「オペラ座の怪人」

††6月21日ソワレキャスト††
オペラ座の怪人 佐野正幸
クリスティーヌ・ダーエ 沼尾みゆき
ラウル・シャニュイ子爵 中井智彦
カルロッタ・ジュディチェルリ 河村彩
メグ・ジリー 松田未莉亜
マダム・ジリー 原田真理
ムッシュー・アンドレ 増田守人
ムッシュー・フィルマン 平良交一
ウバルド・ピアンジ 橋元聖地
ムッシュー・レイエ 斎藤譲
ムッシュー・ルフェーブル 河内啓友
ジョセフ・ブケー 佐藤圭一


男性アンサンブル
松永隆志/佐藤季敦/伊藤礼史/野村数幾/見付祐一/根本健一/滝本久志


女性アンサンブル
諸英希/暁爽子/村瀬歩美/籏本千都/菊池華奈子/松元恵美/中里美喜/清水麻梨紗/吉村晶子/野田彩恵子/小林貴美子/松ヶ下晴美




前日予約で取れた座席は、I列センターブロック。
非常に見やすくて、良い席でしたvv
ソワレだったせいか、2時すぎにかけたら、すぐに繋がりました。
土日公演だったら、こうは行かなかったかも。



当日は、学校団体さんが入る、と聞いていましたが、開演前のざわめきは凄かったです。
ここまで、ざわざわしているのは、初めてです。
ただ、団体さんは2階席にいるようで、声は上から降ってきます。


このざわめきは、いつ静まるかな?と思っていましたが、照明が落ち、最初の台詞「落札!」が響き渡ると、シーン。
以降は、全く気にならなかったので、学校団体さんも集中してご覧になっていたのでしょうか?


舞台は、大満足で、カーテンコールも、平日ソワレとは思えない回数でした。
詳しい感想は、個別に。



■ファントム
1幕のはじめの方は、やや声が荒れ気味に感じました。
やはり、1日移動で、しかもリハ指導で、ご自分の発声練習とか十分じゃなかったのでしょうか?


オペラ座の怪人」のラスト、「私はお前に求めた」の「わーたーしーは」は声が割れてしまっていました。
「ミュージック・オブ・ザ・ナイト」では、ロングトーン、危なげでしたが、はじめはちゃんと出ていました。
でも、途中から、力で押してる感じで、最後は、やっぱり声が割れて。
うーん、ちょっと調子は悪いのかな?
(というより、あんまり力で押すと、喉を痛めそうで心配)


しかし、仮面を剥がれるところからは素晴らしかったです。
一見、怒っているように見えるけど、実は、恥ずかしいのではないかと。
這いずって、クリスティーヌに近づいていくときも、怖れつつ、受け容れて貰えるかどうか脅えつつ、近づいていく感じ。
顔を見せたときにも、どこかに希望を持っている。
仮面を差し出すクリスティーヌを見つめる目も優しく。
愛おしそうに、クリスティーヌの頬に触れようとするときの表情が素敵でした。
少なくとも、この時のクリスティーヌは、ファントムの外見を厭うているようには見えませんでした。
驚いてはいたけれど。


屋上では、ペガサスの影から出てくる時からすでに、すすり泣いているファントム。
もしかしたら、受け容れて貰えるかもしれないと、期待していたのが、見事に裏切られた悲しみ。
クリスティーヌに見捨てられて、子どものように泣くファントム。
このファントムだと「これほどの辱め」とは、ちょっと違うような気がします。
「辱め」というより、「苦しみ」「痛み」
まっすぐにクリスティーヌを求め、密かに尽くしてきたのに、与えられたのは、酷い言葉。
ファントムにすれば、顔を見せて以降、クリスティーヌの態度が変わったようにしか見えないのだから、自分の醜さを呪う気持ちはいや増すでしょうね。
「決して許しはすまいぞーーーー」は、また声が割れてしまわないか心配しましたが、先ほどの様子とは全く変わって、朗々とした声が響き渡っていました。
ファントムの感情が爆発しているのとシンクロした声で、朗々としているんですが、泣いている声。


