「嵐が丘」追加

昨日の日記は、ちょっと雑でしたので、改めまして。

がっつりネタバレがありますので、お気をつけください。





第1幕。
嵐が丘屋敷を、ロックウッドが訪ねてきたところから始まります。
出迎えたネリーは、ヒースクリフが死んだことを伝え、ロックウッドの語りで彼がヒースクリフと初めて出会った夜の回想に。

嵐の夜、屋敷を訪ねてきたロックウッド。
言い争うヒースクリフとキャシー、ヘアトン。
放置されたロックウッドは、ジョウゼフに金貨を渡し、ヒースクリフには内緒で一部屋をあてがってもらう。
その部屋で休もうとしたところ、外から窓をたたく音が。
「中にいれて。18年も彷徨っているんだから!」
窓ガラスが割れ、ロックウッドの腕を掴んだ白いドレスの女性。
ロックウッドの叫び声に、部屋に入ってきたヒースクリフ
事情を聞くと、ロックウッドを追い出し、「入ってきてくれ」と懇願。

この場面のセリの使い方が面白い。
ステージの床部分を2階の床にして、その下の空間を1階の部屋(キッチン)にしているんです。
それだけだったら、よくあるのでしょうが、2階に舞台が移るとセリが下がって、観客の目線が2階に行きやすくなったり、工夫されています。
2階から1階に下りていく役者さんが、セリの下に消えていくのも面白いです。

この後は、ネリーの語りによって、ヒースクリフがアーンショウに引き取られた時からの回想となります。
ところどころで、ネリーによる解説も入りつつ、ヒースクリフ、キャサリン、ヒンドリーの子供時代が語られます。

ここの三人は子役さん。
でも、影のように本役の三人が後ろに控えています。
初めのうちは、子役さんが台詞を言っていましたが、途中からは本役の三人が台詞を舞台前面でいい、舞台奥で子役さんが動くという、ちょっと不思議な演出。
どちらを見たらいいか、ちょっと迷ってしまいますが、不思議と違和感はありませんでした。
ここの演出、結構好きかな。

ヒンドリーは父親の愛情をヒースクリフに奪われて、ヒースクリフを恨んでいます。
ヒースクリフは、アーンショウのことを「お父さん」と呼んでいるから…息子として引き取られたということなんかな?
それにしては、小汚い服装ではあるんだけども。

ここで、ヒンドリーとヒースクリフに、父親が馬を与え、その馬を巡ってのエピソードがあるんですが…。
そのエピソードはおいといて、ヒンドリーに殴られたヒースクリフをネリーが慰めるシーンがあります。
ネリーは、勿論戸田さんなので、ネリーは子どもたちのお世話係りかと思っていたんです。
しかし、2幕での台詞から、ネリーとヒンドリーは幼馴染み…だとか。
プログラムでも、ネリーは彼らと一緒に育った…とあって、これはわかりにくいなあと思いました。

同様に、父親が病死したあと、ヒンドリーが嵐が丘屋敷の主人となって、キャサリンヒースクリフを閉め出したあと、リントン家の兄妹と出会うシーンも、キャサリンたちは子役なのに、リントン家の兄妹は大人なので、軽く混乱です。
まあ、こちらは、実際は子どもなんだ…と自分に言い聞かせながら見ていましたが…。
(でも、子どものエドガーには、キャサリンをお姫様だっこは無理ではなかろうか、とも思った)

その後、5週間、リントン家で療養して帰宅したキャサリンからは、大人に。
奔放で可愛いキャサリンに、おぼっちゃまのエドガーが惹かれるのは分かる気がします。

エドガーから求婚されたキャサリンは、それを受けます。
ヒースクリフと結婚したら、二人ともどうしようもない。
エドガーと結婚したら、経済的に安定する。
そして、どんな立場であれ、二人の関係、魂のつながりは変わらないと信じるキャサリン
そのキャサリンの言い分の初め半分だけを聞いて、屋敷を去るヒースクリフ
キャサリンが自分との結婚を望んでいない、自分を必要としていないと思ったからですが、もしキャサリンの言葉を全部聞いていたら、ヒースクリフはどうしたでしょう?
あんまり、状況は変わらない気がするけどなあ…。

