「レ・ミゼラブル」


††キャスト††

ジャン・バルジャン 山口祐一郎
ジャベール 今拓哉
エポニーヌ 平田愛咲
ファンテーヌ 知念里奈
コゼット 稲田みづ紀
マリウス 原田優一
テナルディエ 三波豊和
テナルディエの妻 森公美子
アンジョルラス 上原理生


リトル・コゼット 斉藤真尋
リトル・エポニーヌ 飛鳥井里桜
ガブローシュ 加藤清史郎


グランテール 土屋研二
クールフェラック 杉山有大
ジョリ 土倉有貴
コンブフェール 谷口浩久
フイイ 宇部洋之
司教/レーグル 清原邦仁
バベ 高山光乗
ブリジョン 田村雄一
ブルベール 五葉隼人
モンパルナス 尾崎功使
ラクスー 高舛裕一
買い入れ屋 吉川恭子
マテロット 曲木佐和子
ファクトリーガール さとう未知子
ジベロット 中村美貴
マダム 谷口ゆうな
少年1 北川理恵
少年2 高田亜矢子
かつら屋 三戸亜矢


指揮 若林裕治



座席は、2階B列、上手サイドブロック。
舞台奥まですっきり見えて、良い席でした。
音も、以前1階サイドで見たときと比べて、バランス良く聞こえたし、満足の席。


もともとは、SP公演のチケットしか持っていなかったのですが、レミゼ好きなのに、それは淋しいかも…と急遽通常キャスト公演を買い足し。
どうせ行くなら、「原田マリウス」「平田エポ」「上原アンジョ」を見たかったので、この日を選択。
本当は、「吉原バル」も見てみたかったんですが、日程が合わず断念。
「岡ジャベ」「石川ジャベ」も見たかったけど、そうしたら、1回では絶対無理だし。
もともと見たかった三人が揃っているだけでも十分でしょう。


冒頭、アンサンブルさんたちのちょっと声張りすぎ、自己主張強すぎの歌に微妙に残念な気持ちになりつつ…。
山口さんの「自由なのか〜」で、ちょっとひっくり返りそうに…。
調子が悪いとは聞いていたけど、まさか、こんなにとは…というくらいの声でした。
なんていうか…アニメ声とでも言うか…。
以降、しばらくの間、心の中で山口さんに声援を送りつつの観劇でした。
だんだん、慣れてきたのか、それとも、だんだん調子が戻ってこられたのか、1幕途中からは、声援を送ることなくレミゼの世界に没頭できましたけどw


ここからは、個別の感想。


■バルジャン
冒頭の歌に驚きすぎて、印象が…あまり残っていない…。
ファンテーヌとの絡みが印象的でした。
その辺の感想はファンテーヌの所で。



■ジャベール
実は、こちらも印象が…あまり。
ファンテが足に縋り付くとき、溜めて、ばっと振り払うんだなー。
自殺のとき、転がっていく勢いが結構あって大変そうでした。



■ファンテーヌ
今までと違うファンテ像でした。
個人的にすっごく好き!
なんというか…若くして「母」になってしまった女の子。
「母」属性よりも、「女の子」属性の方が強い、もしくは同じくらいある気がします。
原作のファンテに近いというか。
若い男の子たちと恋をして、楽しんで、ふわふわと過ごした女の子たちの一人であるファンテ。
運悪く妊娠してしまって、人生が変わってしまった女の子。
コゼットを思う気持ちは勿論ある「母」なんだけど、まだまだこの子自身も子どもの部分がある感じで。
病院でのバルジャンとのシーンでは、ファンテもまた、バルジャンの娘に見えました。
バルジャンにとってのファンテは「庇護すべき者」というイメージ。
ファンテにとってのバルジャンは「神が遣わした人」というより父親。
きっと身内との縁が薄い人だったんだろうな、ファンテも。
誰にも助けて貰えなくて、一生懸命に生きてきて。
初めて手を差し伸べてくれたのがバルジャンで。
そこに、父親の姿を見ている…そんな風に感じました。


エピローグでバルジャンを迎えに来るファンテ。
ファンテに触れようとした直前に、現れるコゼット。
すっとファンテは立ち上がり、コゼットと入れ替わりますが…。
ここも、ファンテだと思って見つめていたのが、実はコゼットだった…という演出に感じられ。
(実際は、そうじゃないと思いますけど)


ファンテ=コゼット。
どちらも、バルジャンの娘という構図。
そんな風に感じられたファンテでした。
(あくまでも勝手な感想です)



■コゼット
ファンテの影という位置づけで見てしまいましたので、ちょっと正当な評価じゃないかもですが。
ひっそりと佇む、控え目なコゼット、という印象。
ある意味、原作に近い…かも。
原作のコゼットって、あんまり活躍しませんもんね。
(大人になってから)


エピローグでは、マリウスと共に、いたいけな子どものような小さな存在。
バルジャンとファンテーヌとエポニーヌと…多くの死者たちが、二人の幸せを祈りつつ見守る…そんな構図がぴったり合う。
そんな、弱々しい、庇護されるべき存在にみえて、「誰かを愛することは神様のおそばにいることだ」と教え諭されるのが似合う。


