「怖い絵」展

兵庫県立美術館で開催されていた「怖い絵」展に行って来ました。


見たかったのは、「レディ・ジェーン・グレイの処刑」

この絵は、小学生か中学生の頃、新聞の日曜版に掲載されていて、いつか見てみたいなあと思った絵です。
学生時代にロンドンに行ったときに、この絵があると聞いたのですが、入場料が必要な美術館だったので行くのを断念した思い出があります。

とにかく貧乏旅行だったので、無料で入れる施設ばかり行ってました。
そんなに貧乏なのに、オペラ座の怪人は見たくて、当日券に並んで、でも1階席は買えずに安い席を買ってみた思い出(笑)。

でも、今回の展覧会での案内を見ると、この絵、ナショナル・ギャラリーに展示されているとか。
あれー?
ナショナル・ギャラリーだったら、入場料は自由じゃなかったっけ?
記憶がさだかじゃないのですが、ナショナル・ポートレート・ギャラリーとかいう、王族の肖像画を集めた美術館だったような…。

友達は見に行って、お土産にポストカードをもらった記憶があるんだけどなあ。

(検索したら、そんな美術館自体がない? 名前の記憶違い?)

でもね。
一昨年の暮れに、ナショナル・ギャラリーに行ったときにも、この絵を見た記憶がないんですよね。

展覧会の案内で見ると、ナショナル・ギャラリーの中ではかなり目立つ位置にあるらしいんですが。


ともあれ、そんな紆余曲折があって、ようやく出会えた「レディ・ジェーン・グレイの処刑」でございます。


そのほかにも、怖い絵とされる絵がありましたが、やはり、この絵の存在感には勝てない。

思った以上に大きな作品でした。


この絵に関して、私はまったく怖いとは思っていなかったんですが。
実際に、目にして、一点だけ怖いなと思ったところが。

それは、ジェーンの左手薬指の細い金の指輪。

処刑の瞬間まで、唯一、彼女が身に付けていたアクセサリー。


もちろん、写真じゃないので、画家の創作なのですが…。


この指輪について、解説では、「唯一の救い」といった説明がなされていましたが。
私には、これが悲劇の元凶だと思われて。


レディ・ジェーンは、9日間の女王といわれるイギリスのお姫さまです。
ヘンリー8世の子供たちは、エドワード6世以外、王位継承権を剥奪されたため、エドワード6世のあとに王位につくことになったお姫さま。
即位のためにロンドン塔に入ったのに、メアリーによって王位を奪われ、そのまま処刑されてしまう。

ヘンリー8世の妹の孫で、その血統を利用されてしまった…というのが、定説です。
メアリーとエリザベスが王位継承権がないので、彼女が次の王位につくと踏んだノーサンバランド公が、ジェーンと息子を結婚させて、彼女を傀儡の女王にしようとした。

もし、ジェーンがそんな策略にのらなかったら。
ジェーンは女王にならなかっただろうし、死ぬこともなかったはず。
まあ、メアリー女王に目の敵にされて、やっぱり殺されちゃったかもしれないけど。
(なんてったって「ブラッディ・メアリー」ですから)

ジェーンがもっとうまく身を処していたら、この悲劇はなかったはずで、その悲劇を象徴しているのが、結婚指輪だと思うのです。
最後まで、ジェーンは、夫ギルフォード・ダドリーへの愛を貫いた。
夫は、その父親とともに、彼女を利用しただけなのに。

そう思うと、やっぱりこの絵の一番怖いところは、指輪じゃないでしょうか。

可憐で純粋な女の子を、自分の欲得のために利用する卑劣なおやじ。
(まあ、女の子も賢くないのですが、お姫さまだからね。他人を疑うことを知らないんだよ)
(エリザベスは完璧に周りを疑いまくって、生き残ったけど、ある意味、鉄の女だったから)



許せん!


と思った、展覧会なのでした。


でも、この絵のもつドラマ性は、やっぱりすきなのでした。


展覧会では絵の撮影は禁じられていたので(日本だと当たり前。でもナショナル・ギャラリーだったらフラッシュをたかなければ撮影できる)、外のパネルを撮影してきました。
この記事のトップにある画像の、角度を変えて撮ったもの。

ポストカードのサイズだと、あの絵の迫力がなくなってしまうし。
A4サイズのクリアファイルは、絵を見るために買うというものでもないし。

A3くらいで、ポスターがあればよかったな。