「ゾロ ザ・ミュージカル」

††キャスト††

ディエゴ/ゾロ 坂本昌行
ルイサ 大塚ちひろ
ラモン 石井一孝
イネス 島田歌穂
ガルシア軍曹 芋洗坂係長
アレハンドロ総督/老ジプシー 上條恒彦


フラメンコダンサー
ホセ・エル・アラモ/アントニオ・クルス/フェルナンド・ソラノ/マリア・ホセ・アルバレス/ソニア・ドラド/大野環


ホアキン(歌とギター)
アントニオ・カラスコ


アンサンブル
安部三博/大岩主弥/川口竜也/田崎悠人/橋本好弘/林和哉/土方憲人/青山郁代/SONIA/園山晴子/福田えり/安田貴和子


少年ディエゴ
佐々木玲/松島海斗


少年ラモン
千濱汰一/原田海人


少女ルイサ
小島一華/田中愛生



梅田芸術劇場で久しぶりの1階席。
…いつ以来でしょう…ってくらいに久しぶりです。
今回の座席は、17列目のセンターブロック。


舞台は、緋色の緞帳に、「Z」の文字。
普段、照明など機材が置かれている上手下手の部分にも、緋色の布で装飾がされています。
上手く言えませんが、Box席みたいなところ。
そこに、オケが。
上手は、フラメンコギターの人々。
下手は、オケの人々。
それぞれ3名ずつくらい。
こんなところにオケがあるの、始めて見ました。
残念ながら、宮崎誠さんは、今回はいらっしゃらなかった様子。
見えなかっただけかも知れませんが…。


その他、舞台は上手下手、それぞれにハシゴがかかっていて、そこにも小さなステージがありました。
ちょっと変わった舞台。
幕が閉まっていてもわかる、ちょっと面白い造りの舞台でした。
幕が開くと、その他にもいろいろ仕掛けがあって、更に面白かったです。
2階建てのセットが上下手あって、中央奥はセットが入ったり、無くなったり。



オープニング。
1階客席に、なだれ込んでくるジプシー達。
歌ったり、かけ声をかけたり。
私のすぐ横の通路では、小さな女の子がかけ声。
結構、耳に来る…大きい声です。
やがて、舞台上に上がるジプシー達…ですが、先ほどの女の子の後ろから、黒いベールで顔を隠した女性が続きます。
横を通り過ぎるとき、ちらりと生声が聞こえましたが…ん?歌穂さん?


舞台上、幕はまだ閉じたまま。
幕前のステージで、老ジプシー(上條さん)が語り始めます。
先ほどの黒いベールの女性(老女に見える)が声を発すると…やはり歌穂さんです。


老ジプシーは、アレハンドロ総督とその息子ディエゴ、養い子のラモンの話を始めます。
その話の内に、ぱっとベールを脱ぎ捨てた歌穂さん。
老女風だったのが、いきなりオーラばしばしのセクシーなジプシー女・イネスに早変わり。


ここから、舞台はスペインへ。
アレハンドロ総督の息子・ディエゴは、何故か(理由はちゃんと語られていたかも知れないのですが、聞き逃しました)スペインに来ていて、ジプシーの仲間入りをしています。
そこへ、カリフォルニアからディエゴを捜して、ルイサがやって来ます。
ルイサは、アレハンドロ総督の死と、ラモンが街で行っている横暴な政治の様子を伝え、ディエゴに助けを求めに来たのです。
ディエゴは、ジプシーの仲間を連れて、カリフォルニアに帰ります。


以降の物語の舞台は、カリフォルニア。
基本のセットは変わりませんが、色が違います。
スペイン(というかジプシー達)は黒と赤を基調とした、原色。
カリフォルニアは、白。
この白い壁は、むしろスペインの地中海側の街のようです。
カリフォルニアの人々の衣装も、白っぽいもの。


街にたどり着いたとき、姿を隠して、ラモンの暴虐な様子を見たディエゴは、ジプシーの衣装から、黒マントと覆面を取り出し、「ゾロ」としてラモンに立ち向かうことを決めたのでした。
ラモンの前では、オネエ言葉の情けない男を演じつつ、ゾロとして処刑台から人々を救うなど、ラモンと戦うディエゴ。


ディエゴがゾロであることを知っているのは、イネスと老ジプシーだけ。
情けない様子で、ラモンに従うディエゴに、ルイサは幻滅します。
一方で、ゾロに惹かれていくルイサ。


また、イネスは、覇気を無くした人々を元気づけていきます。
そんなイネスに惹かれるガルシア軍曹。


ゾロとイネスによって、少しずつ、生きる力を取り戻していく街の人々。
それでも、ラモンの力による支配に対抗しきれない。


果たして、街は、ラモンの圧政から逃れることができるのか?
ディエゴは、街を解放できるのか…?