「私たちが、あなた達を愛したとき、神様と共にありました」
「あなた達も、愛しなさい。そうすれば、神様はあなた達と共にあります」


そんなメッセージがすんなりと心に入ってくるマリウスとコゼットでした。
今までは、ラストで二人も雄々しく歌っている感じだったのですが、今回の二人は「いと小さき者」のイメージ。
二人を見つめる死者たちは、まるで、「夢醒め」ラストでピコを包む光のように感じられました。



■マリウス
登場シーンから、歌声がぽーんと飛び出て、いい感じ!
革命に対し、マリウスも強い意志を持っているんだなーと思わせられます。
今までになく、真剣に世の中を憂いているマリウスに感じます。


エポニーヌの「その髪、好きだわ」には、軽く笑いながら「何だよ、ふざけて」
エポを女の子とは見ていなくて、でも、ふざけ合う友達。
嫌いじゃないし、むしろ好きなんだろうけど、「女の子」としては全く認識していない感じです。


コゼットとぶつかって「ごめん…」からは、見事にひとめぼれモード。
さっきまでの革命青年はどこへ?って言うくらい、恋にどっぷりはまってるのがわかります。
「ワン・デイ・モア」のラスト「私は戦おう!」も決然と革命に向かうと決めたのが伝わり。
なんというか、恋にも革命にも、全力投球で、ある意味、マリウスらしい…。
マリウスって、いったん思いこむと、それまでのことをあっさり忘れる所、あるじゃないですかw
王党派だったのに、父親のことを知ってナポレオン信者になったりとか。
一つのことを思いこむと、他のことが見えなくなるタイプかな…とw


「恵みの雨」では、エポニーヌの死に打ちのめされて、立ち上がれないほどでしたが…。
全くエポの気持ちに気がつけず、結局、ここで死なせてしまった後悔だったのだろうと思いました。
エポを死なせないために手紙を預けたのに、エポはマリウスの側で死にたいと帰ってきてしまった。
もし、エポの気持ちをわかっていたら、もっと上手く立ち回って、彼女を死なせることはなかったのに。
恋の相手ではなくても、大事な友達だったから。
だからこそ、彼女を死なせた事への申し訳なさ…そんな風に感じたのでした。


そこまで打ちのめされていたからこそ、「マリウス、少し休め」がすっと受け入れられた感じ。


全般に感情の揺れが大きいマリウスで、バルジャンから告白を受けるときも心底動揺している感じでした。
そんなところも、守るべき子ども、という面が感じられて、エピローグの感想に繋がったかなあ。
歌は、さすがで、いいお声でしたー。
あ、そうそう、「彼を帰して」での寝方は、膝立デフォルト。
ここは、もう、岡田さん風はないのかなー。



■アンジョルラス
PVで歌を聴いて楽しみにしていました。
歌は、確かにいい感じ。
マリウスと歌い合うところなど、心地よく聞けたかな。
でも、カリスマ性という点においてはちょっと弱い感じです。
学生たちの中にいて、一人際だって見える…という所までは行かなかったかも。
狙撃兵に撃たれた仲間を庇うようにバリケードを駆け下りてくる所など、もう少し勢いがあるといいなと思いました。
グランテールへの態度は…どうだっただろう?
あんまり印象に残ってないなあ。



■エポニーヌ
うーん…。
期待していた程ではなく…かな。
屋根の上のヴァイオリン弾き」のチャヴァが良かったのですが。
悪くはないけど、特に印象に残ったところってないなあ…。
「ON MY OWN」のラスト、コートを翻すのは、両手でわざとコートの裾を持ち上げてるんだ。
確かにそうすると勢いは出るけど…。
普通に立ち去るときに、そういうことしないよなあ…とちょっと不自然に感じたくらいかな。


「恵みの雨」はマリウスの悲しみに引っ張られた分、エポへの思い入れが減ったかもです。



■マダム・テナルディエ
ロビーのサインや、ブログや、開幕前の東日本大震災へのエールの歌で、森さんの思いを見ていたせいか…。
舞台の上で、演技をしている森さんを見ただけで涙が。


舞台の上の森さんは、いつも通りに見えて、だからこそ、凄いと思いました。


リトル・コゼットに対しては、怖い怖い。
バルジャンが椅子を蹴飛ばしたときは…「危ないじゃないのさ〜」とアドリブ。
結婚式では、あれこれつまみ食いしてるのが可愛かったです。



■ガブローシュ
ちっちゃくて、すばしこくて、くるくると動いて、可愛かった。
エポが死んだとき、マジ泣きしていて、何度も何度も涙を拭っていたのが印象的。
最後、鞄が届かなかったのは…無念だったろうな…。



■アンサンブル
とりあえず、ところどころで、悪目立ち的な感じがありましたが。
コーラスは綺麗だった…と思います。
ソロでは、見せ場!って感じで力が入ってしまったのかも。



そんな感じで、久しぶりのレミゼは、ファンテに感動し、マリウスとコゼットを包む光に感動し、という感じでした。
原田さんのマリウスと知念さんのファンテを見ることができたのが、一番の収穫。
急遽の観劇でしたが、行って良かったです。