「レ・ミゼラブル」('13/10/13ソワレ)

レ・ミゼラブル


††キャスト††
ジャン・バルジャン 福井晶一
ジャベール 吉原光夫
エポニーヌ 笹本玲奈
ファンテーヌ 知念里奈
コゼット 青山郁代
マリウス 原田優一
テナルディエ 駒田一
マダム・テナルディエ 森公美子
アンジョルラス 上原理生

ガブローシュ 松井月杜
リトルコゼット 北川真衣
リトルエポニーヌ 清水詩音

司教 田村雄一
工場長 石飛幸治
バマタボア 宇部洋之
グランテール 菊地まさはる
フイイ 神田恭平
コンブフェール 原慎一
クールフェラック 鎌田誠樹
プルベール 安部三博
ジョリ 篠田裕介
レーグル 持木悠
バベ 櫻井太郎
ブリジョン 北村がく
ラクスー 土倉有貴
モンパルナス 大津裕哉
ファクトリーガール 三森千愛
かつら屋 柳本奈都子
買入屋 廣野有紀
マダム 本田育代
女 児玉奈々子
女 藤咲みどり
女 石田加名子
女 綿引さやか
女 島田彩
女 松本ほなみ

指揮 若林裕治



名古屋公演です。
フェスで見られなかった、福井さんバル×吉原さんジャベの組み合わせ。
この日の座席は、2列目のセンターでした。
「名古屋は客席が近い」と聞いていましたが、本当に近くてびっくりしました。
オケピの幅があまりなくて、目の前に役者さんがいらっしゃる!
また、他の劇場(帝劇、フェス)と比べて、舞台が狭いので、新演出のサイズにぴったりです。
空間が無駄に余っている…という感じがなくて、それはとても良かったです。
成る程、地方公演に持っていくための新演出、というのがすっきり納得いきました。

(その考え方で行くと、ウエストエンドのみ本公演、その他はすべて地方公演っていう位置づけか〜。
 それはそれでアリかもしれない考え方ですね。実際、地方公演なわけだし…)

あと、関係ないですが、中日劇場の出待ちはすごい。
エレベータ付近で、列をなしています。
気軽に待てるけど、だからこそ周りに気を遣ってしまう場所ですね。
でも、ここも役者さんとの距離が(物理的な距離が)近くて、名古屋はいろんな意味で距離が近い場所なのかなーと思いました。


そんな距離の近い場所で見た舞台でしたから、それはもう、大迫力でした!
ただ、近いからこそ、ちょっと露骨な表現とかもよく見えて、そこは善し悪しでしたが。
(露骨な表現…売春宿でとか、テナの宿屋でとか)


以下は個別感想です。

■バルジャン
真面目ないい人。
市長になってからの落ち着きが一番似合っていると思います。
そして、ちっちゃいコゼットと出会ったときの慈愛あふれる様がいい感じ。
野獣風のお辞儀も優雅で、この時代の福井さんバルはとっても素敵です。
コゼットが大人になってしまってからは、そのお父さんっぷりが減じた感じがして勿体ない。
しかし、やっぱり一番勿体ないのは…ファルセットなのです。
ここが決まらないと、バルジャンとしての印象は薄くなってしまうんだなあ…と改めて思いました。
「彼を帰して」もそうですが、ラストもそうです(曲は同じだし)。
独白とかは、いい声だーって思うんですが、「彼を帰して」がダメだとその印象も薄れてしまうんですよね。
勿体ない…。

話は変わりますが、地下道のマリウス抱えは、ちょっとしんどそうでした。
「見ろ!ジャベール!」ではお姫様だっこせず、肩を組んで顔を見せていましたし、腰とか足とかちょっと心配。

「罪深き我が身、あなたのもとへ」ですくっと立ち上がる姿は美しく、やっぱりちょっと滝田さんを思いました。


■ジャベール
…バルジャンで見るよりでかくみえるのは何故?
くまさんみたい…。
見た目はラッセル・クロウ

でも、演技はラッセル・クロウではなくて、従来のジャベに一番近い感じでした。
信念の人で、自殺の「バルジャンのいない世界へ」というのが納得できて、満足できるジャベールでした。
他のジャベールもそれぞれにちゃんと一貫した生き方があるんですが、私が求めるジャベールは吉原さんのジャベかなと思います。
何故死ぬのか、ジャベールの気持ちは理解できるけれど、バルジャンのように新しい人生を生きてもいいじゃないか、と思わせてくれるジャベールが好きです。
もちろん、ジャベールには、生き方を変える事なんてできないとわかっている(観客にわからせてくれる)のですが。

アンジョやガブの遺体を見ても、「バルジャンじゃない」以外の感情が見えてこないのもいいです。
ジャベの気持ちを動かすのは、ただ「バルジャン」のみ、なんです。
威厳があって、いい声で、でっかくて(笑)。
もうちょっと、吉原さんのジャベール、見たかったなあ。
ただ、惜しむらくは、なんであんなにでっかいのに、バルジャンに負ける?って思ってしまうところでしょうか?
負けっぷりもお上手でしたけどね(^^)


