡久山慶/佐久間仁/真田司/神永東吾/平山信二/光山優哉/玉真義雄/田島康成


女性アンサンブル
荒木美保/団こと葉/平田曜子/大橋里砂/真優香/宝生慧/小川飛鳥/山本志織/大村奈央/加藤あゆ美/大槻純子/木許由梨/菜月ちな/桜野あら




前日予約で行ってきました。
チケットが多少残っていそうな平日ソワレ狙いです。
土日は、さすがに厳しそう…と思って、仕事の後に駆けつけました。


開演15分前についたのですが、当日引替の人が多かったようで、チケットボックスの前には結構な列ができています。
どなたかの名刺を出してる人もいらっしゃったので、俳優さんとか劇団の偉い人とかのご招待の方もいらっしゃったのかと。


チケットを貰って、座席を確認。
…おお?まさかのセンターブロック?
電話が聞き取りにくかったので、てっきりサイドブロックだと思っていたんですが…。
しかも、エビータは八百屋舞台で、いつもより前方に張り出している舞台ですので、この日の席だとちょっと舞台を見下ろす感じで非情に見やすい!


平日ソワレにして良かったー。
おそらく土日とかでは、この席は取れなかったよ!



前回、野村さんの声の調子が悪くて、それがとっても残念だったのですが。
今回は、だいぶ復調されていました。
低音部が出ない(たぶん、これは出ないんだろうな)他は、きちんと歌えていました。


そして、今回はよく見える席でもありましたので、細かな演技も堪能できました。
野村さんのエバ、良かったです。
この前は、歌がなあ…と思ったので、歌える秋さんのエバも見てみたいと思いましたけど。
もう、いいかな。
前回ほど歌えていないと、さすがに演技云々以前なんですけど、今回くらいなら、野村さんの方がいいな。
井上さんのエバと比べても、やはり野村さんかも…と思います。
井上さんのエバも大好きなんですけどね。


エバ・ペロンは、聖女なのか偽善者なのか。
見終わったとき、そんなことはどうでも良くなりました。


彼女は、彼女に出来る方法で、必死に生きていた。
貧困とか偏見とか、様々なものに抵抗しながら生きていた。


彼女の遺したものや、彼女のやり方などには、批判もあるでしょうが。
それでも、必死で死と戦った姿には胸を打たれるものがありました。



マガルディと出会って、アルゼンチンに連れて行けと迫るときの、鋭い眼差し。
マガルディは「女でもない少女でもない子どものお前」と歌いますが、たった15歳のエバはもうしっかり「女」でした。
正直、怖かった。


男たちを次々踏み台にしていくところも、過去の恋人達に別れを告げるところが、優しい笑顔なのに貫禄がある。
「別れは寂しいものだわ」といいながら、きっぱり別れを告げるのが、やはり女の怖さみたいなものがあって。


ペロンと出会ったときは、ペロンの演説に何かを感じ取ったふう。
ペロンと出会って、彼女のエビータへの道が始まったのかもしれないと思いました。
エバはペロンの中に、自分の「夢」を見いだしたのかも。
ペロンはエバを見て、惹かれて、ちょっとした恋の相手と見たようだけど、それをエバは何度も否定する。
ひとときの恋の相手ではなく、共に手を取り合える「同士」であると、訴える。
この辺も、すごい女性だと思わされました。


「ニュー・アルゼンティーナ」でペロンを励ますところも、すごく怖い女性。
民衆を味方に付け、ペロンを煽り、不安になると甘い言葉で囁く。
人心の掌握に長けていて…賢くなったグリンダも、こんな風になるかもなあ。


カサ・ロサーダの演説は、美しかったです。
思わず民衆のひとりになって、エビータコールしそうになります。


チェとのワルツは、いろいろ考えました。
「何故、100年先を見ない?」とチェに言われるエビータ。
「目先のことばかり」


チェに「去れ!」と命じたあと、ひとり「100年あったら、何でも出来るわ…」と歌うエバ
エバは愚かで、目先のことしか見なかった訳ではなく、100年先のことまで計画して土台を作る時間がなかったんだな。


チェも若くしてこの世を去ったけれど、チェのやり方は、土台を作るための戦いだったのかな。
100年先の国の未来を考えて、改革をしようとしていたのかな。
もしそうなら、二人は、そういう点でも対極にある人たちと言えるのかも?


