「ペテロの葬列」

ペテロの葬列

「ペテロの葬列」
 宮部みゆき


「誰か」「名もなき毒」に続く、杉村三郎シリーズ第三弾です。

主人公の杉村三郎が、バスジャックに巻き込まれたところから物語が始まりました。
巻き込まれたのは、バスの乗客6人と女性運転手。
そのうち年配の女性と運転手がまず解放され、次いで犯人と対峙してパニックの様相を呈した編集長が解放されました。

犯人は、残りの人質の解放と引き換えに、三人の人間を捜し出すよう要求をします。
また、人質達には、慰謝料を払うと告げます。

そんな犯人は、拳銃を持った老人で、慰謝料を払えるようにも思えない、よれよれとした人。

発生から数時間で事件は解決しましたが、何とも言えない謎めいた空気がのこりました。
あの犯人は一体誰だったのか?



タイトルの「ペテロ」は、もちろん、イエスの弟子のペテロ。
三度、「私は知らない」とイエスを裏切ったペテロ。
自分のした「悪」を自覚したペテロは、イエスと同じ十字架にかけられることは許されないと自ら逆十字架に磔になることを望みました。

この物語の中にも「ペテロ」が登場します。

この物語の中の「ペテロ」がした悪は、社会を汚染し、もはや取り返しはつかない。

「悪は伝染する」



振り込め詐欺や、マルチ商法なども、ここから始まったのかも…なんて、思わされました。
小説なんですが、時代背景がしっかりしていて、一昔前の日本が抱えていた闇の一端が見えました。

さすが、宮部さん。
しっかりとした骨組みのお話だなあと思います。
お話を楽しむのと同時に、宮部さんの下調べの凄さにうならされました。
本当にすごい。



そして、事件そのものとは少し違うところで。
一読した後、とある登場人物に、心底腹を立ててしまった私。

でも、もう一度読み返して、伏線を読んでいく内に、必ずしもその人物だけが悪いのではないことに気がつきました。

そうなるしかなかったのかも…と。

もともと、その人物には、何とも言えない「いらいら感」を感じていたのですが、その人物自身も自分に「いらいら感」を感じていたのかも。
でも、その人物がやった行動は許せないと思うんですけどね!


気になるから、第4作、是非、書いていただきたいです。