「桜ほうさら」

桜ほうさら

「桜ほうさら」
宮部みゆき



先日、TVドラマを見て、読み返したくなって図書館で借りて来ました。

タイトルは甲州の言葉で「ささらほうさら」から。

「ささらほうさら」の意味は、
「あれこれいろんなことがあって大変だ、大騒ぎだっていうようなとき、言うんだよ」

そこから転じての、「桜ほうさら」


改めて読み返すと、桜の霞の向こうにある真実が少しずつ見えてくるかのような。
真実はずっとすぐ傍にあったのに、桜が目隠しをしていたかのようです。
それは、人が人を思いやる気持ちから。
でも、目隠しをされていたほうからすれば、その思いやりが切なくもあり。

やはり、切なくてやるせないお話です。

「父が本当に望むことはなんだろう」

鰻屋の二代目が、実は鰻が苦手で、でも父親の商売だから、後を継いで。
全然、美味しくないから流行らなくて、でも父親の為にとやめられなくて。

そんなときに、ある侍から言われたのが、
跡継ぎとして鰻屋を続けて繁盛させられないことと、跡目は継がなくても店を続けていくことと、どちらを父が望むだろう?

この言葉は、主人公・笙之介にも響いてきます。


物語は、藩のお家騒動も絡んでいましたが、ドラマでも描かれていましたっけ?
ちゃんと見ていたつもりでしたが、見落としていたかな。

ドラマでは、笙之介のお話だけでしたが、長屋の人々のお話や、事件が省かれたのはやっぱり残念です。
鰻屋のお話なんかは、事件にも直接関係ないお話ですが、いいお話だと思うのですよ。


ただ、ドラマの配役は、読み返してみると、なかなかにいい感じでした。
貸本屋さんだけ、ドラマよりちょっと軽妙になっていましたけど。
原作を読み返して、いくつかのドラマのシーンが甦ってきて良かったです。
是非、あわせてお読みいただきたいー。