「数えずの井戸」

「数えずの井戸」
京極夏彦さん著。

言わずとしれた、番町皿屋敷をもとにしたお話です。
とはいえ、私自身が、皿屋敷の怪談を詳しくは知らないのですが。

10枚そろいのお皿を1枚割った女中・菊の幽霊が、井戸から現れ、皿を数え…「一枚足りない〜」って話だという程度の認識でした。


おそらく、そういう人が多いからでしょうけど、最初に、菊と菊をお手討ちにしたとされるお殿様について、様々な風聞が紹介されています。
そこから、菊、お殿様、屋敷の家老、お殿様の友人、菊の幼なじみ…などの視点で物語が少しずつ語られて。

結局、そこで何があったかは、明かされないのですが。


数えるから、足りないと思う。
あるだけで全部。


菊の無欲なあり方と、お殿様の虚しさと。
人から認められないと生きている気がしないような家老と。

読んでいると、哀しくもあるのですが、菊の真っ白なところに、救われる…。
いえ、救われる気がする分、辛くなります。


又市さんも出てきますが、ホントにゲスト出演で。
出てきたなら、菊を何とかしてやって欲しかった…なんて、そんなことを思ってしまいました。