出ていったヒースクリフの名を狂ったように呼び続けるキャサリン
それまでの、自分勝手で、ヒースクリフをいたぶっているようにも見えたキャサリンが、実は、本当にヒースクリフを愛していたことがわかるシーンです。

ここで、1幕終了。


2幕、キャサリンエドガーと結婚しています。
しかし、ヒースクリフの失踪のあと、3年経ってからの結婚。
ヒースクリフを失って、キャサリンは心を病んでしまっていたのです。
ネリーもキャサリンと一緒に、リントン家にやって来ています。
すっかり落ち着いた奥様になったキャサリン

…と語られますが、その後すぐにヒースクリフが訪ねてきて、「落ち着いた」と観客には実感しにくいです。

エドガーは、ヒースクリフと会うことに難色を示しますが、キャサリンは耳を貸しません。
このときのキャサリンの喜びようが、どれほど彼女がヒースクリフを求めていたかを示しているようで、エドガーには悪いけど、良かったねーって思ってしまいます。
ヒースクリフも、このキャサリンの手放しの歓迎は予想外だったようで、おそらくはキャサリンにも復讐をとか思っていたんでしょうが、彼女のことは許し、彼女への愛を再確認したように思えます。

嵐が丘屋敷に逗留し、ヒンドリーから財産を奪っていくヒースクリフ
見た目の美しさから、ヒースクリフに心を奪われるイザベラ。
エドガーから、二度と屋敷に来るなといわれたヒースクリフは、イザベラを連れ去り結婚をします。
結婚後、ヒースクリフの本性を知り、嵐が丘屋敷の住人の粗暴さに絶望するイザベラ。

ヒースクリフとイザベラが去った後、病の床についていたキャサリンは、ヒースクリフが密かに見舞いに訪れた夜、息を引き取りました。
キャサリンの埋葬の後、イザベラは去り、時が流れ。

エドガーも、イザベラも、ヒンドリーも死んで、彼らの財産は全てヒースクリフの物に。
ヒンドリーの息子・ヘアトンは、下男として使われ、文字も読めない。
キャサリンの娘・キャシーは、嵐が丘屋敷に。
キャシーはヘアトンを見下しているふうでもありましたが、自分をかばってくれていたことを知って心を開いていきます。

ヘアトン、絶対いいことなんて無かったはずなのに、意外といい奴に育ってる?

そんな二人のやり取りがあって、ロックウッドがヒースクリフを訪ねてくる場面に戻ります。
そしてその3日後。
眠りもせず、食事もしないヒースクリフが、胸の内を語ります。
慟哭のような、彼の言葉。
18年前、キャサリンが死んだときから、少しずつヒースクリフも死んでいった。

彼が死んだとき、誰も、彼のために泣かないだろうと、思いました。
しかし、一人、彼の死を悼んだ者がいました。
それは、ヘアトン。
ヘアトンって、ヒースクリフと同じように生きていた筈なのに。
どこが違ったのでしょう?

嵐が丘屋敷の2階には、時折、二人の人間の影が見えるそうです。
荒野で、ヒースクリフの亡霊が、誰か女の人といるのを見た人もいるそうです。

二人の魂は、天国へも地獄へも行かず、荒野を走り回っているのか。
そっと丘を見上げる、ヘアトンとキャシー。
その丘に佇む、若き日のヒースクリフとキャサリン
どうやってもヒースクリフが手に入れられなかった安寧を、ヘアトンが手にしていること。
荒野を走り回る二人の魂は、ようやく、安寧を手に入れ、幸せを享受しているのかもしれない。

そんなことを思って、胸が熱くなりました。


駆け足、駆け足だった1幕。
同様の2幕。
でも、重さは2幕の方が断然重くて、深かった。
穏やかに安らかに、若い日のままの二人でいられたら、こんな辛いことはなかったのにね。