このお話は、パンフレットによれば、19世紀初頭のお話らしいんですが…。
カリフォルニアってスペインが宗主国だったの?
メキシコに近いから…かなあ??
その辺の知識がないので、アメリカとスペインっていう結びつきにちょっと違和感を覚えたりしました。
でも、そういう細かいところはおいといて、楽しむ作品ではありました。


抑圧されていた人々が、フラメンコを踊りながら気持ちを爆発させるのが素晴らしかったです。
足で刻むリズム、指先のしなり、フラメンコギターの哀愁を帯びた音色。
魂の奥から沸き上がってくる怒りや苦しみが表現されたダンスだったと思います。
そういった負の感情が、昇華され、生の喜びに変化していく。
生きる喜びを朗々と明るく歌い上げるのではなく、ぎらぎらとした強さで戦い勝ち取っていく、そんな喜び。


とにかく、力強くて、無気力にも見えた人々が変わっていく様が見事でした。



また、所々で幼い子供時代と現在をオーバーラップさせる演出があるのですが、これが、いい感じ。
こういう演出、私は好きです。


ゾロの登場シーンでは、奇術を使ったりロープでのアクションがあったりと、意表をつく演出が多く、こちらも楽しかった。


松明や、キャンドルなど、灯りの使い方もよかったと思います。



主演の、坂本昌行さんは、立ち姿も綺麗だし、歌もしっかり声が出ているし、動きもキレがいいし…。
オカマ風の演技もお上手だったし、カッコつけてるゾロのときと、素のディエゴのときと、それぞれの演じ分けがはっきりしていて、見ていてとっても楽しかったです。
初めて舞台で拝見しましたけど、思っていた以上にお上手で、よかったなあ。


大塚さんは、声がちょっとかすれ気味なのが気になりましたが、かわいい女の子でした。
結構勝ち気なところもよかったです。


石井さんは、愛に飢え、屈折してしまった苦しみの部分はちょっとかわいそう…と思わせます。
とはいえ、いい年齢の男がいつまでそんな甘ったれてるんだ!といえば、そうなんですけど(^^;
そして、また、悪役としては、見事に嫌なヤツで、その辺さすが。


上條さんは、やや声が嗄れてしまっていて、台詞など早口な部分、聞き取りにくいところも。
でも、さすがの存在感。


芋洗坂係長は、思った以上にいい味が出ている軍曹で、かわいく、格好良かったです。
見た目とかからすれば、お笑い担当みたいですが、実は、この物語における核となる役所。
権威に従うことに迷いはじめ、自分の生き方を見つけだす…というのは、ゾロやイネスによって変わっていく街の人々を代表するような役所だと思います。


イネスは、格好良かったです。
街の人々に生きる活力を取り戻させ、彼女が言う「自由っていうのは、生きるのが楽しいこと」という言葉は、印象的。
また、ラモンの元から逃れてきたルイサが「どうして助けてくれるの?」と問いかけたときの答え「あんたは戦っているから」という言葉も。
ゾロは、悪の首領と戦って、人々を解放するけれど、イネスは、人々に戦う気持ちを、生きる喜びを教えて、人々を解放している気がする。
正義のヒーローが一人で戦っても、本当の勝利は訪れないですよね。
民衆が立ち上がらなければ。
イネスは、人々にそういった活力を与えたように思います。
堂々として格好良く、ぎらぎらとした光を放っていました。



プリンシパルの皆様は素晴らしかったし、フラメンコダンサーの皆様も素晴らしかったし、とにかく、豪華で面白くて、見応えのある舞台でした。
カーテンコールでは、街の広場で、みんなが集まって、「次はあんただよ」「次はお前だ」というように順番に踊っていくような演出。
歌穂さんは、ジプシー女らしく、ムードたっぷりに、芋洗坂係長は、思った以上に機敏に、大塚さんは可愛らしく。
石井さんは、ダンスが苦手…と以前仰っていたのですが、最後にちらっとだけ決めポーズして、坂本さんはしっかりかっこよく。
大変楽しい、カーテンコールでした。
最後に、坂本さんからご挨拶があって、公演終了。


全体を含め、本当に楽しい舞台でした。