「シェルブールの雨傘」('14/9/28マチネ)

シェルブールの雨傘


脚本・歌詞:ジャック・ドゥミ
音楽:ミシェル・ルグラン

演出・振付:謝珠栄
翻訳・訳詞:竜真知子


††キャスト††
井上芳雄 ギイ

野々すみ花 ジュヌヴィエーヴ
大和田美帆 マドレーヌ
出雲綾 エリーズおばさん
鈴木綜馬 カサール
香寿たつき エムリー夫人

松澤重雄 デュブール/老人/ダンスホールのバーテン
川口竜也 オーバン/兵士/ギャルソン
高原紳輔 ピエール/兵隊/ガソリンスタンドの店員
俵和也 郵便配達/ジャン/ダンスホールの酔っぱらい
照井裕隆 水平/ベルナール/兵士
秋園美緒 娼婦ジェニー/子ども連れの女性/カーニバルで踊る女性
岩崎亜希子 ワゴン娘/ダンスホールで踊る女性/ジュヌヴィエーヴに間違えられる女性
横山博子 水平の恋人/娼婦シルヴィー/走る女
菊井凛人/手塚涼太 フランソワ


サンケイホールブリーゼにて。
12:00開演で、14:20終演(予定)。
1幕が50分、2幕が70分。
始まる前は、意外に短いミュージカルだなあと思いました。

タイトルはよく知っているミュージカルですが、映画も見たことがありませんでした。
しかし、1ベルに用いられているメインテーマは、耳になじみのある曲でした。

街角でぶつかったことがきっかけで恋人になった、自動車整備工のギイと傘屋の娘のジュヌヴィエーヴ。
20歳のギイと16歳のジュヌヴィエーヴは、初々しい可愛いカップルです。

ある日、ギイに召集令状が届き、二人は一夜の思い出を作ります。
ギイは、アルジェリアでジュヌヴィエーヴを思いながら戦い、時に危険な任務にも就きます。
一方のジュヌヴィエーヴは、途絶えがちなギイからの便りに不安を募らせています。
恋に浮かれた思い出が少しずつ遠くなり、変わっていく自分の体にとまどうジュヌヴィエーヴ。
そんなジュヌヴィエーヴの全てを受け入れるというカサール。

怪我をしてシェルブールに戻ったギイ。
おばさんのエリーズの世話をするマドレーヌから、ジュヌヴィエーヴが結婚し、街を去ったことを聞き、絶望します。
荒れるギイでしたが、エリーズの死をきっかけに立ち直り、夢に向かって進み始めます。

5年後のクリスマスイブ。
ギイのガソリンスタンドに訪れたジュヌヴィエーヴ。

「あの子に会うでしょう?」というジュヌヴィエーヴの言葉にほほえんで首を振るギイ。

静かに、雪が降り積もっていきました…。



1幕終了時点では、よくあるメロドラマだなあと思いました。
見終わったあとは、いいお芝居だったなあと…。
ストーリーは、やっぱりよくあるメロドラマなんです。
でも、音楽の力か…。
メインテーマが、しっとりと心に染みこんで。

ブロードウェイのように、派手なお話も仕掛けもなくて、毎日を丁寧に生きている人のお話。
フレンチ・ミュージカルってこういう感じなのでしょうか?
それとも、ミシェル・ルグランのミュージカルがこういう感じ?

乾いた大地を潤す春の雨のように、心の中をほっこりとあたたかくしてくれて、優しさをもたらしてくれるミュージカルでした。


■ギイ
最初の青年時代も可愛いですが、戦争に行ってからはもっといいです。
ラストシーンは、本当に穏やかで、人として成長したギイで、とても素敵でした。
ジュヌヴィエーヴの言葉に首を振るときの表情が、本当によかった。
このお芝居の全てが、あのシーンにあると言っても過言ではないと思いました。

歌は、戦地でジュヌヴィエーヴを思う歌(カサールの歌と重なる歌)が切なくて。
絞り出されるような感情が痛々しかったです。


■ジュヌヴィエーヴ
揺れる心をしっかり演じていらっしゃったかと。
ともすればひどい女性となりそうですが、「仕方なかったよね」と納得させてくれる演技でした。


■マドレーヌ
おとなしく控えめ。
でも、最後にははきはきしていて、愛が彼女を強くしたのかなあと思いました。
ジュヌヴィエーヴの結婚式で一瞬彼女が登場するので「?」だったんですが、ギイの為に見届けたんですね…。


■エリーズ
出雲さんー!
もっと、タキさんの歌を聴きたかったです。
優しいおばさんは素敵でしたけど…。


■カサール
ギイとの二重唱が素敵でした。
ジュヌヴィエーヴよりエムリー夫人のほうが年齢的には釣り合ってる気がするのですが…。
もう少し若い設定?
それとも、よくある若い女の子がちょっと年輩の男性と結ばれるバージョン?


■エムリー夫人
香寿さんーー!
もっとタータンさんの歌を聴きたかったー!
歌が、最難関だそうで…。
でも、ちょっと声が細くて、朗々と歌うタータンさんの歌が好きな私には不完全燃焼。
こちらは、「モーツァルト!」で聴くしかない?


■その他
特にどなた、ということはなく。
随所に挿入されるダンスが優雅。
とても綺麗なんですよー。
男女ペアのダンスで、艶があって、大人のムードもあって、本当に綺麗でした。



本当に、素敵なミュージカル。
先にも書きましたが、「雨」に似ている。
時に激しく、時に優しく、全てのものに降り注ぐ、暖かな雨。
土砂降りになることもありましが、基本、細かな霧雨のような、音もなく静かに降る雨のようでした。