■ファンテーヌ
知念さんのファンテは、理由がわからないのに泣かされてしまうところがあります。
たぶん、これは理屈を超えた部分で、ファンテを感じるからなんだろうと思っています。
特に、コゼットを思って歌うところは、絶対泣いてしまう。
「夢破れて」も拍手をするより、歌の余韻に浸っていたくなりました。


■テナルディエ夫婦
カナリア(?)をミンチにしてしまうところ、マダムはショックを受けてたんですねー。
「あんたが食べないとダメだよ!」と必死に飼い主に勧めているのが…マダムなりの思いやりなんでしょうけど、それはそれで非道い話です。
バルジャンが来たときに、必死で胸を強調するのは…色仕掛けしようとしているのか?
あと、バルジャンの鞄をあさっていたテナが腕を掴まれて、その力の強さに驚くところは、「バルジャンには力では敵わない」というのを示していて良かったです。

パリでバルジャンの顔を見て、気がつくマダム。
基本的に、二人でいるときはマダムの方が強くて、「怖い母ちゃん」。
でも、そのあとのプリュメ街の襲撃では、しっかり悪党に顔をしているテナ。
マダムと一緒にいるときは、愛嬌があるんですが、基本はとことん悪いヤツなのがテナという感じでした。

結婚式のラスト、「砦が落ちてもおりゃ生きる!」からのマダム(というより森クミさん)が格好良かった。
目力ありまくりで、歌も力強くて、最高に素敵でした。
天使にラブソングを」で主演されるそうですが、絶対見たい!と思います。


■エポニーヌ
ツンデレ…とは違うか、好きなんだけど素直になれなくて、からかうような態度をとってしまったり、素っ気ない態度をとってしまったり。
でも、真っ直ぐマリウスに見つめられて「頼むよ」とかいわれると、途端に女の子の表情になって、とっても可愛い。
その直後に、落とされる(コゼットへの気持ちを聞かされたりしてがっかりしてしまう)のが、可哀想で。
バルジャンに「俺に渡せ、坊や」と言われて、髪を下ろすのは挑戦的に感じます。
マリウスを守るときは、突き飛ばしたのはわかりましたが、もう少し激しくてもよいかと。
「恵みの雨」では、ラストでかなり痛がるんですが、それが不自然ではなく。
平野さんの時は、大袈裟すぎて冷めたんですが、そのへんのさじ加減がお上手です。
綺麗で、可愛くて、でも、マリウスに選ばれないのはわかる。
さすがの安定のエポでした。


■マリウス
ちょっと顔が丸く見えて、幼くも感じましたが、さすがの美声です。
コゼットに恋をして、あたふたしている感じや、恋が叶ってふわふわしている感じがよく出ていました。
「空の椅子とテーブル」の感情の盛り上がりもさすが、もちろん歌もさすが。
あの演出じゃなければなあ…。
生き残って、自分を責めて生きている表情から、コゼットのおかげで生きる気力を取り戻していくという移り変わりを丁寧に演じていらっしゃいました。
バルジャンの告白を聞いているときも、(バルジャンさんって?お父さん、何言ってるんだろ)という不思議顔から、(まさか?それって??)という変遷もわかりやすかったです。
結婚式では、指輪を探す…これって、マリウスのデフォルト?


■コゼット
…普通に、嫌なところもなく、コゼットでした。
パパには反抗的で、バルジャンはちょっと困っている風でしたけど。
リトルコゼットは、三回目の北川真衣さんですが。
…この子の歌は、私には合わないです。
この子を選んだ方とは趣味が大いに違うらしい。


■アンジョルラス
上原さんは、身長もあるから、目立つ。
そして、やはり声がいいと、思う。
それまでざわついていた学生が、彼が話し出すと集中していくのがわかって、それもいいなと思います。
ただ、グランテールとの関係が、すごく気になります。
…というか、グランテールが気になります。


■グランテール
アンジョからの続きで、グランテール。
この人、なんで、参加したんだろう?
ガブローシュを心配して…ってわけじゃないだろうし。
革命とか思っていない気がするんだけどなあ。
「死など無駄じゃないのか?」は、今回のグランテールからしたら本気だと思うんだけど。
(旧演出だと、ちゃかしている感じもあると思ってます)
アンジョに特別な思いも無いようだし、わからん…。
わからんからこそ、すっごく気になります。


クールフェラック
特に何があったわけではないのですが…。
でっか!と思って、目立つなあ〜と見ていました。
ジャベもされている鎌田さんだったんですね。
…ってそれだけなんです、ごめんなさい(^^;


■司教様
さらに、何があったわけでもないのですが…。
バルジャンが連れてこられた翌朝、裸足なんですね!
妹とかはちゃんと靴はいているのに!
これって、それだけ急いで出てきたっ演出?
足の裏、痛くないのかなぁ…石畳の筈ですよね、地面。


細かい感想は、そんな感じです。
全体に、まとまっている感じは、前回と同じ。
カテコでは、吉原さんと福井さんががっちり握手していて、いい感じでした。
二人で子役さんをいじったりして、楽しいカテコでした。