「村上海賊の娘」

村上海賊の娘 上巻 村上海賊の娘 下巻

和田竜さん:著


本屋大賞受賞とニュースで知って、借りてきました。

ニュースでは、4年かけて資料を読み、執筆されたとか。
巻末に並ぶ、参考文献の量はすごかったです。
とてもじゃありませんが、私には、古文書をこんなに読む気力はない…(^^;

資料を読み込んだから、生まれたお話だというのは、とても納得。
きっちりとしたバックボーンがあるからこそのおもしろさがありました。

お話は、戦国時代の信長と大阪本願寺との戦いが舞台。
本願寺が毛利に兵糧を依頼し、毛利は兵糧を運ぶために村上水軍に援助を依頼する。
村上水軍は、娘・景の輿入れを条件に力を貸すことを約束。
しかし、景は醜女で悍婦…。

とはいえ、それは当時の美醜の基準で。
目がぱっちりしていて、彫りが深く、背がすらりと高くて、小顔。
今だったら、多分、とびっきりの美女だと思われます。
そして、本願寺のある辺り、堺の海賊衆にとってもとびっきりの美女。

しかし、性格は凶暴で、粗野で、男勝りというより、本能のまま動く、獣のようです。
「戦に出たい」と言っているし、軍書も読んでいるというから、てっきり、帝王学を学んだ…とまではいかなくても、女王然としたかっこいいリーダーかと思っていたんですけども。
ただのわがまま娘、という印象です。

図書館戦争」の郁とちょっと似ているかな。
ただ、郁の方がよっぽど女の子らしいけれども。

上巻では、景が大阪に来て、本物の戦を見て、自分の未熟さを知るところまで。
結構歯がゆかったです。
下巻で、景を中心に、村上水軍(と毛利軍)と泉州侍の戦いが始まると、一気に面白くなりました。
それまでも、景をとりまく男達の諸々のやり取りは面白かったんですが、主人公であるはずの景が本当に「おもしょない」んですよ…。
その景が、自分の甘さと、自分の本当の気持ちに気がついて、やっと本当にかっこいい女になってからは、面白かったです。

あと、このお話は、先にも書いたように本願寺との戦いを書いているので…。
西本願寺東本願寺が、なんで分裂したのかとか、初めて知りました。
もっと、古い話かと思っていたら、違ったんですねー。
あと、「進者極楽往生 退者無間地獄」という幡が出てきますが、景はこれにぶち切れます。
私も、ここはむかついた…けども、その後を読んで、少なくとも「進者極楽往生」はこの場合は、自分との戦いに勝った者だからこそ、胸を張って「極楽往生」と死んでいけるのかもしれないなーと思いました。

でも、やっぱり宗教戦争は、つらいな。
自分の損得で動く戦争の方が、道理が通用する分、救われる気がします。

…というように、「村上海賊」についてだけでなく、また、「女海賊」についてでもなく、いろいろな面から面白い本でした(^^)

ちょっと長いし、(私には)上巻がちょっと読みづらかったですが、最後まで読んだときは面白い!と言い切れる本でした。