墓場での、最初の呼びかけは優しく。
クリスティーヌとのデュエットも綺麗でした。
ラウルが現れると、余裕の対応。
それでも、去っていく二人を追う声は、やっぱり悲しく。


「ポイント・オブ・ノーリターン」は入れ替わりが、高井さんほどはっきりしていません。
高井さんはバリトンだけど、佐野さんはテノールだから…。
それでも、現れたときの繊細な動きが、やっぱり佐野さん。
黒の覆面をしているのに、クリスにじっと見つめられると、つい目を逸らしてしまう。
そのあたり、ファントムの気弱な、繊細さが現れているように感じます。


マントを派がされたときも、本気の愛の告白で、泣ける。
必死に勇気を振り絞って、もう一度二人で…と訴えかける。
その言い方というか、お願いの仕方が、必死で可哀想で。
クリスティーヌ、受け容れたってよ!って思ってしまいます。
なのに、この人、ファントムが誰にも見せたくない素顔を、晒しちゃうんですよね…。


地下に行ってからは、心のたががはずれているファントム。
しかし、ややだらしなく椅子に腰掛けているのが、なんでこんなに綺麗に見えるんだ??
細身で、スタイルがよくて、格好いい。
そして、やや、後頭部が大きめに見えるのは…髪の毛がちょっとボリュームあるように見えたし、そのせいかな?(←リハ見で)


印象的だったのは「醜さは顔にはないわ」と言われたときのファントムの顔。
くわっと目を剥いて、クリスティーヌを睨み付ける。
「私の顔が醜くないと、お前は言うのか?私の醜さを嫌い抜いたお前が!」
そんな思いなのかなあ…と思いました。


三重唱は、それぞれに声がよく出ていて、聞き応えがありました。
そして、「行け、行ってくれ」以降は、振り絞るようなファントムの想い。
必死に、自分の心をとどめて、クリスティーヌのために行かせる。
原作の「クリスティーヌは本気で、自分とここに留まろうとした。それだけで十分だ」と言ったエリックの言葉を思い出しました。
指輪を返しに来たクリスティーヌに最後の最後に「愛している」と伝える悲しみ。
金の指輪に口づけし、クリスが脱ぎ捨てたベールを愛おしそうにかき抱き。


「我が愛は終わりぬ 夜の調べと共に」


もう、ずっぽりとファントムに感情移入してしまいました。
やっぱり、佐野さんのファントム…好きだなあ…。
ただ、毎回言っていますけど、そんだけ大好きな佐野さんのファントムでも、惚れませんけどね。


佐野さんファントムには、同化するというか、引き込まれるけど、惚れちゃうファントムはやっぱり沢木さんだけなのでした。
(市村さんも見ていたら、惚れたかも知れないけど、見ていないのでw)



■クリスティー
初見でした。
「Think of Me」は、音が低すぎるのかなぁ?
苫田さんの時も思ったんですが、すごく息が交じるのが苦手。


ただ、カルロッタが正確無比な機会のような歌い手であるのに対し、きちんと演技できるクリスティーヌという対比はきちんと出ていました。
高音は、きんきんとしそうな声ですが、そんなことなく、綺麗に出るんだなー。


演技は、ちょっと他のクリスとは違うところがあります。
「もう、子どもの頃の私たちじゃないのよ…」というところとか、深みがある感じ。
ラウルとの関係も、ラウルに頼り切っている弱々しい女の子じゃなくて、ラウルを守ろうとしている。


墓場のシーンの「ラウルやめて」も、ラウルをたしなめている感じで、お姉さんぽいです。
地下で、ラウルを庇って両腕を広げるところも、強さを感じる。


一方で、ファントムのことは…。
本気で嫌いなんだろうなあ…。
そこまで?ってくらいに、嫌悪感を見せる。


一度は心を通わせたんじゃないの?
ふとした瞬間、また、ファントムに心揺れるんじゃないの?