ペロンに「どこへ行くの?」「オレは知らない」と見捨てられて。
最後にチェがエバに手を貸すのは、エバのやり方を否定していても、必死で生きるエバのことは認めているからかと思いました。


死の直前、人々の歌声の中で、倒れているエバの指先がぴくりと動きます。
その動きで、エバの心情が伝わるようで。
起きあがって、ペロンの声を追いかける眼差し。
ゆっくりと下手から上手へ、そしてまた、上手から下手へ。
劇場を支配する、緊張感。


そして、立ち上がるエバ
人生を振り返るように歌い、そして、今まさに死なんとしているとわかっていてなお。
「行かないでお願い、はかない命よ」
必死で生にしがみつく姿には、感動しました。


後ろのセットが開き、振り返る時の、その目。
死への怖れがはっきりと刻まれていて、思い返すと身震いするような…。


それでも、しっかりとした足取りで、去っていく姿に、死にさえ打ちのめされない強いエバを感じました。


ここまで観ると、もう、本当に、歴史的なエバを離れて、一途に生きたひとりの女性としてのエバの人生に感動です。
本当のエバがどうだとか、おいておいて。
野村さんのエバは、迫力があってすごかったです。



冒頭でチェが「死ぬときはこうありたいね」と皮肉っぽく歌いますが。
死んだ後、エバの遺体は17年、所在不明だったともありましたが。
そして、生きたときのまま残そう、と歌われましたが。


ラストのチェを見ていたら、チェだってわかっていたと思う。
生きてるときが大事で、エバは死んだ後なんてどうでもよかったんだと。
どんなに人々に慕われたって、死にたくなかったんだと。


短い人生を、生きて、生きて、生きて、生きた。
そんなエバだったと思います。



見に行って良かった。
もちろん、これで歌が往年の野村玲子さんだったらもっと素晴らしかったんでしょうけど。
それを差し引いても、私は、素晴らしいエビータだったと思います。




その他としては、前回と同じですけど。
椅子取りゲームの時の軍人さん達の低音のコーラスが格好良かったな〜とか。
音楽が止まる前に、ちょん、と斜め座りで椅子に腰掛ける佐野さんがかわいかったな〜とかw
芝さんの歌は、コーラスにも負けない迫力だな〜とか。
ワンコーラスだけど、芝さんと佐野さんのデュエットは、聴き応えがあるなあ〜とか。


アンサンブルさんのダンス、個々には迫力があったけど、ところどころずれたのが残念だったな〜とか。
ちっちゃい軍人さんは、石野さんかな〜とか。
川東さんが時々見分けられなくて口惜しいな〜とか。


そんなところでしょうか?



カテコでは、タイトルロールである野村さんが、ちょっと特別扱い風に登場。
(宝塚などで、トップさんを迎えるときのような感じで)
でも、そうあって当然と思えるような舞台だったと思います。



クリスマス特別カーテンコールは、「荒野の果てに」(←タイトルは公式で知りました)
この歌は、大好きで、さびの部分はよく歌っています。


幕が上がると、舞台中央に出演者の皆様が固まって、歌が始まりました。
円ではなくて、団子状にぎゅーって舞台の真ん中で集まってます。
それが、さびの部分で、環状のライトの仕込まれたところに広がって。
2コーラス目から、手拍子が入り、ややゴスペル風に。
円上に広がっていた皆様も舞台前方に集まって、楽しげです。



歌が終わり、照明が落ち、セットの奥から、野村さんが二人の聖歌隊を伴って登場。
きよしこの夜」をワンコーラス歌われます。
続いて、上手から佐野さんが登場。甘い素敵な歌声!
更に、下手から芝さんが登場。連続で聴くと、芝さんの声の方が固めなんですね。


その他の出演者の皆様もキャンドル風ライトを手に、登場。
野村さんから「今日はクリスマスイブです。皆様も素敵なクリスマスをお過ごしください」とお言葉があって。
「どうぞ、ご一緒に」との言葉に、客席も一緒に「きよしこの夜」を合唱。


最後に、芝さんから「メリークリスマス!」
続いて、皆様も「メリークリスマス!」


そのあと、ふっ、とライトに息を吹きかけるとライトが消える演出。


とっても素敵な演出でした。
華やかさはないけれど、重厚なコーラスが素晴らしい!
男声が低音もぐっと効かせてくださるので、とっても聴き応えのあるカーテンコールとなりました。


芝さんと佐野さんが揃っているのも、豪華でしたし。
本編でも大感動でしたが、おまけのクリスマスカテコも、本当に素晴らしくて、大満足でした。