「南へ」('11/2/26ソワレ)

野田地図 第16回公演
作・演出 野田英樹


††キャスト††

南 のり平/ノリヘイ 妻夫木 聡
あまね/アマネ    蒼井 優
里長/サトオサ    渡辺 いっけい
ミハル/ハルミ    高田 聖子
道理         チョウソンハ
あまねに似た少女   黒木 華
ミハレ/ハレミ    太田 緑 ロランス
帝の御毒見/帝の巫  銀粉蝶
人吉/ヒトヨシ    山崎 清介
妃の御毒見/妃の巫  藤木 孝
VIP/役行者    野田 英樹


フジ山の隣のブジ山にある火山観測所が舞台。
所長の里長、所員の人吉と道理。
そこに運び込まれてくる火口に身を投げようとしていた女の子・あまね。


麓の旅館からかかってくる電話は、火口を見に行くと出ていったまま帰ってこない中年夫婦の捜索依頼。


中年夫婦を探しに行く所員、女の子のために熱いお茶を取りに行く所長。
そこに飛び込んでくる、新しい所員の南のり平。


のり平は、あまねに、自分が「南のり平」であることを証明しろと言われ、名刺やIDカードを見せるが、それだけで証明になるかと問い返される。
あまねと話すうち、自分でもこんがらがっていくのり平。
里長や人吉、道理にも、新しい所員と信じて貰えず、どうやって自分を証明したらいいかわからなくなっていく。



といったお話と、火山の噴火とが絡めて話が進みます。
そして、現代の火山噴火と、300年前の火山噴火との物語の二層化。



もう一つ、天皇制と天皇を利用する詐欺の話も。
「一度行くと決めたら、進むしかないんです。」



自分が「南のり平」であることに確信を持てなくなっていくのり平。
わかっていることは、自分が「日本人」だということ。
「僕は、「日本人」です!」



信じる。
「ザ・キャラクター」と「表にでろい!」と「南へ」は信じる三部作。


確かに、この作品も「信じる」が主題でした。
見終わって、うーん、って考え込まされるような。
結構、テーマは重いですよね。


ただ、「ザ・キャラクター」に比べると、圧倒的なパワーのようなものを感じなかったです。
妻夫木さんは、草食系好青年とうそつきいい加減男をきちんと演じ分けていらっしゃいましたし、蒼井さんも面白いキャラクターだったけど。
破天荒な面白さがなかったかな。
キャストは魅力的だったんですけど。


見終わったときには、なんとなく不完全燃焼。
伝えたかったことはわかる…気がする。
でも、なんだかなあ…。


で、結局は何!
と叫びたくなるような終わり方。


普段の野田さんの作品は、そういう終わり方さえ納得させる力があるんですが、今回は、それが無かったかも。
だから、もやもやが残るのかも知れません。


ただ、メッセージは重い。
のり平が突きつけられた質問は、観客に突きつけられた質問でもあります。


それに、明確に答えられない自分だからこそ、こんなに「もやもや」なのかも。