クリスってそういう女性だと思っていたんだけど、もはや生理的嫌悪感…とでもいうくらいにファントムを嫌い抜いてるように見えて。
ちょっと(というか、かなり)ファントムが可哀想でした…。


で、こういう役作りだと、最後のシーンがいまいち納得行かないような気もしたんですが…。
(最後、ラウルのためではなく、ファントムを本気で選ぶ…というのが)


ラウルに手を引かれて去っていくときの、躊躇い。
戻ってきたときの、戸惑い。
そういう演技を見ていたら、まあ、いいかな。
ファントムを嫌い抜くクリスだからこそ、ファントムの悲哀がいっそう強く出たのもありますしね。



■ラウル
歌がどこでも力強く、朗々と聞こえて良いです。
そして、ラウルらしい、天真爛漫な明るさ、太陽の光が感じられるのも良い。
ただ…、黒燕尾服を着たときに、どうも、すっきり見えないのはなんででしょう?
頭も大きく見える…。
背は低くないし、ラストのシャツ姿はすっきり見えるんですけど…。
佐野さんのスタイルが良いので、余計、気になります。


でも、そういう見た目のこと以外だと、やっぱり好きなラウル。
声がまっすぐ届くのがいいです。
まだまだ、ぼんぼんの甘ちゃんなラウル、という感じで、でも、決して傲慢じゃなくて。


あと、付け足しとして。
京都初日、カテコで走ってきて、盛大にすっころんだ中井さんでしたが。
今回は、走らず歩いて登場。
これは、こけないように、という配慮ですか?
そして、佐野さん登場後、非常に固い表情(というか真面目な表情で)な中井さん。
最後に袖にはけるときは、にっこり手を振っておられましたが、佐野ファントムと共演して思うところでもあったのかしら?
などと、勘繰ってしまいそうなくらいに、何かを考えているような表情でした。


なんにせよ、この機会を通して、更に素敵なラウルになってくれたらいいな、と期待します。



■マダム・ジリー
今更だけど、原田さんってちっちゃいんですね。
メグとそんなに変わらないくらい。
昔はダンサーだったんだから、それでいいのかも知れないけど、私としてはすっきりとした長身のマダムが好きです。
なんだか、ころころと可愛い感じの体型で、若干の違和感。
年齢も意外と若いマダムっぽく感じました。



■ピアンジ
前回「オネエ系」に感じた、という箇所を確認。
ハンニバル」で「ローム」と言うように言われたときの反応が「あたしには、どうも言いにくくって」という言い方とか。
「じじいのドンファンは、せめて痩せてくれなくては」の時に、両腕で身体を抱くときの動きとか。
そういうのがオネエっぽく見えたんでしたw
舞台メイクしているのと気のピアンジは、おもしろ系ですが、素顔メイクのピアンジは、結構、地味系な顔立ちなんだなあーということも確認です。



ムッシュー・レイエ
あ、斎藤さんですね。
ちょっと老けた感じになってるけど、やっぱり格好いいわw



■フィルマンさん
平良さん、やる気なさそうな演技が本気ぽく見えました。



■その他
7重唱のところは、カルロッタがちょっと埋没気味でしたが、基本、良かったです。
ただ、「天使か化け物か」で身体を揺らす所、全くあってなくて、それは残念。


劇中劇のオペラは、殿様のバスの響く低音が格好良いです。
マスカレードでも、低音で聞かせてくださる歌い手さんがいらっしゃるんですが、同じ人かな。


マスカレードといえば、「のーめよ」は、本番では、いまいちの印象。
佐野さんの指導は、まだまだ続くものと思われます。


ついでにマスカレードの時の、クリスと追いかけるラウル。
とっても二人の関係を暗示しているようで、良かったです。
あと、アゲハチョウさんが素敵でした。



感想は、そんな感じかな?
最後は、佐野ファントムに全部持っていかれた感じの、舞台でした。


カテコも何度もありましたが、佐野さんは、舞台袖に入るとき、最後に一礼されるのが、すごく素敵でした。
来週も、佐野さんファントムかな。
というか、いつまで佐野さん、いはるやろうか…。


佐野さんがいらっしゃる間に、もう一回は見に行きたいものですw