■キャサリン
昨日も書いたとおり。
若くして亡くなっているので、堀北さんの可愛らしさはありかと。
可愛くて、暴虐。
ヒースクリフを支配しているようで、彼無しでは生きていけない。
そういう強さ弱さを上手く演じていらっしゃったと思います。


ヒースクリフ
金持ちになって、帰ってきてからの見た目がジャベール。
もみあげ(じゃないけど、横の垂らし髪)が、自殺の時のジャベールそのもので、ちょっと山本さんのジャベールを見てみたくなりました。
(偏執狂的なところも、ジャベールに似てるしw)
こちらも、昨日書いたとおりなんですが、暗いんですよー。
でも、2幕でようやく自分の気持ちを表に出す(キャサリンへの思慕を言葉にする)ところは偏執狂的ではあるものの、彼の感情に飲み込まれてしまいます。
キャサリンの死のときの必死さは、冷たい彼の仮面が落ちて、人間らしいヒースクリフ
どのヒースクリフを見ても、辛そうで、痛々しい。
その分、ラストで救われる気がします。
(実際には、全然救われていないんですけども)
ラストシーンの、穏やかなヒースクリフが素敵でした。


■ヒンドリー
可哀想な人だけど、この人も極端。
しかし、こういう役がお上手な役者さんだなあと思います。
こういう役、何回か見た気がするのは気のせい?


エドガー
ぼんぼんぽさが、ぴったり。
ぽへーっとして、ほのぼのとして。
いい人らしさがにじみ出ている感じです。
困難から逃げる人ってあったけど、良識派だし、なんでキャサリンなんかと関わっちゃったんだろう…とちょっと可哀想になります。


■イザベラ
エドガーに比べると、いい人感は少なくて、普通の人っぽい?
いかにもなお嬢様で、ダーティな男に惚れちゃう!というありがち設定を納得させてくれる雰囲気がもうちょっとあってもいいかも。


■ヘアトン
口悪いなーとは思いましたが、この人がいなければ、このお話は救われなかったと思うくらいのキーパーソン。(と私は思いました)
いい奴感を出すときに、意外ではあっても、「ありえない設定」とは感じさせないのは、うまく演じていらっしゃるからでは?
もしくは、お人柄でしょうか。


■ジョウゼフ
ちょっと苦手。
なんで、使用人のくせに、あんなに口が悪くて偉そうなんだろう?
時々、変に間が空いて、あれ?って時がありました。


■ネリー
昨日、書いた気がする。
けど、いい味出ていて、この人がいるとほっとする感じでした。
他の人が、みんな病みすぎなんやもんなー。


いくつか、書き忘れたこと。

赤ちゃんの時のヘアトン、ヒンドリーに階段から投げ捨てられ、たまたまヒースクリフにキャッチしてもらっています。
このときのヒースクリフの顔は、驚いているけど、ちょっと優しそうな、ヘアトンへの思いやりみたいなのが見えた気がしました。
ヘアトンは、ヒースクリフに命を救われたのを知っていて、なんだかんだ言っても、ヒースクリフのことを愛していたのかなあ。
だから、最後、彼のために泣いたのかなあ、とか思ったり。

一箇所、大笑いしてしまったところ。
キャサリンヒースクリフにイザベラの恋心をばらすシーン。
「あなたに恋いこがれている女性がいるのよ」的な台詞があった後、ヒースクリフとネリーが顔を見合わせるのですが、「なにネリーを見ているの?ネリーじゃないわよ」というキャサリンのツッコミと、その時の二人の反応に大笑い。
ネリー見てたのは、そういう意味だったん?
で、ネリーは、ちゃうちゃう!的な反応で。
ほんと、うっかり、かんらかんらと笑ってしまって、恥ずかしかったです。

カテコでは、硬い表情のままだった山本さん。
高橋さんとか、笑顔で手を振ってくださってるのにー。
と、少し残念でしたが、最後でにっこり。
この落差がいいのか!
そして、にこにこと手を振っている堀北さんをエスコートして去っていく様が、まー格好いいこと!
去っていくときには、客席は見ないで、堀北さんをさっさと舞台袖に連れて行こうとしているのが、またヒースクリフっぽくもあって、やられたーって感じでした(^^)